ーー地下アジトーー第一医療室C−−
そこにはソラが寝かされていた。
ツナ達はあの後、すぐにアジトに帰還し、ソラを病室へ運んだ。
マント、ウェストポーチ、ガンホルダーをすべて外してから、ベッドに寝かせた。
ソラの小さな体に強力な電撃を浴びた事により全身を痛め、元々、左腕を負傷していたからか、
その部分が他に比べて激しい痛みを受けていた。
さらに最悪な事に、その激痛がずっと続いている事と、水の中に入ったせいで、
今まで溜めていた、過労・心労と重なって高熱を出してしまっていた。
「10代目っ!!」
「ツナっ!」
この騒ぎの事情を聞いた獄寺と山本が入ってきた。
「ご、獄寺君!?山本!?どうしてここに…っていうか怪我っ……」
「このくらい、なんともないっスよ!」
「そうなのな。少なくとも、ソラよりはな……」心配そうな表情でソラを見る山本
ここには、現在アジトに居るメンバー全員が揃っていた。
「…ソラさん、川の中から上がった後、左腕を押さえて痛そうにしてた。」
苦しそうにしているソラを見ながら言うイーピン
「!…それは本当なの!?イーピン」
黙って頷くイーピン
(気付かなかったわっ……この子、あの時から、痛みをずっと我慢していたのね……)
「はひっ!?ハル、全然気付かなかったですっ……」
図っていた体温計をソラから抜いたビアンキ
「…39度5分ね。」
「ハァ…ハァ……ぐぁっ…う゛ぅっ」
体中に走る激痛と、高熱で苦しむソラ
「ソラちゃん…(俺がもう少し早く着いていればっ…)」
心の中でそう言いながら、拳を強く握るツナ
「ソラちゃん……」
京子は涙を浮かべながら、苦しむソラを見ていた。
他の皆も同じような気持ちでソラを見つめていた。
「これでわかっただろ!!お前達がどれだけ身勝手な行動を取っていたかがっ!!」
ラルのその言葉で、顔を俯かせる京子とハル
「ソラはオレ達の知らない所でいろいろ動き回っているんだ!このアジトと、10年前から来たお前達のためにっ!!」
ラルは怒鳴り散らした。
「ごめん…なさい…」俯いたまま言う京子
「ハルが病院に行こうとしなければっ…」涙ぐみながら言うハル
沈黙が続いた……
「いやぁっ!!」
悲鳴を聞き、ここに居る全員、視線をソラに向ける。
「嫌っ…死んじゃ嫌っ…ひっくっ…置いて行かないでっ……う゛あぁぁぁっ!!」
ソラは涙を流しながら、悲鳴を上げていた。
ソラのその言葉を聞き、悪い夢を見ている事が解った。
「ソラ、落ち着いてっ…」
そう言いながら左手をソラの左手に添え、右手で頭を撫でて、落ち着かせるビアンキ
「ソラ、泣いてるんだもんね…」
「ソラさん、苦しんでる…」
最年少の2人でもソラが凄く苦しんでいるのを感じとっていた。
「ひっくっ……う゛ぅっ……」少し落ち着いたが、それでもまだ涙を流していた…苦痛の表情を浮かべながら。
(やっぱり…私じゃ、完全に落ち着かせる事は出来ないわ。ツナと京子じゃないとっ……でも、今の2人はソラの事を知らない。
いったいどうすればいいのかしら……)
「……ソラの心は今、不安定なんだ…10年後の山本から聞いた話だと、ソラの知っている奴が次々と亡くなっているからだそうだ。」
「えっ…!?」リボーンのその言葉を聞いて、驚くツナ。
他の10年前のメンバーも同様だ。
「……それだけじゃないわ。」
「まだ、何かあるんですか?ビアンキさん」
「ソラは……その中の1人の最後を……たった1人で見取っているのよ。」
ソラの頭を撫でながらそう言うビアンキ
その事にツナ達だけでなく、リボーンも驚いていた。
「ビアンキ!その話は本当なのかっ!?」
ポーカーフェースをめったに崩さないリボーンが動揺していた。
「ええ、本当よ。」
「この時代のツナ兄が言ってた。次々と知ってる人が亡くなって、眠れない夜が来るくらいの悪い夢を見るようになったって。」
「えっ…それって、ソラちゃん、眠ってない夜もあるの!?」
京子はフゥ太の言葉を聞いて、聞き直した。
「たぶん、あると思う……直接聞いた事はないけどね。」
