ツナと京子に食べさせて貰いながらお粥を完食したソラ
「ご馳走様でした。」
手を合わせながら言うソラ
「「お粗末様でした。」」
「とっても美味しかった!!」
「ありがとう。それじゃ、お薬飲んでね。」
そう言って、京子が薬を盛ったスプーンをソラの口元に運んでくる。
「これって……恭兄が持ってきてくれた薬だよね?」
「うん、そうだよ。凄く苦いらしいけど……」
「昨日もそれ飲ませたんだよ。」
ソラはその薬を飲んだ。
すると、口の中に苦い味が広がった。
(にがっ……)
顔をしかめながらも、薬をちゃんと飲み込む。
「はい、お水。」水の入ったコップを渡すツナ
ソラはツナから受け取ると、一気に水を飲んだ。
「やっぱり…それ、凄く苦い?」
「……物凄く…苦い…子供が飲むような…薬じゃないよ、これ…」
「えっ!?そんなに!?」
「口の中がまだ苦い……」
顔をしかめたまま言うソラ
「昨日、良く飲めたな……」
「苦くても、薬だと解っていたから、飲んだんだと思うよ?覚えてないけど……」
(凄いな……俺、絶対飲めないような気がする……)
(ソラちゃん、凄い……)
ソラを見つめたまま、ツナと京子はそう思った。
「そういえば、もう包帯は替えた?」
「ううん、まだだよ。」
「じゃあ替えようか。」
ソラは素直に差し出すのを渋っていた。
「酷い痣になってる事は、昨日見ちまったから、おとなしく見せろ。」
リボーンにそう言われてしまったので、渋りながらも、おとなしく左腕を京子の方へ差し出したソラ
京子は包帯を外し始めた。
(また、酷くなってるんだろうな……痣。)
痛みを感じながら、心の中でそう思うソラ
包帯を外し終わり、ガーゼを取った。
前腕部は昨日と変わらず、青黒く変色したままだった。
その痣を見て、苦痛の表情を浮かべるツナ達。
「……思ってたより酷い痣になってる……どおりで痛いわけだ。」
酷くなっている痣を見ても、慌てる事なく、平然としているソラ
「そんな冷静に言う事じゃないよっ!ソラちゃんっ」
そうツッコむツナ
「そうだよ……」
眉を顰めて言う京子
「お前、冷静過ぎだぞ。女の体に傷があるのは、良くねぇんだぞ?」
「う〜ん…そんな事言われても……今さらだし。」
「い、今さらってっ……」
「ここまで酷い痣を作ったのは久しぶりだけど、よく傷作っちゃうから。軽い傷ばかりだけどね。」
「そ、そうなんだ……」
ソラのその言葉を聞いて、呆然とするツナと京子とリボーン
(ホントに…今さらなんだよね。もう背中に消えない傷痕があるし……)
ソラは困った表情を浮かべたまま、心の中でそう言った。
少しの間呆然としていたが、自分がやろうとしていた事を思い出した京子はすぐに前腕部に薬を塗り始めた。
「その塗り薬、久しぶりだよ。」
「えっ!?」
「前にも塗ったけど、凄く効き目があったっけ。恭兄、あの時怒ってたな……っ……」
「あっ、ごめんっ、大丈夫!?」
「大丈夫だから続けて。」
「う、うん……」
「雲雀さんが…ソラちゃんに?」
「うん。恭兄だって怒る時は怒るよ?」
「そ、そう……(そ、想像出来ないっ…)」
まだソラに優しい雲雀しか見ていないからか、その場面を想像出来なかったツナ
薬を塗り終えたあと、ガーゼをして包帯を巻いた京子
「はい、出来たよ。」
「ありがとう。」
「じゃあ私は食堂に行くね。」
お粥が入っていた鍋をお盆に載せて持つ京子
「うん。ソラちゃんの事は任せて。」
「京子、俺も行くぞ。」
「あっ、じゃあ一緒に行こう?リボーン君」
「んじゃ、ソラ、また後でな。」
「また後でね。ソラちゃん」
リボーンと京子はソラに一声掛けてから、病室を出て行った。
「じゃ、ソラちゃん、俺達も移動しようか。」
「?…どこへ?」
「獄寺君の所と、山本の所。」
それを聞いて、体を強張らせるソラ
「だ、大丈夫だって。それにこれは2人にお願いされたんだ。ソラちゃんに会わせて欲しいって…」
