夜が明け、朝になっていた。
部屋の備え付けのデジタル時計は、現在午前7時を指していた。
ツナと京子はお互い椅子に座ったまま、ソラは京子に抱かれたまま、寝ていた。
リボーンはベッドで寝ていたが、今は起きている。
「う、う〜ん……」目を覚ますツナ
まだぼんやりする目を擦りながら、横に視線を向けた。
そこにはソラを抱いたまま、タオルケットに包まって寝ている京子の姿があった。
京子を見て、一気に目が覚めたツナ
「目が覚めたか?ツナ」
「リ、リボーンっ」京子からリボーンへと視線を移す。
「ちゃおっス。顔真っ赤だぞ?ツナ」
「なっ…!?」
ツナの声で目を覚ました京子
「あっ…京子ちゃん」
「ツナ君…?」ぼんやりする目でツナを見た。
「うん、俺だよ。」
「おはようっ、ツナ君、リボーン君」
徐々に目が覚め、笑顔2人に挨拶する京子
「うん、おはようっ」
「ちゃおっス。京子、ソラの熱はどうだ?下がってるか?」
そう言いながら、ソラに視線を向けるリボーン
「あっ…」リボーンに言われて思い出し、自分が今抱いてるソラに視線を向けた。
ツナも同じく、ソラに視線を向けた。
「スゥ……スゥ……スゥ……」
ソラは京子の体に寄り掛かったまま、安らかな寝顔を浮かべていた。
京子はソラを起こさないように、額の冷却シートをそっと剥がしてから、額に手を添えた。
「……まだ熱はあるけど、昨日よりだいぶ良くなってる。」
そう言って、額から手を離す。
「良かったーっ」ツナは安心した表情を浮かべた。
「雲雀が持ってきた薬のおかげだな。」
「うん。あとで雲雀さんにお礼を言わないと…」
「その必要はないよ。」
突然聞こえてきた声に振り向くツナ達
振り向いた先には、雲雀が立っていた。
「雲雀さん!?」
「うるさいよ、沢田綱吉」
そう言いながら、ツナ達に近づく雲雀
「あっ、ごめんなさい。」
「ワォっ……久しぶりだね、君に寄り掛かったまま寝てるソラを見るのは……」
雲雀は懐かしそうに、京子に寄り掛かったまま眠っているソラを見て、そう言った。
「えっ……」
「今よりもっと小さかった頃は、良く見かける光景だったよ。」
「そうなんですか?」
「あの、雲雀さん」
「なんだい?」
「ソラちゃん…薬、飲んでくれました。」
「……本当かい?」目を丸くして驚く雲雀
「は、はい…」
「正直、飲めると思ってなかったから、びっくりだよ。」
「えっ!?」
「……君達、ソラの心を開かせたね?」
ソラを見つめながら言う雲雀
「解るのか?雲雀」
「当たり前だよ、ソラがこんなに安心しきって寝てるんだ。見てればすぐに解るよ、君達に心を開いたってね……」
「そうか。」
「それに、不安定だった心も少しだけ良くなってるんじゃない?」
「雲雀さん……」
「沢田綱吉、笹川京子」
「「は、はいっ」」
「ありがとう。」微笑みながら言う雲雀
ツナは雲雀が笑みを浮かべているのを見て、少し驚いていた。
「それじゃ、僕は戻るよ。出来れば、ソラと話したかったんだけど……寝てるのを起こすわけにもいかないしね。
沢田綱吉、ソラが起きたら、伝えてくれるかい?」
「な、なんですか?」
「昨日の件、上に報告しなくていいって、伝えておいて。それで解るから。」
「わ、わかりましたっ!」
雲雀はツナの返事を聞いたあと、病室を出て行った。
「さて…京子、ソラをベッドに寝かせて、俺達は朝飯食いに行くぞ。」
「えっ…でも…」
「大丈夫だ。熱はだいぶ下がってきてるし、少しの間なら平気だぞ。」
「……わかった。ツナ君、お願い。」
「あっ、うん。」
「あっ…待って。」
「な、何?」
「ちょっと待っててね。」
ツナにそう言った後、京子は自分の服を掴んでいるソラの手をゆっくり解いていた。
「あっ…また掴んでたんだ?」
「うん、癖なのかな?……解けた!ツナ君、いいよ。」
京子のOKが出たので、ツナはソラを起こさないように、そっと抱きあげ、
ベットの方へそっと降ろして、寝かせた。
「スゥ……スゥ……スゥ……」
ベッドに寝かされた後も、少し身動きしただけで、何ともなかった。
「大丈夫そうだね。」
