アジトへ無事帰還せよ!

京子とヒバード探索があった翌日……昼過ぎ頃…

ーー地下8階ーートレーニングルームーー

「山本と獄寺がああだからと言って、時間を無駄に過ごすつもりはない。」

「は…はい。」

「気合いが足んねーぞ、ツナ」

「そんなこと…」

「どーせ、つまらねぇブレッシャーでも感じてるんだろ、短い間にちゃんと強くなれるのかどうかってな。」

「えっと…」

「大丈夫ですよ!綱吉さん」

「えっ…」

「強くなりたいと思えば強くなれます。逆に強くなれないと思えば強くなれません。要は、綱吉さんの気持ち次第です。」

「ソラちゃん……うん、わかったよ!」ソラの言葉でリラックス出来たツナ

「くだらん事考えてないで、さっさと始めろ!」

「は…はいっ!」
そう返事して、修行を開始するツナ

「それじゃあ、ラル姉、リボ兄…パパの事お願いね?私はやらないといけない事がまだ残ってるから、今日は任せるよ。」

「昨日の報告か?」リボーンは気になってソラに聞く。

「うん、そうだよ。昨日の夜と今日の午前中を使って、タケ兄が残してた書類を終わらせてて、報告書を作成出来なかったからね。」

「どう報告するつもりなんだ?笹川の妹の件も……やはり、報告するのか?」

「それはしない。ヒバード探索の方だけでなんとか上手く上層部に報告するよ。」

「なぜヒバードの方だけなんだ?京子の方も伝えないと、いろいろと問題になるんじゃねぇのか?」

「そんな事すれば、このアジトの維持が出来なくなるかもしれないよ。それどころか、パパ達を危険に晒す可能性が高い。」

「…なぜだ?」

「パパが死んでから、ボンゴレの上層部内で、ボンゴレにとって良くない邪心を少しだけ持っている人が何人か居るのに気付いたんだ。
あっ、超直感でね。それで、その事をタケ兄と隼人兄に相談して決めた結果、上層部はとりあえずこのままにしておいて、
なるべく報告書に書く時は、こっちが不利にならないように、誤魔化してるんだよ。そうしないと、その良くない連中が
何か不利になるような材料で釣って、このアジトの権利を奪おうとしたり、ボンゴレ内部で何か良くない事を起こしかねないからさ。」

「……大変そうだな。ツナは気付かなかったのか?」

「それは仕方ないと思うよ?実際、私もパパが死ぬまで全然気付かなかったんだもん。」

「つまり、沢田が死んでから、本性を現し始めた…っというわけか。」

「そう。でね、いつになるか解らないけど、もしミルフィオーレとの戦いに終止符が打てたら、その連中を摘発したいから、
門外顧問組織CEDEF(チェデフ)の力を借りたいんだけど、その時はお願いしてもいい?」

「ああ、構わんっ、喜んで力になろう。そんな連中、今すぐにでも追い出したいくらいだぞ。」

「いや、追い出さずに降格ってダメ?」

「…完全に断ち切る方が良くねぇか?」

「確かにそうだけど…それって、解雇するって事でしょ?」

「まあ、そうなるな。」

「あんまり、それしたくないんだ。パパもたぶんそう言うだろうし…」
そう言いながら、ツナの方に視線を向けたソラ

「…確かに沢田もそう言いそうだな。だが、それでいいのか?」

視線をリボーンとラルに戻したソラ

「確かに少し邪心を持ってるけど、実力は本物だから。有力な人材はそのまま確保して置きたいし、
超直感もそこまで危険視してないしね。だから大丈夫だよ!ラル姉!リボ兄!」
笑顔でそう言うソラ

「そうか…沢田の方は任せろ!」

「ああ、ねっちょり鍛えるぞ。」

「いや、ねっちょりはやめてあげてよ、リボ兄……じゃあよろしくね。」
そう言ってトレーニングルームを出て、エレベーターで地下14階に行く。


ーー地下14階ーーソラの私室ーー

部屋に戻ったソラは、昨日の騒動についての報告書を作成していた。すべてをなかった事にはさすがに出来ないので、
京子がアジトを抜け出した事に関する報告はぜず、ヒバート探索の事についてだけでどう上層部を誤魔化すかを
必死に考えながら書いていた。一瞬の油断が、ツナ達を危険に晒してしまうので、決して気を緩めるわけにはいかないのだ。