「…2人が?山本さんは解るけど、獄寺さんも?」
「うん。」
「私は、会いたくないっ」
タオルケットを被りながら、ベッドへ寝転ぶソラ
「ソラちゃん……」
悲しそうな声で言うツナ
「だって、2人に会って、なんて言えばいいの!?私がラル姉の制止を振り切って、γの所に行ってれば、あそこまでの怪我を
負わなくて済んでたかもしれないし、今の私は、敵にやられて寝込んで、迷惑掛けたしっ……」
体を震わしながら、弱音を吐くソラ
その時、ソラの頭に手が置かれた。
「そんな風に思わないで?」
そう言いながら、ソラの頭を撫でるツナ
「でもっ…」
「確かに、ソラちゃんがあのままγの所に行っていたら、怪我もあそこまで酷くならなかったかも知れない。
でも、行かせてしまったら…ソラちゃんの怪我を悪化させていたかもしれないんだ。
それに君は敵にただやられたんじゃない、ビアンキを庇ってそうなったんだってみんな知ってるよ。
だから大丈夫、自分を責めないで?1人で抱え込む必要なんて、ないんだよ。」
(パパ……)
ツナが頭を撫でながら、優しい声で話しかけているのを聞いている内に、体の震えが少しずつ治まるソラ
「獄寺君や山本は、絶対にソラちゃんを責めたりなんかしないよ。ただ、言いたい事があるから、ソラちゃんと話をしたいんだと思う。
俺も傍に居るから、行こうよ?」
少し考えた後、ソラは体を起こして、黙ったまま頷いた。
「良かった。じゃ、行こうか。」
そう言って、ソラを抱き上げたツナ
「あっ……じ、自分で…「ダメ!」」
突然の浮遊感に驚きながらも、何か言おうとしたが、ツナに遮られてしまった。
「ソラちゃん、昨日よりだいぶ良くなったけど、まだ歩けないでしょ。歩けたとしても、痛みが走るよね?」
「う゛っ……」
痛いところを突かれたソラ
「だから、ダメ。」
笑顔でそう言い、ソラを片手で抱いたまま病室を出るツナ
ーー地下5階ーー第一医療室A−−
ツナはまず獄寺の所に向かった。
ソラはツナの服を掴んだまま、肩に顔を埋めていた。
ツナはその様子に苦笑いしながらも、ノックをした。
「獄寺君、入るね?」
そう言ってツナは中に入る。
その時、ソラがさらにしがみついてきたのを感じたツナ
「じゅ、10代目っ」
ベッドの方へ近づき、椅子に座るツナ
「ソラちゃん、連れて来たんだけど……」
困った顔しながら、自分の服を掴んで、肩に顔を埋めているソラに視線を向けた。
「ソラちゃん、獄寺君と向き合おうよ?」
それを聞いて、体を強張らせるソラ
「えっと……」視線を獄寺に移すツナ
「そのままで構いませんよ、10代目」
「そ、そう?」
「おい、こっち向かなくて良いから、聞け!」
獄寺に声を掛けられてビクつくソラ
それを苦笑いしながら、背中をポン、ポン叩いて落ち着かせるツナ
「昨日、リボーンさんやフゥ太達から聞いた。お前、この時代の俺達と親しかったんだってな。それだけじゃねぇ……
このアジトもお前が居るから維持出来てるんだって事も聞いた。」
黙って耳を傾けるソラ
「この怪我の事なら、気にするな。10代目から聞いたぞ。γが俺達の所に向かっているのを知った時、
俺達の所へ真っ先に駆けつけようとしてたってな。」
「…そうですよ。私が全快の状態なら、γを倒す事だって、出来たんです。たとえ全快じゃなくても、片手が使えれば、
足止めくらいは出来ていました。でも、ラル姉の制止を振り切れなかったっ…」
体を震わしながら、悔しそうな声で言うソラ
「昨日の事も聞いた。姉貴を庇ったんだってな……その時の戦いも、姉貴から聞いたぜ?お前、本当に強いんだな。」
「強くなんか、ありません……守れなきゃ、意味ないっ…自分が、倒れたらもっと意味ないっ…」
「ソラちゃん……」
「悪かったっ」
「な、何の事、ですか…?」
