心を開いて…

ビアンキがソラの体を拭いた後、新しいパジャマを着せて、冷却シートを貼り替えた。
ちょうど良いタイミングでツナと京子の声が外から聞こえてきた。

「あの…ビアンキさん、入っても大丈夫ですか?」

「ええ、大丈夫よ。」

ビアンキからの許可が出たので、中に入ってくるツナと京子とリボーン
ツナの手には、お盆に載せたお粥の入った鍋を持っていた。

「いいタイミングで戻ってきたわね。」

「はい。急いでご飯食べて、ぱぱっとお粥を作っちゃいましたからっ!ツナ君と一緒に。ねっ?」
言いながら、ツナの方に視線を向ける京子

「う、うんっ……でも、ほとんど京子ちゃんに任せっきりだったけどね。」

「そんな事ないよ。」

(この子達、まだ付き合ってもいないのに、なんでこんなに良い雰囲気なのかしら。)
ビアンキは2人の事を見つめながら、そう思っていた。

「あの、ビアンキさん?」
会話をやめて、ビアンキを見るツナと京子

「なんでもないわ。それより、ソラにはやくご飯を食べさせてあげなさい。充分に冷ましてからあげれば、食べれるはずだから。
あっ、でもその前に包帯を巻かないとね……」

「あっ、私がやります。」

「あっ…ダメっ、京子!」
慌てて京子にそう言うビアンキ

「!!……酷いっ…」
しかし、一足遅かったのか、ビアンキの傍に行った京子は、ソラの左腕を見て、血相を変えた。

「ど、どうしたの!?京子ちゃん!?」
ツナとリボーンもベッドへ近寄った。

ソラの左腕を見て、ツナとリボーンも息を飲んだ。

「な、何これ!?昨日はほんの少しだけ痣になってただけなのにっ…!?」

「まさか、ここまで酷いとは俺も思わなかったぞ……」

「私も包帯を外した時、驚いたわ……」

「と、とりあえず…ビアンキさん、席を代わってもらえますか?」

「え、ええ……大丈夫?京子」
今まで座っていた席を京子と交代した。

「はい、大丈夫です。」

「はい、京子ちゃん」
雲雀から貰った塗り薬の缶の蓋を開けて、差し出すツナ

「ありがとう。ツナ君」
缶の中はクリーム状になっていて、それを指で少しすくった。

「ツナ、それは?」

「さっき、雲雀さんがここに来た時に持ってきてくれたんだよ。熱を下げる薬と打ち身に良く効く塗り薬を。」

「そう。」

京子は缶からすくった薬をソラの左腕の前腕部にそっと優しく撫でるように塗り始めた。

「京子、前腕部全部塗れよ。」

「う、うんっ……」

「ぐぁっ…う゛ぅっ…ぐっ…う゛あぁぁっ…」
今も苦痛の表情を浮かべながら、悲鳴を上げていた。

「撫でてるだけでも、痛いんだね……」
ソラが痛みで悲鳴を上げているのを聞いてそう言う京子

「ソラちゃん……」
心配そうにソラを見つめるツナ

(ソラ……なぜこうなるまで何も言わなかったんだっ!!)
心配そうに見つめながら、心の中でソラに問うリボーン


京子はソラの左腕の前腕部全部に塗った後、ガーゼを置いて、テープを貼り、丁寧に包帯を巻き始めた。
その間も、ソラは汗を流しながら、痛みと闘っていた。

「これでよしっと…」
京子は包帯を巻いた後、タオルでソラの汗を拭った。

「じゃあ、次はご飯だね。はい、京子ちゃん」
お粥の入った鍋から、お玉ですくって、小さい茶碗に移したのを京子に渡すツナ

「ありがとう、ツナ君」
ツナから受け取った京子は子供サイズのレンゲでご飯をすくって、熱を冷ましていた。

ツナはその間に京子の反対側に移動して、ソラの背中に手を差し込んで、上半身を少しだけ起こして、支えた。
京子は冷ましたお粥をソラの口元に持っていき、口の中に入れた……
ソラはなんとか食べようとしていたが、すぐに吐き出してしまった。