「出来た!…これならとりあえずは大丈夫!!ジャンニーニさんにこの報告書を送ってもらおう。」
完成した報告書を見て、満足そうな顔をするソラ

「ん?」
その時ソラの超直感が何かを伝えていた。

「……嫌な予感がしてきた。昨日修理中になってたDハッチ…あそこにいけば何か解る。」

ソラは部屋を出て、超直感の告げた通り、Dハッチへ向かった。
向かう途中、ジャンニーニの所に寄って、報告書を渡していった。


ーーDハッチーー

Dハッチの前に京子とビアンキがいた。

「まったく、何考えているのよ。」

「すみません。」

「2人とも、こんなところで何してるんですか?」

「ソラちゃん!?」
「ソラ!?」
ソラが来た事に驚く2人

「……何があったのか、言いなさい!ビアンキ姉!」
2人の様子がおかしい事に気付いたソラはビアンキに状況説明を求める。

「……実は…」ソラにそう言われ、話し出すビアンキ

イーピンが風邪で高熱を出した事。
このDハッチをまだ修理している時、京子がジャンニーニを騙して、その場から引き離した事。
その隙に風邪で高熱を出したイーピンを連れたハルが出て行って、病院へ向かった事。

「…っというわけなのよ。」

「一足遅かったかっ……」
頭に右手を添えながら言うソラ

「ごめんなさい、ソラちゃん…」

「それで私がハルを連れ戻しに行こうとしたのよ。」

「……その病院ってここからだと、そんなに離れてないはずだよね?」

「ええ。」

「となると……(い、嫌な予感がしてきた…)」

「…ハルが今良くない立場にいるのね?」

「いや、まだなってないと思う。でも、これからそうなる予感はする。」

「なら、急いで行かないとね。」

「待って、私も行く。」

「……わかったわ。」

「ビアンキさん!?」

「京子さん、とりあえず綱吉さん達には黙ってて下さい、修行の邪魔になりますから。」

「それに、私とソラが居れば充分よ。」
そう言ってDハッチのロックを開けるビアンキ

「でも……」

「大丈夫、すぐに連れて帰るわ。」

「行こう、ビアンキ姉」そう言いながら、フードを被るソラ

「ええ。」

2人はDハッチから地上に向けて走って行った。


ーー並盛町ーーどこかの茂みの中ーー

黒ずくめの連中3人が話をしていた。

「いたか?」
「遠くには行ってないはずだ、探せ!」
その中の1人がそう言い、再びバラバラに捜索に向かった。
黒ずくめの3人は誰かを探しているようだった。

茂みの中でそれを聞いたソラとビアンキ

(…この様子だと、ハル姉、見つかっちゃったみたいだね。とりあえず、リングはレーダーに捕らわれる危険が大きい。
なんとか使わずにハル姉とイー姉を連れ戻さないと…)
そう心の中で思いながら、ビアンキに視線を送る。

ビアンキはソラの視線に気付き、頷く。

2人は気付かれないように移動し始めた。


ーー街の中ーー

「ビアンキ姉、あれっ」ソラが指差した。

その指した先にには、ミルフィオーレブラックスペルの制服を着た人が1人と、黒ずくめの連中4人に囲まれてるハルとイーピンだった。

「…ビアンキ姉」

「わかっているわ。」そう言いながら、ポイズン化したケーキを手に持つビアンキ

「行くよっ!!」
ソラの合図で走り出す2人

まずビアンキが背を向けた黒ずくめ2人にポイズンクッキングを喰らわす。
そのあとまたすぐにポイズン化したケーキを出して、残りの3人に向けて投げつける。
そして、ソラがハルの左手を取って、その場から脱出する事に成功した。