「その……この時代に来てから、俺、お前にきつく当たってただろ?だから、悪かったっ」
「獄寺さん……」
そう言いながら、今までツナの肩に埋めていた顔を上げ、獄寺の方に振り向いた。
ツナの服を掴んだまま……
「やっとこっち向いたな。」
「あっ……」
獄寺の声にビクつくソラ
振り向いた先に居た獄寺は睨みつけてはいなかった。
むしろ、優しい瞳で見つめていた。
「この時代の俺はどうお前に接してたか知らねぇが、俺なりにちゃんと接してやる。だから、そのっ…」
「?」
「この時代の俺と同じように接しな!」
ぶっきらぼうに言う獄寺
獄寺のその言葉にどう答えればいいのか解らないソラ
「大丈夫。今すぐじゃなくていいよ。ねっ?獄寺君」
ソラの気持ちを察して言うツナ
「はい、10代目。待っててやるっ…だから、そんなに怯えんな。……ソラ」
(!!…隼人兄……私の名前をっ)
再びツナの肩に顔を埋めて、涙を流れるのを必死に堪えた。
ツナはソラの今の状態が解っているのか、黙って背中をポン、ポン叩く。
「10代目?」
ツナは獄寺に向かって、自分の唇の前に人差し指を立てて、合図した。
「黙ってて」っと……
「ソラちゃん、我慢しなくていいよ。獄寺君から、名前呼ばれたの、嬉しかったんだろ?」
「……獄寺さん」
「何だ?」
「もう一度だけ……名前、呼んでくれませんか?」
「!……ああ、何度だって呼んでやるよ、ソラ」
ソラの言葉に驚いたが、すぐに返事を返した獄寺
その言葉を聞いて、しゃぐり上げて泣くソラ
「落ち着いた?」
「うん。」
「じゃあ獄寺君。俺達、山本の所に行くね?」
「はい、10代目」
ツナはソラを抱いたまま、立ち上がり、病室を出て行った。
「……俺はお前の事、何も知らねぇけど……きっとこの時代の俺は、お前に優しかったんだろうな……」
ソラの様子を見て、そう思う獄寺だった
ーー第一医療室B−−
獄寺の病室を出た後、すぐ隣の山本の病室の前まで来た。
今度は顔を埋めてはいないが、ツナの服を掴んだままのソラだった。
ノックをするツナ
「山本、入るね?」
そう言って、中に入って行った。
「おうっ、ツナ!ん?ソラも一緒か。」
「うん。」
そう言いながら、ベッドに近づいて、椅子に座るツナ
「ソラ、大丈夫か?ツナから熱は下がったとは聞いてたけど……」
「はい、大丈夫です。」
「そっか!」
山本は自分と今話しているソラの体が少しだけ震えているのに気付いていたが、敢えて気付かない振りをしていた。
「それで……私に、何の用ですか?」
「……あのな、俺は別にお前を責めるつもりはねぇ。むしろ、礼を言いたいくらいだ。」
「えっ…?」
予想外の言葉だったのか、ポカンっとしていた。
「だってそうだろ?ツナから聞いたぜ。γの時の事…俺達の所へ真っ先に駆けつけようとしてくれてたってな。
それに、アジトの事もそうだ。アジトを維持するのに頑張ってくれてたんだろ?」
黙ったまま頷くソラ
「だから、ありがとな!!」
「どうして……?」
「ん?」
「獄寺さんも、山本さんも、なんで責めないんですか!?京子さんを連れ戻すのとヒバード探索の時、γに見つかりやすいのは、
獄寺さんと山本さんの方だって解ってたのに、私はヒバード探索の方に行った方がいいって思ってたのにっ…でも、私は京子さんを
探す方を選んでしまったっ!!(ママの事が心配だったからっ……だけど、そのせいで2人はっ……)」
それを聞いて驚くツナと山本
「ソラちゃん……」
自分の腕の中で震えてるソラを心配そうに見つめるツナ
「ソラ……(笹川の事、そんなに心配だったのか……)」
ソラを見つめたまま、そう思う山本
「なのにっ、どうして責めないんですかっ!!綱吉さんに聞いたなら、私がγと戦える事を知ったはずなのにっ……」
「……確かに、お前が居たら、γと戦った時、もう少しマシだったかもしれねぇ……げど、お前は笹川の事が心配だったんだろ?