「……とにかく、ここを出るか。」
「ソラの看病は私がするわ。」
「「待ってっ!!」」
ツナと京子が同時に言う。
「ソラちゃんの看病…俺にやらせて!」
「私も!ソラちゃんの看病をさせて下さい!」
「あなた達……」
「…ビアンキ、ツナと京子に任せてみねぇか?」
「……わかったわ。でもとりあえず、外に出ててくれるかしら?ソラの着替えをするから。」
「だったら、私もお手伝いします!!」
「気持ちだけ頂くわ。ソラは……あまり人に自分の体を見られたくないのよ。だから…」
「……わかりました。」
大人しく引き下がる京子
「さあ、みんな、この部屋から出るのよ。」
ビアンキのその言葉でみんなは病室を出る。
通路に出たツナ達は黙っていた。
「オレは部屋に戻る。」
ラルは病室に居るソラを心配しながらも、その場を去った。
「では、私も作戦室へ戻ります。」
ジャンニーニもソラの心配をしながらも、持ち場を長い事離れている訳にもいかず、作戦室へと戻って行った。
「とりあえず、応接室へ行くぞ。」
リボーンのその言葉で移動し始めるツナ達
ーー応接室ーー
ツナ達は応接室に着いた後も、誰も喋べらなかった。
「やっぱり、ソラは俺達の事、知ってるんだな…」
山本が突然そう言いだした。
「何?急に……」
「急じゃねえよ。……ツナ、ソラは俺達に対して壁を作ってる。」
「えっ!?」
山本のその言葉をその場にいるリボーン、フゥ太、ランボ以外の全員が驚く。
「実はさ、昨日……」
山本は昨日病室に来たソラの事をツナ達に伝えた、京子達が居るので、「陽色の姫君」の事は伏せて。
「そんな事が……」
「俺の所にも来ましたよ。あいつ、怖いのに、それを言わない……声が震えてました…」
「ソラちゃん、なんで泣かないんですかっ……ハルは怖かったですよっ!」涙ぐみながら言うハル
「そうだよね。私も昨日、怖かったっ…」
「さっき言った通り、小僧には親しそうに接してる。けど、俺らには敬語で話してるだろ?確かに俺達はソラの事知らねぇけど、
ソラは俺達の事を良く知っている……そうだろ?小僧」
「…ああ、そうだぞ。初めは俺にも他人行儀だったぞ。俺もソラの事はまだ良く知らねぇ……
けど、俺はこの時代の俺と同じように接するように言ったんだぞ。」
「ソラはここに居る全員、親しい関係にあるんだよ。特に…ツナ兄と京子姉の2人に1番懐いていたよ。」
「花の言った通りだ…」
「ん?なんだ、知ってたのか?」
「花から聞いたの。ソラちゃんは私やツナ君と仲が良かったって。今は私達にどう接していいか解らなくて、
戸惑っているだけだろうって……」
「そうだね、ソラは今のツナ兄達にどう接していいのか解らないのかもしれない。自分は知ってるけど、相手は自分の事を知らない…
これって、凄くつらい事だと思う。それに、どんなにしっかりしてても……ソラはまだ子供だからっ……」
悲しそうな顔をしながら言うフゥ太
「フゥ太…」
「ツナ兄、ソラは今ここに居るみんなに敬語を使ってるけど……この時代のツナ兄達にはタメ口だったよ。」
「えっ…そうなの?」
「おめーらはソラにどうすればいいか……もう解るよな?」
「うんっ!」頷くツナ
黙って頷く獄寺
「おうっ!」元気に言う山本
「はいっ!ハル、もっとソラちゃんと仲良くなりたいですっ!」
「イーピンもっ!」
「ランボさんもだもんねっ!」
「うん、私も!もっと仲良くなりたいっ!」
「ところで、ずっと気になっていたんですけど、ソラちゃんっていくつですか?」
「そういや、俺も知らねぇや。ツナ、いくつだ?」
「ソラちゃんは6歳だよ。」
「「えっ!?」」驚く山本とハル
「はひっ!?ソラちゃん、まだ6歳だったんですか!?」
「もう少し上だと思ってたのなっ」
「やっぱりみんなもそう思う?」
「ああ。ランボやイーピンと一つしか違わねぇんだろ?6歳って……あそこまでしっかりしてるもんなのか?」
「んな訳ねぇだろ!!野球バカっ」
「まあ、それは僕達もそう思うけど……ソラはまだ6歳になったばかりだよ。」