ーーどこかの細い通路ーー

「ハァ…ハァ…すいません、ビアンキさん!ソラちゃん!」
乱れた息を整えながら言うハル

「帰ったらお説教よっ!」
周囲を見回しながらそう言うビアンキ

「はい…」

ソラは黙ったまま周囲を警戒していた。

「まぁ、無事で良かったわ。」ハル達の無事にほっとするビアンキ

その時、何かの羽音がした。
ソラ達はその音に気付き、上を見上げる。
そこには緑色の雷の炎を纏った蜂が一匹居た。

「は、蜂が…」

「ビアンキ姉っ!」

ソラの呼び掛けでビアンキはポイズン化したケーキを上空に居る蜂に向けて投げつけた。
「今の内よ!」

ソラ達はその場から走って逃れた。


「上手く撒いたみたいね。」

「イーピンちゃん、大丈夫ですか?」

「大丈夫!」

「あとはアジトに上手く戻れればいいんですが…」

その時、また羽音がした。
その音がした方を向くと、そこに蜂がいた。

「な…そんなっ」ポイズンクッキングにやられていない蜂を見て驚くビアンキ

「逃げますよっ!ビアンキ姉っ、ハルさんっ」
ソラのその掛け声でまた走り出した3人


ーー並盛公園ーー茂みの中ーー

「もう大丈夫でしょうか?」

「なんとか撒いたけれど、どうせまたすぐに戻ってくるわ。」

「な、なんなんですか!?あの蜂!?」

「あれは自動追尾型のユニットで、私達の何かを目印に追いかけてきてるんですよ。」
ハルの質問に答えるソラ

「目印って?」

「姿を記憶している……っというわけではなさそうね。どんなに離れていても、すぐに追いついてくる。姫はどう思う?」

「私も姿を記憶しているなんてのはありえないと思う。でも、だとしたら、どうやって私達を見つけているかだけど……
(あの蜂は確か…“電撃蜂(エレットゥリコ・ホーネット)“っていう名前だったはず……)」
ソラもビアンキと一緒になって考え出した。

「はひっ!?来ましたー!!」

その声に反応して、ハルの方を見る2人

「ハルさん、落ち着いて下さい。」

「ただのハエよ。」

「ハエって…さっきゴミの中に入ってたから…」
そう言って、自分の体の匂いを嗅ぐハル

「ぐぇっ…なんか臭いですー。」

(何やってるの、ハル姉…臭いに決まってるじゃん。)
ハルの様子を見て呆れるソラ

(ん?匂い?確か蜂にも嗅覚あったよね?ってことは…何かの匂いを追ってきてる?でもそれなら、ゴミの中に居る、
私達を見つけるのは不可能なはず……)
ソラは匂いを追ってきているのかと思ったが、すぐにそれを否定していた。

「姫、息止めて。」

ソラはビアンキのその言葉に反応し、とっさに右手で素早くビアンキの手にある香水を奪い取る。

「…何するのよ、いきなり…」

「何するのよ、じゃないっ!これ、ポイズンでしょ?」

「ええ、そうよ。」

「そんな物を私に使わないで。」

「でも敵はもしかしたら、匂いを追って「それはない。」…どうしてよ?」

「さっき私達、ゴミの中に居たでしょ?あのゴミだらけの中なら、匂いを上手く嗅ぎわけれないはず。ゴミ箱の中に隠れてたし……
犬ならともかく、あの蜂は犬並の嗅覚を持ってないはずだよ。」