だから、笹川を探す方を選んだ。」
黙ったまま、山本の話に耳を傾けるソラ
「あのさ、俺……小僧から聞いたんだ。」
「な、何をっ…」
「ボンゴレ狩りで亡くなった、お前の知り合いの中には……俺の親父も含まれてるってな。」
「えっ!?ソラちゃん、山本のお父さんと知り合いだったの!?」
「ああ。この時代の俺がよくソラを連れて、親父に会いに行ってたみたいなんだ。親父の奴…たぶんソラの事、自分の本当の孫のように
可愛がってたんじゃねぇかな……なぁ、お前…寿司好きか?」
「好きです。……お寿司屋さん、剛さんがやってる、「竹寿司」しか知りません。」
「そっか!親父の作るお寿司は最高だろっ!?」
「はい、剛さんの作るお寿司は大好きです。」
「笹川を探しに行ったのって、俺の親父みたいにいなくなるのが怖かったから、自分で探して、無事を知りたかったんじゃないのか?」
顔を俯かせたソラ
「ソラ、俺はお前を責めないぜ。だって、お前、間違った選択してねぇもん。」
「でもっ…」
「だってそうだろ。もし、ヒバード探索の方にソラが来て、んでもって、γがやって来て、ソラが戦ったら、
ガンマの足止めに成功した代わりに、お前のその左腕の怪我、悪化させる所だったかもしれないんだろ?
なら、戦闘をより避けれる、笹川の方を選んで正解だぜ。」
「山本さん……」
「んじゃ、この話はおしまいだ。んで、俺の話な!」
「?」
「ソラ、俺の事、10年後の俺の時みたいに、タメ口で話してくんねぇか?そりゃ、俺はお前の事知らねぇけど、
それはこれから知っていけばいいし。ダメか?」
「そ、それはっ……」
「……じゃあ、待つのな!!」
ソラの様子を見て、そう決めた山本
「!……待つんですか?」
「ああ。」
「どうしてですか?山本さんは、私の事、知らないのに……」
「ん〜……どうしてだろうな?けど、はっきりしている事は、この時代の俺とお前が仲が良かったって事だけだ。
なら、俺も仲良くなりたいなって思っただけだぜ。」
「山本は純粋にソラちゃんと仲良くなりたいんだよ。」
「そうなのなっ!ソラ、もっと俺達を頼ってくれよ!1人で抱え込まねぇで、俺達に言えよ。そりゃ、俺らじゃ、出来る事は限られてるけどさ…
お前のそんな泣きそうな顔、見たくないのなっ」
『俺はお前のそんな泣きそうな顔、見たくないのな……だから、1人で抱え込まねぇで、俺らをいつでも頼ってくれよ!ソラ』
頭の中でこの時代の山本の言葉がフラッシュバックする。
「ソラちゃん?」
ソラが固まって動かないのに気付いたツナが呼びかける。
「あっ…だ、大丈夫。」
ツナの声に反応し、すぐに返事した。
「そう?」
「この時代の山本さんと同じ事言ってたから、少し驚いただけ。」
「この時代の俺の?」
自分を指差しながら言う山本
黙ったまま頷くソラ
「そっか。」
「……山本さん、少しだけ…待っててくれますか?」
「おうっ、いくらでも待つのな!」
「ありがとうございます。」
「じゃあ、俺達そろそろ行くね?」
ソラの様子を見て、大丈夫だと判断したツナがそう言う。
「ああ、また来てくれよ、ツナ、ソラ」
「うん。」
椅子から立ち上がって、病室を出ていった、ツナとソラ
「……いくらでも待つぜ。お前の知る、10年後の俺に必ず近づいてやるからさ、一度でもいい……
俺の事、タケ兄って呼んで欲しいのなっ」
山本はツナ達が出て行った入口の方を見つめながらそう言った。
ーー第一医療室C−−
ツナはソラをベットに寝かせ、タオルケットを掛けた。