「……体全体が痛いのと、熱が高いせいで、苦しくて、とても食べられねぇみてぇだな……」
ソラの苦しそうにしている顔を見て、そう言うリボーン

「そんなっ……」

「どうすればいいんだよ!?」
ツナは、ソラをまた寝かせた後、リボーンに聞く。

「……そうだわ!」
ソラの苦しそうな表情を見て、ある事を思い出したビアンキ

「なんだ?ビアンキ」

「ちょっとね……京子、そのままそこに居てね?あっ、茶碗は置いて。」

「えっ?あっ、はい……」ビアンキに言われた通り、お粥の入った茶碗をベッドの横にある台の上に置く。

ビアンキは京子にそう言った後、ソラをそっと抱き上げる。

「ちょっ、ちょっとっ!ビアンキ、何をっ」ビアンキの行動を見て慌てるツナ

「慌てないで。」

「でもっ……」ソラを心配そうに見つめるツナ

「ビアンキさん?」ビアンキの行動を理解出来ていない京子

「京子もそんな顔しないで頂戴。……こうするのよ。」
そう言って、京子の膝の上にソラを降ろして、横抱きにし、体を京子の方に寄り掛からせた。
心臓がある、左胸の方に……
ビアンキがソラを離した後は、京子がしっかりとソラを抱き抱えた。

「ビアンキさん、これはいったい……」

「この時代の京子がね、ソラが今よりまだ小さかった頃、寝かしつける時によくこうしてるのを見た事があるのよ。だから、この状態なら、
少しは痛みがあっても、すぐに落ち着くんじゃないかと思って……」

「この時代の私が?」

「ええ。」

「へぇ……この時代の京子ちゃんが……」

(なるほど。確かに京子の心臓の音を聞きながらなら、安心出来るだろうな。)

その時、京子が抱いてるソラが少しだけ身動きした。
京子はそれに気付いて、ソラを見る。
釣られて、ツナ達も視線をソラに向けた。

……なんだろう……とってもあったかくて、懐かしい感じがする……
この音は………ママの…心臓の、音……?
夢……なのかな?でも、凄く安心する……

ソラはぼんやりした意識の中でそう思うのだった。
たとえ、時代が違えど、京子の傍は安心出来るようだった。

「ハァ……ハァ……」
苦しそうな表情が少しだけ和らいでいた。

「あっ…ちょっとだけ落ち着いてきてる……」
ツナがソラを見てそう言う。

「ほんとだ……」
京子もソラを見て、少しだけほっとしていた。

「ツナ、さっさと京子の隣に行って、飯をやれ。」

「あっ、うんっ」
リボーンに言われて、椅子を持って、急いで京子の隣に移動して座った。
お粥の入った茶碗を手に取り、先ほど京子がやっていたように、レンゲですくったご飯を冷ましていた。

「今度は大丈夫かな?」そう言いながら、ソラの口元に冷ましたお粥を持っていき、口の中に入れた。

様子を見守るツナ達……
ソラは今度は吐きだす事はなく、ゆっくり口をもぐ、もぐと動かした……少しすると、飲み込んだ。

「飲み込んだ!…今度は大丈夫みたいだねっ」ほっとするツナ

「これならなんとかなりそうね。じゃあ私は部屋に戻るわ。何かあったら呼んで頂戴。」

「はい!ビアンキさん」

「俺も行くぞ。おめーら、ソラの事頼んだぞ。」

「うん。」

「任せて、リボーン君」

「んじゃ、行くか、ビアンキ」

「ええ。」

リボーンとビアンキが病室を出ていき、残ったのは、ソラ、ツナ、京子だった。
ツナは同じ要領で少しずつお粥をソラに食べさせていた。

少し時間が立ち、お粥が入っていた鍋は空っぽになっていた。

「全部食べてくれたね。京子ちゃん」

「うん、良かったーっ」

「次は、薬だけど……」

「あっ、確か苦いんだったっけ?」

「うん。でも雲雀さん、もしソラちゃんが飲めなかったら、無理に飲ませなくていいって言ってたし、とりあえずあげてみるよ。」

ベッドの横にある台に置いてあるお盆から、お粥を持ってくる時に、一緒に持ってきたスプーンを手に取り、
液体ビンの蓋を開けて、スプーンに盛る。
そして、それをソラの口元に持っていき、そっと口の中に流しこんでいた。
ソラは顔をしかめていたが、薬を拒む事なく、ちょび、ちょびと少しずつ飲んでいた。