「うん。あっ、新しい冷却シート貼らないと……」
そう言って、新しい冷却シートを貼り、タオルケットを掛ける京子
「んじゃ、行くぞ。」
リボーンの掛け声で3人揃って、病室を後にした。
あれから、少しだけ時間が経った。
ソラは騒がしい声を聞き、目を覚ました。
「ランボ!静かにする!!」
「ガハハッ!嫌だもんねー!」
「ランボちゃん、静かにしてないと、起きてしまいますよ!!」
(もう起きてるよ……ランボ兄の声だったのか。)
「おれっち、静かになんて出来ないんだもんね!!」
そう言いながらベットに飛び乗ったランボ
「ランボ君、病室は静かにする所だよ?」
ソラが起きているとは思っていなかったので、驚くランボ
「あっ…ソラちゃん、ごめんなさい!起こしてしまって……」
「別に構いませんよ。寝過ぎなくらいでしたら、ちょうど良かったです。」
「ソラさん、大丈夫?」
「大丈夫。昨日よりだいぶ楽になったから。」
イーピンを安心させるように、笑顔で言うソラ
「ソラちゃん、昨日はごめんなさい!!」
そう言って、頭を下げるハル
「な、なんで謝るんですか!?う゛っ……」
言いながら、体を起こしたが、急に動いたのがいけなかったのか、痛みが走って、またベッドに寝転んだ。
「ソラちゃん!!大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫です。それより、どうして謝るんですか?むしろ、私の方がみなさんに迷惑をかけたんですから、謝るのは私の方ですよ。」
「いいえ、違います!だって、ハルがアジトを抜け出さなければ、ソラちゃんは病室に運ばれなくて済んだんですからっ!」
「……でも、そうしなかったら、イーピンちゃん、あのまま高熱に魘されてたと思います。ハルさんがちゃんとしたお医者さんに見せた方が
良いと思うのは当たり前です。病気になったら、すぐにお医者さんに見せる……それが普通なんですから。」
「ソラちゃん……」
「ソラさん…」
「そんな顔しないで。イーピンちゃん」
「でもっ」
「風邪、治ったんだよね?」
黙って頷くイーピン
「なら、それでいいじゃないですか。」
「ちっとも良くないぞっ」
聞こえた方に視線を向けると……
この病室の入口前で腕を組み、仁王立ちで怒った顔をしたラルが居た。
「ラル姉…」
「まったくっ……」
「ごめんなさい。」
「謝るな。お前のその状態に気付けなかったオレ達が悪いんだ。すまかった、ソラ」
そう言いながら、ベッドで横になっているソラへ近寄るラル
「……怒ってたんじゃないの?ラル姉」
「お前に怒ってたんだじゃない、自分に怒ってたんだ。」
「そっか。でも、私はもう平気だから、自分に怒るのはもうやめて?」
「……相変わらずだな。」
「今さらでしょ。」
「ふっ…違いない。」笑みを浮かべて言うラル
(……なんか、ハル達、忘れられているような……)
「それから…すまないっ、沢田達に言ってしまった。」
「リボ兄から聞いた、私が苦しんでるのを見て、見てられなくなったって……だから怒ってないよ。口止めしちゃってごめんね?ラル姉」
「いや、気にするな。お前のその判断は間違ってはいないんだ。だが、あの時のオレは冷静さを欠き、
その勢いで沢田達に言ってしまったんだ。」
「ごめん。」
「……オレはお前が苦しんだりするのを見たくないんだ。だから、あまり1人でなんでも抱え込もうとするな。
オレで力になれる事があったらいつでも言ってくれ。」
そう言いながら、ソラの頭を撫でる。
「うん。」
「じゃあ、オレは部屋に戻る。ゆっくり休めよ?ソラ」
そう言って、ソラの頭から手を離し、病室を出て行った。
入れ違いでビアンキが入ってきた。
「あら、起きてたの。ソラ」
「うん。ランボ君の賑やかな声でね。」
「そう……京子達からも聞いたけど、具合はどう?」
「だいぶ良くなったよ。」
「良かったわ。」
「ソラ、今日はおれっちと遊べる?」
「えっと……ごめんね、遊べない。」申し訳なさそうな顔でランボに言うソラ。
「ランボさん、ソラと遊びたい!!いつになったら、遊べるんだもんね!?」