「えっ!?まだ6歳になったばかりなの!?」
驚いて、フゥ太に確認するツナ
「うん、そうだよ。」
「まだ小学生にもなってなかったんですかーーっ!?」
ハルは、ソラがまだ6歳になったばかりだと知って、驚きのあまり、叫んでいた。
「うっせぇぞ!!アホ女っ!!」ハルに怒鳴る獄寺
「そっか……今のこの状況が、ソラを苦しめてるんだよな?小僧」
「ああ、そうだぞ。」
「……俺、病室に戻るわ。一日も早く治して、修行しねぇとなっ」
そう言って、爽やかな笑顔を浮かべる山本
「あっ、武兄、僕が病室まで肩を貸すから、掴まってよ。」
「わりぃっ、サンキューなのな。」
「10代目、俺も部屋に戻って休みます。」
「じゃあ、獄寺さんはハルが。」
「なっ……」
「うん、わかったよ。2人とも、ソラちゃんの容態が良くなったら伝えるね。」
「おうっ!」
「はいっ!」
山本とフゥ太が出て行ったあと…
「獄寺さんを病室に送り届けた後、ハルがご飯を作りますね。ツナさん、京子ちゃん、こっちは任せて下さい!!」
「ごめんね、ハルちゃん」
「いいんですよ。京子ちゃんはソラちゃんの傍に居てあげて下さい。さあ、ランボちゃん、イーピンちゃん、行きますよ!」
「「はーい!」」
獄寺、ハル、ランボ、イーピンも出て行った。
残っているのは、ツナ、京子、リボーンだった。
その時、ビアンキが入ってきた。
「ビアンキさん、着替え、終わったんですか?」
「ええ。あっ、そうそう…ソラの右手首にリストバンドが着いたままだけど、それは外さなくていいから。」
「えっ…リストバンドをですか?」
「ええ、絶対に何があっても外しちゃダメよ?」
「…わかりました。」
「じゃあ私はハルとご飯の用意をするわ。着替えが必要な時は必ず私に言って頂戴。いいわね?2人とも」
「「はいっ!」」
「それ以外の事はすべて任せるわ。」
そう言って応接室から出るビアンキ
通路に出たビアンキ
「頼んだわよ、ツナ、京子…今のあの子を助けられるのは……きっとあなた達だけだろうから…」
そう言ってその場を去った。
応接室に残っているツナ達
「じゃあ行こうか?京子ちゃん」
「うん、そうだね。」
「リボーンはどうする?」
「俺も行くぞ。」
「わかった。」
ツナ達も応接室を出て、再びソラの居る病室へ向かった。
ーー第一医療室C−−
「ハァ…ハァ…ハァ…っ…う゛ぅっ……」
ソラは苦しそうに息をしながら、激痛に耐えていた。
汗をかくたび、京子はタオルでソラの体を拭く。
途中で水分を取らせる事も忘れずに……
それの繰り返しだった。
(ソラ…こんなになるまでっ…くそっ……俺がもっと気をつけてソラの事を見ていればっ…)
リボーンはソラを見つめながら、心の中で悔やんでいた。
「ソラちゃん……」
ツナは京子が居る方とは反対側に椅子を置き、そこに座って、ソラの右手を握っていた。
京子は図っていた体温計をソラから抜くと……
「39度…少しだけ下がってるけど……」
そう言いながら、ソラに視線を向ける。
「ハァ…ハァ…う゛ぁっ…ハァ…ハァ…う゛ぅっ…」
先程と変わらず、苦しそうな表情のソラ
その時、誰かが部屋に入ってきた。
それに気付いたツナ達は入口に視線を向ける。
そこには雲雀が居た。
「雲雀さんっ!!」
「事情は哲から聞いたよ。君達、何やってんの。」
不機嫌そうな顔で言う雲雀
その言葉に俯くツナと京子
「雲雀…」
「赤ん坊、ソラの容態は?」
「電撃を全身に受け、左腕の怪我悪化、さらに高熱だ。」
「哲の報告通りだね。」
「あ、あのっ…雲雀さんっ」
「…本当は今すぐにでも君を咬み殺したい所だけど……」
そう言いながら、鋭い視線をツナに向ける。
「ひっ……」
「ソラが悲しむから、今回は咬み殺さないでおくよ。」
「えっ……」
雲雀は京子の傍に寄った。
そして、手に持っていた紙袋を京子に差し出す。
京子は紙袋を受け取り、中身を取り出した。
液体の入ったビンと缶が1つずつ出てきた。
「あの、これは?」
「熱を下げる薬と、打ち身に良く効く塗り薬。」