「お疲れ様、ソラちゃん。どうだった?2人は…」
「……話せて良かったと思う。」
「良かった。」
「綱吉さん……」
「ん?何?」
「獄寺さん、優しい眼で私を見てくれた……この時代の獄寺さんみたいに……」
「嬉しかった?」
「うん。山本さんは、この時代の山本さんと同じように、爽やかな笑顔を浮かべて、私の心を和ませてくれる……」
「そっか。」ソラの話を聞きながら、笑みを浮かべるツナ
「少しだけ、時間掛かるけど……いいよね?」
「うん、ソラちゃんのペースでいいよ。獄寺君も山本も……ハルもちゃんと待っててくれるから。」
その時、睡魔がソラを襲ってきた。
(あれ?……起きてから、まだそこまで…時間、経ってないはず、なのに…)
睡魔と闘っているソラ
「疲れたなら、眠ってていいよ。俺、ソラちゃんが眠るまで、傍にいるから。」
それに気付いたツナが、ソラの頭を撫でる。
ソラはツナに頭を撫でられている間に、徐々に睡魔に負け、瞼を閉じた。
少しすると、ソラの寝息が聞こえてきた。
「ゆっくりでいいよ。だから…少しずつ、獄寺君たちとも打ち解けてほしいな。」
眠ってしまったソラに向けて、優しい声でそう言う。
ツナは眠った後も、しばらくソラの頭を撫で続けていた。
あれから時間が経ち、昼頃になっていた。
ソラはまだベッドで寝ていた。
そこに誰かが入ってきた。
入ってきたのはツナと京子だった。
「あっ……まだ寝てるみたいだね。」
「うん。起こすの可哀想だな……」
「でも、ご飯の時間だし。ソラちゃんには悪いと思うけど、起こそうよ。やっぱり、みんなで食べた方がおいしいし。」
「……そうだね。」
そう言いながら、2人はベッドに近寄った。
「スゥ……スゥ……スゥ……」
2人が傍にいると気付きもせず、すやすや寝ているソラ
「ソラちゃん、起きて」
ツナが呼びかけ、ソラの体を軽く揺らした。
「う、う〜ん……誰…?」
唸り声を上げて、まだ眠たい目を擦るソラ
「ごめんね、起こしちゃって……」
そう言いながら、ソラの体を起こす京子
「………綱吉さん?京子さん?」
まだ寝ぼけた顔のまま、2人の姿を確認するソラ
「うん。俺達だよ。」
「どうか、したの?」
「あのね、もうお昼なんだ。でね、みんなで食べようと思って、ソラちゃんを呼びに来たんだよ。熱、もうほとんどないみたいだし。」
「……でも、ランボ君とイーピンちゃんが……」
「大丈夫だよ。それにその2人がソラちゃんと食べたいって言ってるの。」
「そうなんだ……」
「ソラちゃん、大丈夫?」
「少し、眠い…」
「ごめんね?ランボが聞かなくてさ……」
「大丈夫…」
「じゃあ行こっか。」
京子がソラを抱き上げた。
「うわっ!?」突然抱き上げられて驚き、一気に目が覚めたソラ
「きょ、京子ちゃん、大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。だってソラちゃん、凄く軽いんだもん。」
「そういえば軽いよね?ちゃんとご飯食べてるのに……」
「それ、良く言われる……」
「体を動かしまくってるからかな?」
「たぶんそうだと思う。」
「そんな事より、早く行こうよ。」
「そうだね。」
ツナとソラを抱いた京子は病室を出て行った。
ーー地下7階ーー大食堂ーー
食堂の方から、ランボが騒ぐ声が聞こえてきた。
「……ランボ君、元気だね。」
「そうだね。」
「ハルちゃん、おまたせっ」
ツナ、京子、ソラが大食堂の中に入っていく。