「……言われてみればそうね。」

「でしょ?」

「はひっ!?ソラちゃん、凄いですっ!ハル、全然気付けませんでしたっ!」

再び電撃蜂の羽音が聞こえてきた。

「しまったっ!逃げるわよっ!!」
ビアンキがそう言い、また走って逃げだしたソラ達。


ーーボンゴレアジトーー地下7階通路ーー

ソラ達が敵から逃げ回っている中、ツナ達は……

「まだまだ集中が足りんっ!」

「すみません……」

「ソラがせっかく言ってくれた言葉が生かされてねぇぞ、ダメツナ」

「うっ…」痛いところを突かれたツナ

「京子のケチ、ケチ、ケチー!!ランボさん、つまんないんだもんねー!!」

「ランボ君、お願いだからっ…」

京子とランボの声が大食堂の方から聞こえたので、ツナ達はそこに行く。

「どうしたの?京子ちゃん」
そう言いながら、京子とランボに近づく。

「あっ…ツナ君!」

「ツナー、京子が遊んでくんない!」

「イーピンと遊んでればいいだろっ」
ランボに向かってそう言うツナ

「いないもん!」

「えっ?いないって…」そう言いながら、京子の方を見るツナ

「何があった?」

「京子ちゃん?」

「……帰ってこないの」

「えっ……」

「まさかっ、外に出たのか!?」

「イーピンちゃんが病気になって、ハルちゃんがお医者さんにっ…」



ーー並盛町ーー橋の下の川ーー

ソラ達は川の中に入っていた。

「つ、冷たいです!」

「我慢しなさい。相手がもし私達の体温で探ってきているのなら、これで……」

「ハックシュン!」イーピンがくしゃみをした。

「ごめんないさい、イーピンちゃん。風邪が治ったばかりなのに…」

「大丈夫、平気。」

「姫は大丈夫?」イーピンの様子を見たビアンキは自分が今抱いているソラに聞いた。

「…大丈夫。それよりごめんね?足が届かないせいで抱っこしてもらっちゃって…」

「まだ子供なんだから、届かなくて当たり前よ…だから気にしないで。」

「ありがとう。……あのさ、ビアンキ姉」

「何かしら?」

「敵は体温で追っていないと思う。」

「どうしてかしら?」

「だってこの街の中には、まだ人がたくさん居るよ?みんな、だいたい同じくらいの体温を持っているんだから、
見つけにくいと思うんだけど?」

「……盲点だったわ。」

「ビアンキ姉…」呆れた顔でビアンキを見るソラ

「あの、こうしてるより、急いでアジトに戻った方が良くないですか?」

「それはダメです。あの蜂に追われたまま、私達が逃げ込めば、敵にアジトの位置を教える事になってしまいます。」
ハルの提案を却下するソラ

「あっ…」ソラの説明に納得するハル

「案外、敵の狙いはそこかもしれない。」
ビアンキはソラの言葉を聞いてそう思った。

電撃蜂の羽音に気がつくソラ達


ーーボンゴレアジトーー地下5階ーー作戦室ーー

「一度ならず、二度までもっ…いったい何を考えているんだ!?」
そう言って怒鳴るラル

「ごめんなさい。」

「申し訳ございません。私がもっと早くにハッチの修理を終わらせていれば…」

「いいえ、私がジャンニーニさんを騙してっ…」

「京子ちゃん…」

「わかってたのに…どんな事をしても、止めなきゃいけなかったのにっ!」

「だ、大丈夫!俺がきっと連れ戻してくるから。」
そう言って、泣いている京子を励ますツナ

「簡単に言うが、事態は深刻だ。まったくっ…ソラの負担を次から次へと増やしてっ…」
ここには居ないソラの事を思いながら、怒りを露わにするラル

「えっ……それってどういう…事ですか?」
“ソラの負担”と聞いて、ラルに聞き返したツナ

ラルは黙っている。

「リボーン!お前、何か知ってるんだろ!?教えてくれよっ!!」
ラルが答えなかったので、リボーンに聞いてみるツナ

「……俺の口からは言えねぇ…」

「なんでだよ!?」

「ソラがツナ達には言うなって言ったからだぞ。」

「ソラちゃんが?どうして…」

「ツナ兄達がこの事を知ったら、きっと気にして、何も出来ない自分を責めるからって…」

「そんなっ……いったいなんなんだよ!?」

「あのっ…私も知りたいです!お願いです、教えて下さいっ!」
そう言って頭を下げる京子

「俺からも頼むっ!!」京子と同じように頭を下げるツナ

「……いいだろう、教えてやる。」
黙っていたラルがそう言う。

「ラル、ソラに怒られるぞ?」

「構わんっ、このまま黙っていたら、ソラの負担が増え続けるだけだ。」
そう言って、ツナと京子の方へ振り向くラル

「確かにそうだな……わかった、俺も話すぞ。」
「……リボーンがそう言うなら、僕も。」
「私もです。」
リボーン、フゥ太、ジャンニーニもツナ達に話す事を決めた。


「いいか、今から言う事をよく聞き、これからの行動に責任を持てっ!」

頷くツナと京子

「沢田には昨日言ったな?ソラがこのアジトの最高責任者だと…」

「あっ…はいっ、聞きました!」

「アジトの…最高責任者?」

「そうだ。ソラはこのアジトを維持するために、尽力してる。昨日起きた騒動もそうだが、ソラは上の者に報告書を作成しなければならなかった。
騒ぎが大きければ大きいほど、情報が知れ渡るため、どうしても報告書を提出しなければならない。」

「昨日は、京子を連れ戻す事、ヒバード探索及び調査の2つがあった。だが、ソラは京子の件は報告せず、
ヒバードの件だけで上手く誤魔化して報告する事にしたんだぞ。」

「どうしてですか?」

「詳しい事はさすがに言えない。だが、このアジトと沢田達を守るためだ。」

「「えっ!?」」

「このアジトを維持していなければ、俺達が身を寄せる場所がなくなるだろ?」

「はい、確かに…」ラルの言葉に頷くツナ

「そして、お前達を守るためっていうのは、上の連中から守るという事だぞ。」

「上の連中に、もし悪い方向に情報が流れれば、ツナ兄達を危険に晒してしまう可能性が高いんだよ。」
リボーンの言葉に補足するフゥ太

「そうだったんだ……俺達が今ここに居られるのは、ソラちゃんが陰で支えてくれていたから…だったんだ…」
衝撃の事実を知って、ショックを受けるツナと京子

「お前達のその顔が見たくないから、ソラは俺達に口止めしたんだぞ。過去から来た俺達には過酷な現実だったからな。」

「こんな過酷な状況の中を生き延びなきゃいけないんだから、これ以上不安にさせるような事はしないようにって、
ソラがツナ兄達の事を思って、僕達に口止めしていたんだ。」