「ん〜……明日、かな?」
「……待てない〜っ!ランボさん、明日までなんて待てないんだもんねー!!」
ベッドの上でジタバタし出すランボ
「ランボ!わがまま言わない!!ソラさん、安静!!」
「ランボちゃん、ハル達が遊んであげますから……」
「ソラじゃないと嫌だもんね!ここに来てから、ソラとまだ遊んでないっ!!」
「あっ…(そういえば、まだ一緒に遊んでなかったっけ……)」
「それにイーピンだって、ソラと遊びたいだろっ!?」
「そ、それはっ……イーピンもソラさんと遊びたい。でも、イーピン我慢する!だからランボも我慢!!」
「が・ま・ん……やっぱり我慢出来ないーっ!!」
「何騒いでやがる、アホ牛」
「ランボ君、どうしたの!?」
「ランボ!お前、何騒いでんだよ!?」
「ビアンキさん、いったい何が?」
ビアンキはリボーンと京子とツナに、今あった事を簡単に説明した。
「ソラと遊びたい!ソラと遊びたい!ソラと遊びたいんだもんねー!!」
泣きながら、ジタバタするランボ
「こらっ!ランボっ!!」
「ランボ君、ソラちゃんは安静にしていないといけないの。だから、我慢して?」
「アホ牛、ソラに迷惑かけんじゃねぇっ」
ソラはランボの様子を見ていたが、突然ゆっくりと体を起こした。
「ソラ、寝てなくちゃっ」
「大丈夫だよ、ビアンキ姉」
ソラは自分の右側にある籠の方へ体を向けた。
籠の中には洗濯した服が畳んで置かれており、その上にソラの匣がいくつか置かれていた。
ソラは右手を伸ばして、その中の1つの匣を手に取った。
「ビアンキ姉、マモンチェーンを解いてくれる?」
匣を左手に持ち替え、右手をビアンキに差し出す。
ビアンキは言われた通り、右の中指の晴系リングのマモンチェーンを解いた。
「ありがとう。……ランボ君」
ビアンキにお礼を言った後、ランボに話しかけた。
「なんだもんね?」
ソラの声でピタリと泣き止むランボ
「私は遊んであげられないけど、代わりにこの子がランボ君と遊んでくれるよ。出ておいで…」
そう言って、晴系リングに晴の炎を灯して、匣に差し込み、開匣した。
匣から飛び出したのは、両耳と尻尾に晴の死ぬ気の炎を灯し、道着を着ているカンガルーだった。
リボーンとビアンキ以外のみんな、出てきたカンガルーに驚いていた。
「カンガルーだもんね?」
「そうだよ。この子の名前は太陽(たいよう)……私のお友達だよ。」
【ソラ、極限に俺は遊んでやればいいのか?】
「うん、そうだよ。ダメだった?」
【いや、別に構わないぞ。】
「よかった。」
「あの、ソラちゃん?言葉が解るの?」
ツナがそう言ったのも無理はない。
なぜなら、ツナ達にはただの動物に鳴き声にしか聞こえないのだから。
「う〜ん……解るっていうより、聞こえるって言った方がいいかな…?」
「聞こえる…?」
「うん、動物と心を通わせてお話するの。」
「俺達には動物の鳴き声にしか聞こえないが、ソラはそのまま人間の言葉が聞こえてくるらしいぞ。」
「あっ、心を通わせてない時は、普通に動物の鳴き声が聞こえるけどね。」
「凄いね……っていうか、リボーン!お前、知ってたのか!?」
「ああ。太陽に会うのは2度目だぞ。」
「全然、凄くなんかないよ。」
「えっ!?充分凄いと思うんだけど……」
「動物とお話出来るの、凄いなって思うよ。ねっ?ハルちゃん」
「はいっ、凄いと思います!ハルだって動物さんとお話してみたいくらいですよ!!」
「……人とは違う能力を持っているからといって、決して良い事ばかりじゃないですよ。」
「そうなんですか?」
「……たまに、本当に心を通わせていなくても…聞こえてくる事があります。聞く言葉はざまざまですよ。
嫉妬、怒り、恨み、悲しみ……私達人間に酷い事されたり、捨てられたりした動物の声を聞く事があるんです。
こっちが聞きたくなくても、勝手に聞こえてきてしまうんです。」
悲痛の表情を浮かべながら、俯くソラ
それを聞いて、ビアンキ、リボーンを除いたツナ達全員が驚く。
沈黙が続いた……
【ソラ……】