「飲んだ……あの雲雀さんでさえ、苦いっていう薬を……」

「苦そうな顔はしてるけどね。」

飲み終わったソラがまだ口の中が苦いからか、顔をしかめたままだった。

「ツナ君、お水を入れてくれる?」

「あっ、うんっ」
ツナは京子に言われてコップに水を注ぎ、ソラの口元までコップを移動させて少しだけ傾けて少しずつ水を流し込ませる。

口の中に流し込まれてきた水をソラはゆっくりとごく、ごく飲み始めた。

「そうとう苦かったみたいだね、お水がどんどん減ってる。」

「そうみたいだね。」

コップに入っていた水を空っぽにしたソラの口からそっとコップを離したツナ

「ふぅ……」

「お疲れ様、ツナ君」

「京子ちゃんの方こそお疲れ様。あっ、ベッドに戻そうか?」

「ううん、このままでいいよ。」
ソラを微笑ましそうに見つめる京子

「えっ…でも…」

「ソラちゃんの手元を見て。」

「え?手元…?」京子にそう言われ、ソラの手元に視線を向けるツナ

そこには、弱弱しいながらも、左手でしっかりと京子の服を掴んでいた。
どうやらソラは知らず知らずの内に、無意識に京子の服を掴んでいたようだ。

「いつの間に……」

「私もさっき気が付いたんだ。」

「そっか……でもソラちゃん、とっても安心して寝てるよ。苦しそうだった息も、いつの間にかしてないし。」

「そういえばそうだね。痛みも和らいできたのかな?」

「スゥ……スゥ……スゥ……」
まだ少し苦しそうではあるが、とても和らいだ表情をしていた。

寝ているソラの事を優しい眼差しで見つめるツナと京子

「寝てる時は、本当に年相応だね。」
そう言いながら、ソラを起こさないように気をつけながら、そっと頭を撫でるツナ

「うん、そうだね。起きてる時はとってもしっかりした子だけど…」

「こうしてみると、本当にまだ6歳なんだなって、実感するよ。」

「うん。こんな小さな体で、私達を守ろうとしてくれてたんだね。」


あれから時間が経ち、もう日付も替わり、夜中の2時頃になっていた。

「う…うーん……」ソラは目を覚ました。

(あれ…?ここは……う゛っ…)
目を覚ましたソラは部屋を見回そうとしたが、動かすと痛みが走ってしまい、上手く動かせなかった。

(体が…痛い……ん?)
そこでソラは誰かに抱かれた状態でタオルケットに包まっているのに気がついた。
小さな明かりだけしかついていないせいか、暗くて誰が抱いているのかがすぐには解らなかった。

(いったい、誰が……でも、この温もりはっ……)
ソラはそんなはずないと思いながらも、誰なのかが頭の中に浮かび上がった。
首を動かして、上の方に視線を向けるソラ
そして、それは的中していた。

(ママ!?……どうしてママがっ……)自分を抱いているのが京子だと解り、驚いていた。

「ソラ、起きたのか?」

そこで誰かの声がした。

「ここだぞ。」声のした方に視線を向けた。

そこにはリボーンがベッドの上で立っていた。

「リボ兄…?」

「ああ、そうだ。様子を見に来たんだぞ。」そう言いながら、そのままそこに座るリボーン

「……あれから、どうなったの?……“電撃蜂(エレットゥリコ・ホーネット)”を操っていた敵は……?」

「ツナが倒したぞ。」

「そっか……(あれは、やっぱりパパだったんだ。)」

「お前、あの後気を失って、ツナに背負われて帰って来たんだぞ。」

リボーンはアジトに帰ってからの事をソラに話した。
アジトに連れ帰ったソラが全身を痛め、高熱を出していた事。
ツナ達がラルに怒られていた事。
ソラがアジトと自分たちのためにいろいろ尽力していた事を明かした事。
ソラの事をみんな心配していた事。
雲雀がここに来て、薬を置いていった事。
ビアンキ、フゥ太、雲雀から、ソラが悪夢を見て、眠れない夜があると教えてくれた事。