「同時に、このアジトの中でだけでも、10年前から来たお前達が安心して過ごせるようにいろいろ尽力してくれてるんだ。」

「私もソラさんに外からの侵入を絶対許さないように気をつけるよう、言われました。」

リボーン、フゥ太、ラル、ジャンニーニの順にツナと京子に言う。

(ソラちゃんがそんな事をしていたなんてっ…俺、全然気付かなかった!)
悔しそうにするツナ

(私達の身勝手な行動で、ソラちゃんに負担を掛けていたなんてっ……ごめんなさい、ソラちゃん…)
心の中でソラに謝る京子

(ソラは誰よりも、ツナと京子……両親である、お前らのその顔が1番見たくなかったから、言わなかったんだぞ?)
ツナと京子を見ながら、心の中で言うリボーン

「これでわかっただろ、これからは自分達の行動に責任を持てっ!……さて、本題に戻るぞ。」
そう言い、モニターに視線を向けるラル

「病院はここだが…」そう言いながら、病院を指す。

「ああ、帰ってねぇんだ、敵に追われてると見て間違いねーな。」

「問題はどこに逃げたか…だね。」

「探すしかないよ!」

「ツナ兄…」

「こうしてる間も、ソラちゃん達が危険なら、急がなきゃ!」

「作戦もなく動けば、敵の思うツボだ。」

「でも…」

「ソラやビアンキも一緒なんだ。作戦を考える時間ぐれーは作ってくれるぞ。」

「えっ…」

「ハルだけならとっくに帰って来てただろう、敵をぞろぞろ案内してな。そうでない所を見ると、ソラとビアンキがリードしてんだろ。
作戦を考える上で、それが鍵だな。」


ーー並盛町ーー橋の下の川ーー

先程やって来た電撃蜂を上手く撒いたソラ達。
ビアンキとハルがポイズン化したケーキを川の中に次々と置いていた。
ビアンキの考えた作戦を実行するために……

ソラとイーピンは橋の下で待っていた。

ソラはフード越しに苦痛の表情を浮かべながら、左腕を右手で押さえていた。
それに気付いたイーピンはソラに声を掛ける。

「ソラさん、大丈夫?」
心配そうな顔しながら、ソラに問いかける。

「っ……大丈夫だよ、イーピンちゃん」

「でもっ…」

「イーピンちゃんの方こそ、大丈夫?寒くない?」

「イーピン、平気!」

「そっか。」左腕を押さえていた右手をイーピンの頭の上に動かして、撫でる。

「ソラさん……」

(っとはいえ、水の中に入ったせいか、痛みが増してる。早くアジトに戻らないとっ…)

その時、電撃蜂の羽音が聞こえてきた。

「来ましたっ!」
「下がってっ、急いで!」
ハルとビアンキが橋の下に戻ってくる。

「こっち!」
イーピンが2人に声を掛ける。

「さぁ、いらっしゃい。爆弾を使うのは隼人だけじゃないわよ!!」
そう言い、指をパチンッと鳴らすビアンキ

指を鳴らした瞬間、さっき川の中に置いたケーキが次々と爆発し、電撃蜂を誘導した。

「かかったわね!そっちに逃げると思っていたわ!!」

ある一ヶ所に誘導された蜂はそこで爆発したケーキに巻き込まれた。

「終わりよ!!」

「ビアンキ姉っ!まだ終わってない!!上を見てっ!」

ソラにそう言われ、上を見るビアンキ
そこにはケーキの爆発に巻き込まれずに無傷の電撃蜂が居た。

「ビアンキさん…」

「せめて、操っている奴を倒せればいいのだけれど……そう簡単に姿を見せてくれるとは思えない……参ったわね。」

「ハル達、帰れないんですか?」

「しつこい虫は嫌いです!どっか行っちゃいなさい!このっ、このっ、このっ……おかげでどんどんお家が遠くなるじゃないですかー!!
ハルは早くお家に帰りたいんですー!!」」
川の中にある枝を掴んで、それを蜂に向けて振るいながら言うハル。