中には、ハル、リボーン、ランボ、イーピンが居た。
「あっ…待ってましたよ!ランボちゃん、お腹を空かして待ってますよ。」
「ごめんね。」
「ところでソラちゃん、太陽ちゃんって何食べるんですか?」
「太陽は基本何も食べなくても平気ですよ。」
「はひっ、そうなんですか?……太陽ちゃんの分、用意してしまいました。」
「ランボ君にあげたらどうですか?」
「それもそうですね。ランボちゃ〜ん」
ハルはランボの方へ話しかけた。
「ソラちゃん、今の本当?」
「うん。太陽のご飯はこのリングから出る炎だから。匣に戻さない時だけだけど……」
ツナに右手の中指に嵌めてある晴系リングを見せながら言う。
「へぇ……」
「ツナさん、京子ちゃん、ソラちゃん、ご飯食べましょうよ。」
「あっ、うん。」
ハルに言われ、テーブルの方へ行くツナ達。
「じゃ、京子ちゃんは今日はツナさん達と同じ所に座って下さいね。」
言われた通り座るツナ達。
周りから見たら、ツナ、ソラ、京子の並びで座っていた。
その時、フゥ太とビアンキが入ってきた。
「あっ、ビアンキさん!フゥ太君もっ」
「あら、あなた達……」
「ソラ、起きて大丈夫なの!?」
「うん、大丈夫だよ。フゥ太兄」
「ツナ兄達から聞いてたけど、ホントに良かったよっ」
「心配掛けてごめんね?」
「ううん、ソラが元気ならそれでいいよ。」
【ソラ】
晴カンガルーの太陽がソラに話しかけた。
「ん?……何?太陽」
【匣に戻る。】
「なんで?」
【な、なんでって……】
ソラを心配そうな瞳で見つめる太陽
「……ランボ君、イーピンちゃん」
「なんだもんね?」
「何?ソラさん」
「太陽、戻るって言ってるんだけど、いい?」
「戻るって?」
「お昼からの遊び相手がいなくなるって事。」
「そんなのダメだもんね!まだ遊び足りないんだもんね!」
「イーピンもっ!」
「だって。」太陽に向かって言うソラ
【ソラ……】
「太陽が言いたい事は解ってるよ。でも、このくらいなら平気。」
そう言いながら、右の中指のリングに炎を灯し、太陽に差し出す。
【……本当にいいのか?】
「うん。ランボ君とイーピンちゃんが満足するまで、遊んであげて?」
【……わかった。】太陽はそう言った後、リングから出てる死ぬ気の炎を舐め始めた。
「ホントにそれが食事なんだ……」
「さあ、みなさん、ご飯食べましょう!」
ハルがみんなに向かってそう言った。
「そうだね、ハルちゃん」
ソラの前にあるのは、朝と同じお粥。
だが、少しだけ朝と中身が違っていた。
太陽に死ぬ気の炎を与えた後、手を合わせて、「いただきます。」と言ってから、
レンゲを手に取って、ご飯をすくい、熱を冷ましてから、口の中に入れた。
「どう?ソラちゃん。初めて違うのを作ったんだけど……」
(えっ……初めて?)
ソラは京子の言葉に驚いた。
「おいしくない?」
ソラが固まってるのを見てそう思った京子
ソラは口の中に入っていたご飯を飲み込んだあと、
「ううん、おいしいよ。これ、ホントに初めて?」
「うん、そうだけど……」
(……作る時期、早めちゃったかな…?)
いつ、このお粥を思いついたのかは聞いた事がないので解らないが、
ほんの少し、歴史を変えてしまったような気がしたソラ
「ソラちゃん?」
「あっ…大丈夫!ちゃんとおいしいからっ」
「そっか!良かったっ」
満面の笑みを浮かべる京子
京子の笑顔につられて、ソラも笑顔を浮かべた。
(あれ?やっぱりこの2人……似てる?)