ソラはリボーンの話を黙って聞いていた。

「こんなところだぞ。」

「そっか……パパ達に知られたんだ……言わないでって言ったのに……(迷惑かけちゃったな……)」
眉を顰めて言うソラ

「そう言うな。ラルも、俺も……もう黙っていられなくなっちまったんだ、お前の苦しむ姿を見てな……」

「ごめん……」申し訳なさそうな顔をして謝った。

「あと、お前と親しい関係にあるって事をフゥ太がツナ達に言ったぞ。」

「えっ……」

「安心しろ、ツナと京子がお前の両親だって事は言ってねぇ。」

その言葉を聞いてほっとするソラ

「それより、具合はどうだ?」

「……少しだけ…良くなったと思う。それで、どうしてこんな状態なの?」

「ああ、それはな……ビアンキが10年後の京子が、ソラがまだ今より小さかった頃、寝かしつける時によくこうしてたのを思い出して、
もしかしたら、こうすれば落ち着くんじゃないか?って言ってな。」

「それで、こうなってるの?」

「ああ、そうだぞ。ちなみにすぐ傍にツナも居るぞ、寝てるけどな。」

「えっ!?」

「…気付いてなかったのか?」

「うん……感覚、鈍ってるみたい…」

「そうか。」

その時、ソラは体を動かそうとし始めた。
京子を起こさないように、なんとか体を動かそうとしてみるが、痛みが邪魔して上手く動けない。
そんなソラの様子に気付いて、リボーンは声を掛ける。

「ソラ、何してるんだ?今、その体で動こうとしたら、また熱が上がるぞ?」

「わかってはいるんだけど……その……トイレ、行きたくなっちゃって……」

「なんだ、なら京子を起こして連れてってもらえばいいじゃねぇか。」

「……寝てるのに起こせないよ。私の看病……ずっとしてたみたいだし。」

その言葉を聞いてリボーンはため息をついた。

「ソラ、お前甘えなさ過ぎだぞ。言っただろ?甘えるのは子供の特権だってな。」

黙って聞くソラ

「確かに今ここに居る2人は10年前の姿だ。だが、お前の血の繋がった両親だろ?少しは甘えても罰は当たらねぇぞ。」

「でもっ……今のパパとママは、私が生まれる前の2人でっ……まだ付き合っていないし、親にもなっていない。
そんな2人に迷惑かけたくないっ……今はこんな状況下だから、なおさらだよっ……」
悲痛の表情で今にも泣き出しそうな声を出して言った。

「……確かにそうかもしれねぇ……だが、それはお前の本音じゃねぇ。ソラ、おめぇ自身はどうしたいんだ?ツナと京子に何を望む?」

「私自身……?」

「ああ、そうだぞ。」

少しの間、ソラは黙ったままだった。

「私はっ……私は、パパとママはいつでも一緒じゃないから、一緒に居られる時間を大事にしてきた。一緒に食事が出来た時も…
一緒にお出かけした時も…お風呂に一緒に入れた時も…一緒のベッドで寝た時も……他からしたら、小さな事かもしれないけど、
私はその時間をいつも楽しみにしてた。その時だけは甘えていいんだって思ってたから……」

黙ってソラの話を聞くリボーン

「……パパやママと……一緒に寝たい。2人の傍だと、今みたいに安心出来るから……
今まで、ずっとそうだったっ……2人のどちらかでもいい、そうすれば、悪い夢を見なくて済むから……」