「あっ、ごめん。で、どうかな?ランボ君」
「遊びたい!ランボさん、あのカンガルーと遊びたいぞー!!」
「わかったよ。イーピンちゃんも一緒に遊んでもらうといいよ。」
「え!?でも……」渋るイーピン
【2人まとめて遊んでやるぞ!】そう言って、自分の胸を叩く太陽
「2人まとめて遊んでくれるって。どうする?イーピンちゃん」
「じゃあ、イーピンも一緒に遊ぶっ!!」
それを聞いて、顔をぱあっと明るくして喜ぶイーピン
「決まりだね。じゃあ…太陽、お願いね?」
【極限任せなっ】そうソラに返事を返した後、ランボとイーピンを自分の肩にそれぞれ乗せて、病室を出ていった。
「あっ!ランボちゃん!イーピンちゃん!」
「心配しなくても大丈夫ですよ。ああ見えて、太陽は面倒見良いですから、しばらくは任せましょう。」
「そ、そうですか……って、ソラちゃん!ハルにも敬語は使わないで、話して下さいっ!この時代のハルと同じように!!」
「えっ……」
「ツナさんや京子ちゃんはタメ口で話せて、ハルには話せないんですか?」
泣きそうな顔でソラに言うハル
「………」何も答えずに俯くソラ
「ソラ……」ソラを心配そうに見つめるビアンキ
「ハルはもっとソラちゃんと仲良くなりたいんですっ!!」
「……少し、時間を下さい。」
「っ……」その言葉を聞いて、ハルは病室を走って出て行った。
「あっ、ハルさん!う゛っ…」
ハルが走っていったのに気付き、すぐに追いかけようと体を動かしたが、激痛がソラを襲った。
「ソラ!」慌ててソラを支えるビアンキ
「ソラちゃん、大丈夫?」
「どうしてハルにあんな事言ったの?」
答えを返す事が出来ず、黙ったままのソラ
「……まだ戸惑っているのね?」ソラの気持ちを察して言うビアンキ
「え?でも、俺や京子ちゃんには、普通にタメ口で話せてるよね?」
「2人は私にとって特別だからだよ。(パパとママだから、話せているだけで、正直、まだ戸惑ってる…)」
「「えっ」」ツナと京子が同時に声を出した。
(俺と京子ちゃんが……特別?)
(私とツナ君が……特別?)
ツナ、京子はそれぞれ、同じ事を心の中で言っていた。
「今すぐには無理……心の整理をする時間が欲しい。」
「そっか、わかった。」
「ソラちゃん、ハルちゃんの事が嫌いなわけじゃないんだよね?」
「嫌いじゃないよ。」
「なら、あとは時間の問題だな。」
「私、ハルちゃんの所に行ってくるね。」
そう言って、出て行ったハルを追いかけていった京子
「リボーン、ツナ、ソラを着替えさせるから、部屋を出て頂戴。」
「ああ、わかったぞ。」
「うん。」
リボーンとツナが出ていく。
「ソラ、大丈夫?」
「……ハル姉の気持ち、ちゃんと解ってる。でもっ……」
ビアンキは黙ってソラを抱きしめる。
「ビアンキ姉?」
「大丈夫。たとえ繋がりがなくても、ハルはハルだから。すぐには無理かもしれないけれど、この時代のハルと同じ様に接してあげて?」
「……うん。」
ーー地下5階ーー第一医療室C前ーー
「…ねぇ、リボーン」
「なんだ?」
「ソラちゃんが心を開いたのは、俺達…だけなのかな?」
「さぁな…だが、あいつは今、ハルとの間の壁もぶち壊そうとしてる。まだそれをぶち壊すだけの勇気がねぇだけだ。」
「そっか……リボーン、俺はどうすればいいかな?」
「どうもするな。ただ、ソラをちゃんと支えてやればいい。」
「わかった。」
しばらくそうして時間が過ぎた頃、ドアが開いた。
振り向くリボーンとツナ
そこにはソラを抱き抱えたビアンキが居た。
「あれ?どこ行くの?」
「トイレよ。」
「そっか。あっ、ソラちゃん」
「何?綱吉さん」
「雲雀さんからの伝言だよ。昨日の事は上に報告しなくていいって。」
「……恭兄が?」
「うん。そう言えば、ソラちゃんには解るからって……」
「そっか。ありがとう、綱吉さん」
「雲雀さん、ソラちゃんには優しいんだね。」
「恭兄、優しいよ。」
満面の笑顔で即答するソラ
「それと、朝ご飯…食べれる?」
「大丈夫、食べれるよ。」
「じゃあ…俺、食堂から取ってくるよ、後でね。」