「打ち身…ですか?」首を傾げる京子
「ソラの左腕……もう少し強く衝撃を受けていたら、骨にヒビが入っていたかもしれなかったんだ。それくらい、酷い打ち身さ。
昨日はそこまでじゃなかっただろうけど……怪我が悪化したなら、恐らく、今包帯を外したら、かなり酷い痣になってるはずだよ。」
それを聞いて驚くツナと京子
「やっぱり雲雀もそう思うか。」
「赤ん坊は気付いていたんだね。」
「まあな。」
「リボーン!どういう事だよっ!!」
「今、雲雀が言ったじゃねぇか。ソラの怪我の治りが遅いのは、普通の打ち身より酷いからだって。」
「そ、そんな……」
「ソラちゃんの怪我、そんなに酷かったのっ…!?」
「でも、その薬…もしかしたら、ソラは飲めないかもしれない。」
「えっ?」
「苦いんだよ、この僕でも苦いと思うくらい……でも、効き目は凄く良いんだ。もし、ソラが飲めそうになかったら、
無理に飲ませる必要はないよ。あっ…塗り薬の方は、痣になってる所、全部塗る事。」
「わ、わかりました。」
雲雀は視線を京子からソラへと移した。
ソラは苦しそうな表情をしていた。
ソラの頭をそっとやさしく撫でる雲雀
「雲雀さん?」
「……沢田綱吉、笹川京子」
「「は、はいっ」」
「ソラは……泣いていたよ。」
「「えっ!?」」
「最近、悪い夢を見る回数が増えて、眠れない夜が増えている事。そして、10年前から来た君達に……
この子の事を知らない君達にどう接していいか解らないって……」
そう言いながら、ソラの頭を撫で続ける雲雀
「ソラちゃんが…泣いてたんですか?」雲雀に聞くツナ
「ソラはあまり自分からは泣かない子だからね……だから昨日、ソラを僕の所に来させたんだ。
少しでもソラの心の負担を解消させようと思ってね……」
「そうだったんですか……」
「でも、この僕でも……今のソラを救う事は、出来そうにないみたいだね、あまりにも心が不安定過ぎる……」
「えっ!?」
「なんとかならないんですかっ!?」動揺しながらも、雲雀に聞く京子
「今言ったはずだよ?僕では無理だと。君達2人なら、なんとかなるんじゃない?」
ソラの頭を撫でていた手を離し、ツナと京子に視線を向ける雲雀
「えっ…」
「俺達…ですか?」
「ソラはこの時代の僕達の中では、君達2人に1番心を開いていたからね。」
「やっぱりツナと京子が1番なのか。」
「うん。赤ん坊にも充分、心を開いてるけど……2人には負けるよ。」
「そうか。」
「そういうわけだから……沢田綱吉、笹川京子、ソラを君達に任せるよ。」
「雲雀さん……わかりましたっ!」
「あの、お薬ありがとうございますっ!」
「僕はソラが苦しむ顔や、悲しむ顔が見たくないからね…」
雲雀は優しい眼差しでソラを見る。
(雲雀さん……ソラちゃんの事、とても大切に思ってるんだ…)
雲雀を見てそう思うツナ
(ソラの言ってた通り、雲雀はソラには凄く優しいんだな。)
リボーンも雲雀の意外な一面を知り、少し驚いていた。
「じゃあ僕はそろそろ行くよ。まだやらなきゃいけない事が残ってるから。(今日の事が外に漏れないようにしないとね。)」
そう言って、ソラをもう一度撫でてから、病室を出て行った。
通路に出た雲雀
(悔しいけど、今のソラを救えるのは、ソラの両親である君達2人だ。だから……ソラを頼んだよ。)
心の中でそう言い、その場を立ち去った。
雲雀が病室を立ち去った後……
「雲雀さんから貰った薬……飲ませてあげないと……」
「そうだね。でもその前にご飯を食べさせてからじゃないと。」
「あっ、そうだね。そろそろご飯出来てる頃じゃないかな?」
「じゃあお前ら2人は、とりあえず食べてこい。その間は俺がここに残って看病する。」
「で、でもっ…」
「いいから、行け。飯食ったら、お粥作って持ってこい。」
「…わかったよ、リボーン」
「じゃあ、リボーン君、お願いね?」
「ああ、任せろ。ついでに、ビアンキをここに来させてくれ。ソラの着替えをしてもらう。」
「わかった、ビアンキさんに伝えるね。」