「それがお前の望みか?」

「うん……」頷くソラ

「なら、言え。ツナと京子はお前のその望み、叶えてくれるぞ。」

「それはっ……」俯くソラ

「ソラ、今のツナと京子じゃ、頼りないか?」

「!…そんな事ないっ!!」大きな声で全力否定した。

「うわっ!?何!?」起きて、周りをキョロキョロしながら慌てるツナ

「きゃっ!?何?今の声……」目を瞬きなら、困惑している京子

ソラの大声に驚いて、目を覚ますツナと京子

「えっと……起こしちゃってごめんなさい……」申し訳なさそうな顔で言うソラ

「あっ……ソラちゃん!目が覚めたんだねっ!?」慌てていたツナが、ソラが起きているのに気付いた。

「ソラちゃん……具合、どう?」

「…少しだけ、良くなったと思います。えっと……看病して下さって、ありがとうごさいます。綱吉さん、京子さん」

「お礼なんていいよ、私達がしたくてしただけだから。ねっ?ツナ君っ」

「うん、そうだよ。あっ、着替えはビアンキがしてくれてたからね。」

(ビアンキ姉……ありがとう。)それを聞いてほっとし、ここには居ないビアンキに感謝する。

「京子」

「何?リボーン君」

「ソラをトイレに連れてってやってくれ。」

「!?…い、いいです!自分で行きますから、降ろして下さい!!」

「何言ってやがる、まだ体のあちこち痛くて、まともに動けねぇだろーが。」

「う゛っ…」リボーンにそう言われ、、言い返せないソラ

「ソラちゃん、少しは俺達を頼ってよ……」
ソラを心配そうに見つめながら、そう言うツナ

「じゃあ、連れていくね?」
そう言って、タオルケットをツナに渡して、椅子から立ちあがった京子

「うん、いってらっしゃい、2人とも。」
タオルケットを受け取った後、ソラと京子を見送るツナ

京子はソラを抱いたまま、病室を出てトイレに連れて行った。

「ツナ」

「何?リボーン」

「あいつ、今まであまり自分から甘えた事なさそうだぞ。」

「えっ!?」

「ソラとさっき話してて、改めてそう思ったぞ。おそらく、環境がそうさせたんだろうな。わがまま言っちゃいけない、
甘えちゃいけない、自分で出来る事は自分でする、迷惑かけないようにしっかりしないとっ……ってな。
ソラは賢い。だから周りのみんなが大人ばかりで忙しそうにしているのを見て、そう思うようになったのかもな……」