そう言って、大食堂に向かって駆けていくツナ
「……もうツナや京子にはちゃんと自然にタメ口で話せてるな。」
「うん。パパとママだからね。繋がりがある分、すぐに壁をぶち壊せたけど……」
「ハル達はそう簡単にはいかねぇ……っか。」
「うん……いざ、ぶち壊そうと思うと、体が震えちゃって……」
「そうか……俺は中で待ってるぞ。」
「うん。ビアンキ姉、行こう?」
「ええ。」ビアンキはソラを抱いたまま、トイレへ向かった。
2人を見送った後、リボーンは病室の中に戻った。
少し時間が経ったあと、ソラとビアンキが戻ってきた。
部屋に入り、ソラをベッドに降ろしたビアンキ
「ありがとう、ビアンキ姉」上半身を起したまま、お礼を言うソラ
「どういたしまして。それじゃ、私は行くわね?」
「うん。」
ビアンキは病室を出て行った。
「……ねぇ、リボ兄」
「なんだ?」
「私が寝てる間……ビアンキ姉から、何を聞いたの?」
その言葉に反応して、体が少しビクついたリボーン
「…なぜそう思った?」
「なんとなく。」
「超直感…か。ああ、ビアンキから聞いたぞ。お前がこの時代の俺の最後を見取った事と……
お前の背中に、消えない傷痕がある事をな。」
「そっか……傷痕がある理由は聞いてないんだよね?」
「ああ、聞いてねぇ。」
それを聞いてほっとするソラ
「…なぁ、なぜこの時代の俺の最後の望みを叶えた?」
「なんでって……リボ兄だからだよ。」
「?」
意味が解らないといった表情で自分を見ていたリボーンを自分の膝の上に乗せて、抱きしめるソラ
「リボ兄は…いつも私の面倒を見てくれてた。いっぱい遊んだり、勉強教えてくれたり、戦い方を教えてくれたり、
パパとママがいない夜、一緒に寝てくれたり……たくさん、たくさん、リボ兄には感謝しても感謝しきれないくらい。
だから……いつかリボ兄に恩返しがしたいって思ってたんだ。」
「だから、望みを叶えたのか?最後に見取る事を承知の上で……」
「……うん。超直感が、教えてくれたから……リボ兄の命は…もう、長くないって……だからっ…」
この時代のリボーンの最後を思い出したのか、目に涙を浮かべるソラ
「この時代の俺は……最後、どんな表情だった?」
「笑ってた……最後の願いを…叶えてくれてありがとうって、言ってくれた。」
「そうか…」
少し時間が経った後、ツナと京子がお粥を持って現れた。
「ソラちゃん、おまたせ。」
「リボーン君、ここに居たんだ。」
「ああ。」
「じゃあ、ご飯食べる前に、熱測ろうか?」
京子はソラに体温計を渡す。
「あっ…うん…」
ソラはリボーンを横に降ろしてから、体温計を受け取って、左の脇の下に差し込んで、左腕を軽く押さえた。
「ハルちゃんの事だけど、今は落ち着いてるから大丈夫。また頑張ってソラちゃんにアタックするって……」
「あははっ……ハルさんらしいよ、そういう所は昔からだったんだね。」
「えっ…あ〜…ハル、やっぽ中身変わってないんだ?」
「見た目が変わった以外は、あまり変わりはないって言ってたよ、この時代の綱吉さんが。」
「そうなんだ。」
その時、体温計の音が鳴った。
ソラは左の脇の下に差し込んでいた体温計を抜き、京子に渡す。
「37度8分……昨日よりかなり下がってるね。」
「……昨日何度だったの?高熱を出した事はリボ兄から聞いてたけど…」
「39度5分だよ。」
「えっ…!?そんなにっ!?」
「見てるこっちがつらいと思うくらい、苦しんでだよ。」
「ラル・ミルチさんが言ってた。私達の身勝手な行動がソラちゃんの負担になってたって……」
「そんな事っ…」
ソラの口に人差し指を添えるツナ
「俺達、あの後、ここに来てからの事を振り返っていたんだ。考えれば考えるほど、こうして俺達が普通にここで暮らせるのも、
食事が出来るのも、修行に専念出来るのも……誰かが支えてくれてるからなんだって……だから、ごめん。」
「私も、ごめんなさい。」
ソラに頭を下げるツナと京子
「謝る事なんて何もないっ!京子さんやハルさんがアジトを抜け出した理由は知ってる、そうなるのも無理ないってちゃんと解ってる!!