そんな2人を見てそう思うツナであった。
ーー地下14階ーーソラの私室ーー
あれから、また時間が過ぎ、夜になっていた。
今は晩御飯を食べ終えて、ソラは病室ではなく、自分の私室へ戻っていた。
熱はもう下がっていたので、昨日入ってなかった分、お風呂に浸かってから出てきた。
「いい湯だったっ」
お風呂に入って汗をさっぱり流せて満足なソラ
その後、左腕の前腕部に薬を塗って、ガーゼを載せて、包帯を巻いた。
ソラはそこで机の上に立ててある写真立てに視線がいった。
そこにはツナと京子とソラの3人が笑顔を浮かべて映っていた。
「……パパとママ、10年前はまだ付き合ってなかったって聞いてたけど、昔から仲が良かったんだね。
思わず、ここのパパとママの面影を重ねちゃったよ。10年前の2人だって解っていたのに……」
ソラは写真を見つめながら、そう言う。
『ソラちゃん、俺達にどうして欲しい?』
『やっと言ってくれたね…そんな事で良いなら、いくらでも一緒に寝てあげるよ!いつでもおいで。』
ツナに言われた言葉が頭の中でフラッシュバックした。
「……今日はパパと一緒に寝たいな。……まだ、起きてるかな…?」
ソラはそう思い、私室を出て、地下6階へ向かった。
ーー地下6階ーーツナと獄寺の寝室ーー
獄寺は今治療中で、病室の方にいるので、この部屋にはツナ1人だけだった。
「ふぅ……疲れたっ」
実は、午後からはラルの下で修行をしていたツナ
午後だけだったにも関わらず、ラルの修行はスパルタだったので、心身ともに疲れ切っていた。
その時、ノックの音が聞こえた。
ツナは二段ベッドの上から降りて、扉まで駆け寄って開けた。
そこにはソラが居た。
「ソラちゃん?」
「もしかして、寝てた?」
「ううん、ベッドで横になってただけだよ。あっ、中に入って。」
「お邪魔します。」
ツナにそう言ってから、中に入ったソラ
ソラは下のベッドが空いていたので、そこに座る。
ツナもソラの隣に座った。
「リボ兄から聞いたよ。午後からはラル姉の修行を受けてたって。」
「う、うん……」
「休んでた分も含めて、かなりスパルタだったって聞いたよ。」
「うん、かなりきつかったよ……だから、もうクタクタでね。」
「お疲れ様。」
「ありがとう。ところで、俺と話をするためにここへ来たの?」
ツナはソラがここに来た理由はなんとなく解っていたが、敢えて聞く。
「えっと……その、綱吉さんと一緒に寝たいなって思って……でも、疲れてるみたいだから、戻るね。」
そう言って、立ち去ろうとしたソラを止めたツナ
「いいよ、一緒に寝よう?俺もソラちゃんと寝たいし。」
「……本当?」
「うんっ」笑顔で頷くツナ
ツナはソラに返事した後、部屋の電気を消しに移動した。
部屋の電気を消した後、そのままベッドに戻ってきたツナ
「下は獄寺君が使ってるベッドなんだけど、今はいないから、ここで寝よう。」
「いいの?」
「うん。ほら、横になって。」
ツナに言われ、靴を脱いで、ベッドに寝転ぶソラ
ツナもソラの横に寝転んだ。
「ソラちゃん、もっとこっちにおいで?」
「えっ……でも……」
「しょうがないな……」
ツナはソラを引き寄せて、抱きしめた。
「あっ……」ツナの行動に驚くソラ
「これなら、安心して眠れるでしょ?」
「う、うん……」
「なんか不思議だな……ランボやイーピン、それにフゥ太とも一緒に寝た事あるけど、それとは何か違う感じがする……」
「そうなの?」
「うん。……どう?眠れそう?」
「うん。綱吉さんの傍も、京子さんと同じで、とっても安心できるから……」
満面の笑顔でそう言うソラ
「それは良かったっ」
(やっぱり安心する……ママの時も思ったけど、時代が違っても、2人の傍が安心出来る場所なのは、変わらないんだね。)
昨日と今日で、10年前のツナや京子の傍でも安心して眠れる事が解って嬉しいソラ
ツナの温もりを感じながら、少しずつ、少しずつ眠気に誘われいき、ゆっくりと瞼を閉じた。
少しすると、規則正しい寝息が聞こえてきた。
(寝ちゃったか……ソラちゃん、寝付きいいんだね。)
ツナはソラの頭を撫でながらそう思った。
しばらくの間、そのまま頭を撫でていたが、
突然ソラが身動きし、ツナにしがみついてきた。
ツナは少し驚いたが、すぐに笑みを浮かべた。
「俺なんかの傍で安心できるなら、いつでも来ていいからね。」
そう言って、ソラを優しく抱きしめながら、眠りについたツナ
その様子は、本当に親子そのものだった。
今回もまたまた完全オリジナルです。
この話では、ツナに連れられて、獄寺と山本の所へ行き、
お話をして、ソラが少しだけ心を開くお話です。
それでは標的20へお進みください。