ツナと京子はリボーンに看病を任せ、自分達はご飯を食べに行った。
残ったリボーンはソラを黙って見つめていた。
「ハァ…ハァ…う゛ぁっ……パパ……ママ……リボ、にぃ…」
悪い夢に魘されているからなのかは解らないが、苦しそうな声で、ツナと京子とリボーンを呼ぶソラ
リボーンはソラのその弱弱しく発した声をしっかり聞き取り、ソラの頭を優しく撫で始めた。
「大丈夫だぞ。俺はここにいる……ツナや京子も、すぐ戻ってくる。だから安心しろ、ソラ……」
そのままソラの頭を撫で続けるリボーン
少し時間が経った頃、ビアンキが入ってきた。
「リボーン…」
「ビアンキ、聞かせろ。ソラが最後を見取った奴は……誰だ?」
「っ!……それはっ……」
「言えっ!!」
「……リボーン、あなたよ。」
それを聞いて驚くリボーン
ソラを撫でる手が止まった。
「……本当に、俺なのか?」
「ええ、そうよ。ソラは、リボーンの最後の願いを叶えてあげたの。死ぬ間際まで、ヒットマンであり続けたいっていう、
あなたの望みをね……その結果、ソラが1人でリボーンの最後を見届ける事になってしまったの。」
「……この時代の俺は、なんでそんな事っ……」
「リボーン自身はソラに一言も言っていないはずよ?この子はリボーンの気持ちを察して叶えたんだと思う。」
ビアンキの話を黙って聞くリボーン
「ソラはこの時代のリボーンを慕っていたから……」
「そうなのか……」
「……ソラを着替えさせるわね。」
「そういや、ビアンキ。ソラが人に体を見られたくねぇのって……」
「……背中に消えない傷痕があるのよ。」
言うべきか迷ったが、ビアンキは意を決してリボーンに教えた。
「!!…背中に、傷痕だどっ…!?」
「ええ。」
「シャマルに治してもらわなかったのか?あいつなら、女の体に傷が残らないように出来るはずだろ?」
「ええ、確かに出来るわ。でも…どんなにやっても、ソラのその背中の傷だけは消せなかったの。
ソラの心の傷そのものだって言っていたわ。」
「心の傷、か……」
「ソラの傷が消せなくて、悔しがっていたわ。」
「そうか…あのシャマルでも消せないほど、ソラの心の傷は深いのか。……なぜそんな傷があるのかは……聞かねぇ方がいいんだよな?」
「ええ、ごめんなさい…」
「わかった…」
「リボーン、ツナと京子が戻るまで、私がソラを見てるから、ご飯を食べてきて頂戴。」
「ああ、そうするぞ。」ソラの頭に乗せていた手を離し、ベッドを降りて、病室を出て行った。
リボーンが出て行ったのを確認したビアンキは、ソラを着替えさせ始めた。
服を脱がした後、体中の汗を拭き始めた。
全身が痛いせいでずっと苦痛の表情を浮かべながら、痛みに耐えていた。
左腕の前腕部も包帯を替えるついでに拭こうと、包帯を解くと……
「!?…これはっ…!?」
ソラの前腕部は腫れている上に、青黒く変色していた。それも一箇所じゃなくて、その部分全部が変色していたのだ。
見るのもつらいと思うくらいに……
「酷い痣だわっ……」
ビアンキはその痣に驚いたが、すぐに体を拭く作業に戻った。
前腕部を拭き始めると……
「う゛ぁっ…ぐっ…う゛ぅ……ぐあぁっ……っ……」
前腕部を拭いている時、ソラは他の所を拭く時より、激痛なのか、苦痛の表情を浮かべ、悲鳴を上げていた。
ビアンキはそれを見て、なるべくソラに痛みを与えないように充分気をつけながら、前腕部を拭いていた。
ソラ、ごめんなさい。あなたが左腕が痛くて苦しんでいるのに気付けなくてっ……
私が非力なせいで、ソラに庇わせてしまって……本当なら、私が守らなきゃいけなかったのにっ……
本当にごめんなさい……
ビアンキは体を拭きながら、心の中でソラに謝罪していた。
今回の話は、完全オリジナルです。
電撃蜂の攻撃を全身に受け、その上、高熱を出して苦しむソラ
それを見て、それぞれ心配するみんな
今回の事を切っ掛けに、10年前から来たみんながソラの心を開かせようと決意するお話です。
それでは標的17へお進みください。