「そんなっ……」悲痛の表情を浮かべるツナ

「だから、俺が言うぞ。ソラがお前達に望んでいる事を……」

「俺達に……望んでいる事…?」

「ああ。ソラがさっき言っていたんだが、どうやら、ツナと京子、お前らのどちらかと寝る時だけは、絶対悪い夢を見ないらしい。」

「俺と京子ちゃんだけ?」

「そうだぞ。よく添い寝してもらってたそうだ。」

「そうなんだ。」

「ツナ、お前はその望み、叶えるか?」

「そんな事で良いなら、いくらでも叶えてあげるよっ!それでソラちゃんが安心して眠れるなら!」

「んじゃ、2人が帰ってきたら、お前が言え。ソラは絶対に自分からは言おうとしねぇから。」

「わかったよ、リボーン」

その時、ちょうどタイミング良く、2人が帰ってきた。

「ツナ君、リボーン君、ただいま。」
そう言って、ソラを抱いたまま、中に入ってくる京子

「あっ、おかえり!2人ともっ」

「あの、ベッドに「降ろさないよ。」えっ…」京子に途中で言葉を遮られたソラ

京子はそのまま椅子に座った。

「だって、ソラちゃん……こうしてた方が、悪い夢、見ないんだよね?」

京子に図星を指されて驚くソラ

「今、リボーンから聞いたよ。ソラちゃん、俺か京子ちゃんと一緒に寝てる時だけは、悪い夢を絶対見ないって…」
京子に続いてツナが追い打ちを掛けた。

「リボ兄……」
それを聞いて、リボーンを睨むソラ

「おめぇが言わねぇからだろ。」

「だからって……勝手に言わないでよ。」
不機嫌な顔で言うソラ

「それっ!!」

ツナが突然大声で叫んだので、驚いたソラ達

「ど、どうしたの?ツナ君…」

「何叫んでやがる、ツナ」

「どうか…しました?」

「ソラちゃん、敬語で話すの、やめない?リボーンに話す時にみたいにタメ口でいいからさ……」

「あっ…それ、私も言おうと思ってたの。リボーン君だげズルイっ」

「だそうだ。どうするんだ?ソラ」

ツナと京子にどう言葉を返せばいいかわからなくて、黙っているソラ

「フゥ太が言ってたよ。この時代の俺達には、タメ口だったって。」

(フゥ太兄っ!なんでそんな事言っちゃうかな!?)

「ソラちゃん、俺達は君の事、何も知らない。でも、君は俺達の事、良く知っているんだよね?」

黙ったまま頷くソラ

「ごめん、つらい思い…させちゃったね。」

「私達は、ソラちゃんともっと仲良くなりたい。」

「だから、もっと俺達を頼ってよ。そりゃ、出来る事は少ないかもしれないけど……君の力になりたいんだ。
俺達の事、10年後の俺達に接していた時のように話して欲しいな。」

「だから、私達にして欲しい事、リボーン君からじゃなくて、ソラちゃんの口から聞きたいな。」

2人からの優しい言葉が心に響き、目に涙を浮かべた。
ソラはそれに気付いて、慌てて涙を拭おうとしたが、京子に止められてしまった。

「我慢しなくていいよ。泣きたい時は、泣いていいんだよ?」
優しい声でソラに言う京子

「ソラちゃん、俺達にどうして欲しい?」
ソラの頭を撫でながら、優しい笑みを浮かべて、ソラに問うツナ

『こらっ、また我慢してる!泣きたい時はちゃんと泣きなさいっ』
『ソラ、1人で抱え込まないで。パパをもっと頼って欲しいな…』
ソラの頭の中で10年後の京子とツナに言われた言葉がフラッシュバックする。

(同じだ……昔のパパとママだけど、私の知ってる2人と…同じ事言ってるっ……)
ソラはツナと京子の優しい声を聞いて、この時代の2人の言葉を思い出し、ボロボロと涙を流し始めた。

「「ソラちゃん」」優しい声でソラに呼び掛けるツナと京子

「……一緒に、寝て欲しい。…綱吉さんか、京子さんと寝る時だけ……悪い夢を見ないで…安心して、眠れるから……」
ゆっくりと、ソラはツナ達にして欲しい事を口にした。

「やっと言ってくれたね…そんな事で良いなら、いくらでも一緒に寝てあげるよ!いつでもおいで。」

「私もツナ君と同じ気持ちだよ。」

「……ほんとに…いいの?……迷惑、じゃない?」

ツナと京子は顔を見合わせてから、ソラに視線を向け、
「「もちろん、迷惑なんかじゃないよっ」」
同時に笑顔でそう言う2人

「今は、我慢していた分の涙を流していいよ。俺達、ソラちゃんが泣き止むまで、傍に居てあげるから。」
そう言いながら、頭を撫で続けるツナ

「だから、不安な気持ち、全部吐き出していいよ。ちゃんと受け止めるから……」。

「ふぇ……ひっくっ……ひっくっ……うわあぁぁぁん!!」
ツナに撫でられている内に、次第に我慢が解かれ、大声で泣き出した。

ソラは京子の胸に顔を埋めて泣き続けた。
京子はソラの背中をポン、ポンと叩きながらあやし、
ツナは頭を撫で続けていた。
ソラが泣き疲れて眠るまで……

(やっと打ち解けれたな…ソラ……良かったなっ)
3人を見つめながら、そう心の中で言うリボーン


標的18へ進む。


今回も前回に続き、完全オリジナルです!
ソラの看病をするツナと京子+リボーン
ツナと京子がソラの心を開かせるお話です。
リボーンはその手助けです。
やっぱり、ソラの心を1番に開かせるのは両親であるこの2人だ!っと思います。
それでは標的18へお進みください。

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