だから何も言わなかったっ……ううん、言えなかったっ!私達にとっては日常でも、10年前から来たみんなからしたら、
非日常な事だらけだったからっ……」
悲痛の表情を浮かべながら、必死になって言うソラ
「ソラちゃん…」
「でも、私達が勝手な行動を取らなければっ」
「そうやって、自分を責めるのが解っていたから、リボ兄達に口止めしてたんだよ。みんなの、そんな自分を責めるような表情を
見るのが嫌だったからっ…」
「そういうことだ。ソラがそう言ってんだから、もう謝るのはやめにして、これからは気をつけて行動すればいいじゃねぇか。」
「…そうだね。」
「じゃあ、ご飯にしようか。」
そう言って、お粥をソラに見せる京子
「……これ、もしかして京子さんが作ったんですか?」
「?…そうだよ。」
(…このお粥、中学の時にはもう作ってたんだ。でも、久しぶりだな……ママのお粥。)
普通のお粥に、栄養たっぷりの物がいろいろ入っているのを見ながら、そう思ったソラ
「…ソラちゃん、もしかして京子ちゃんの作ったこのお粥、前に食べた事あるの?」
ソラがお粥を見て笑みを浮かべているのに気付いたツナ
「あるよ、前に風邪ひいた時に。」
「そうなんだ。」
「これ、好き?」
「うん!普通のお粥って、味が薄過ぎて、あんまり美味しくないんだけど、このお粥だけは別っ」
満面の笑顔で即答するソラ
「良かったっ」笑みを浮かべる京子
「そういや、昨日のお粥、完食してたな。」
「……全然食べた覚えがないんだけど……」
「お前、意識がほとんどなかったからな。昨日、お前が京子に抱かれた状態だったのも、元を辿れば、
お粥を食べさせるためにやった事だしな。」
「……どういう事?」
体全体に痛みを感じ、高熱で苦しんでいたソラに、お粥をあげたが、すぐに吐き出してしまった事。
ビアンキがこの状態なら、食べれるのでは?っと思って、京子に横抱きしてもらった事。
その状態なら、お粥を食べても吐き出さなかった事。
リボ―ンは昨日ソラにお粥をあげた時の事を話した。
「……えっと…ごめんなさい。」
頭をペコリと下げるソラ
「なんで謝るの!?」
「いや、だって……」
「迷惑なんかじゃないよ。」
ソラの言いたい事が解ったのか、京子がそう言った。
「そうだよ。だから気にしないで。」
「私達がしたくしてしたんだって、言ったじゃない。」
「………ありがとう。(そっか、あれは夢じゃなかったんだ……ありがとう、ママ)」
「じゃ、食べさせてあげるね。」
「えっ……自分で食べちゃダメ?」
「「ダメっ」」
ツナと京子が同時にそう言う。
(やっぱりかっ…)
「諦めろ、ソラ」
「……リボ兄、楽しんでるよね?」
「ああ、楽しませてもらってるぞ。」
ソラはリボーンのその言葉にため息をついた。
「じゃあ、お願いします。綱吉さん、京子さん」
その言葉に満足そうに笑みを浮かべる2人
2人は交互にお粥をソラにあげていた。
その様子は本当に親子そのものだとリボーンは思った。
今回も完全オリジナルです。
この話では、ツナや京子とは打ち解けれたが、
ハル、獄寺、山本の3人にはまだ戸惑っている様子を書きました。
ここでは、初めてソラのアニマル匣が登場です!
晴カンガルーの「太陽(たいよう)」、ソラの1番のお友達です!
詳細は設定の方に書かれてありますので、そちらをお読みください。
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