(このままじゃ、アジトに戻れないっ……こうなったら、敵をこちらに誘き寄せるしかないっ…)
ソラはこのままではいつまで経ってもアジトには戻れないと判断し、ある作戦を実行する事にした。


ーー夕方ーーどこか廃墟の建物の前ーー

「ご苦労だったな。」

(かかったみたいだね。)電撃蜂を操っていた、ミルフィオーレ隊員が現れたのを見て、そう心の中で言うソラ

「ここがアジトの入口か?案内してくれてありがとよっ」

(思った通り、敵の狙いはこれだったんだね…)

「おかげで俺は大手柄だ。礼はさせてもらわねぇとな…」
そう言いながら、指をパチンッと鳴らして、電撃蜂をソラ達に近づける。

ハルは後ろに下がった。

「その前に教えて頂戴。どうして私達を追えたの?」

「冥土の土産ってやつか、いいだろう。その女の肩にターゲットハニーがついてるからだ。」
そう言いながら、ハルを指差す。

「はひっ」自分を指すハル

「ターゲットハニー?」

「簡単に言えば、ハチミツだ。」

ハルは自分の体の匂いを嗅ぐ。

「匂いなんかするかよ。」

「はい?」

「ハチミツと言っても、無色の種類……この“電撃蜂(エレットゥリコ・ホーネット)”にしか解らない発信機みたいなものだ。
そいつをちょいとな…」

「!…ハルさん、あの人に肩を触られませんでしたか!?」
その言葉でピンとくるソラ

「あっ…あの時にっ…」
ハルはソラとビアンキと合流する直前に肩に触れられた事を思い出す。

「そういうこと。」

「なるほど。じゃあその服を捨てれば良かったわね。」

「今さら遅いぜ。」

「いいえ。手品のタネを教えてくれてありがとう。」
そう言いながら、ポイズン化したケーキを取り出すビアンキ

「何の真似だ?」

「ここはただの廃墟で、私達のアジトの入口ではありません。姿を隠しているあなたが現れるように、ここに誘導させてもらいました。」

「ハル達のお家の玄関はもっとシークレットでかっこいいんですよ〜だ!べ〜っ」
そう言って舌を出すハル

「何っ!?」

「こうでもしないと、操ってる人に会えそうになかったので。」

「本体を倒せば、その蜂だってお終いでしょ?」

「騙したってのかっ…」

「残念だったわね。」

「だったら、お前らに聞くまでだ!泣き喚くまで、いたぶってやるっ!!」

「最後の晩歳を味わいなさい!!」
ポイズンクッキングを投げる構えを取る。

「そんな物で俺の“電撃蜂(エレットゥリコ・ホーネット)”が倒せるかよっ」

(おかしい…この余裕さはいったい……まだ、何かある?)
ソラの超直感が何かを感じとった。

「言ったでしょ!私の狙いは本体だけよ!!」

「ああん、そうかい。」
新たな匣を取り出して、雷系リングに炎を灯し、開匣する。
すると、蜂の巣が匣から出現し、大量の電撃蜂が現れた。

(蜂の巣から電撃蜂が次々とっ……)

「これが“電撃蜂(エレットゥリコ・ホーネット)”の真の姿だ!俺を甘く見てたみたなっ、やれ!」
指示を受けた電撃蜂がビアンキに襲いかかる。

ビアンキは大量の電撃蜂に向かって、ポイズンクッキングを投げつけた。

「くっ……多過ぎる!!」

「あ゛あっ…っ!?」
襲いかかってきた電撃蜂からの攻撃で体中に電撃を受けるビアンキ

「ビアンキ姉!」

「ビアンキさん!」

「こっちに来ちゃダメよ!」
こっちに来ようとしたハルを呼び止める。

(このままじゃ、ビアンキ姉がやられるっ!……リングを使うしかないっ)
ソラはこのままビアンキがやられると判断し、右手の中指にある晴系リングからマモンチェーンを解いた。
そしてすぐに、右太股にあるガンホルダーから銃を取り出す。
いつもは左太股に装着しているが、今は左腕を負傷しているため、ガンホルダーを右太股に装着しているのだ。
そしてビアンキの傍に行く。

「姫?」
ソラが傍に来たのに気付いて、声を掛けるビアンキ

「匣を使って。ポイズンクッキングじゃ勝てない。」
ビアンキにそう言った後、ソラは駆け出し、リングに炎を灯して、電撃蜂を次々と狙い撃ちし始めた。

「なっ…!?バカな!?俺の“電撃蜂(エレットゥリコ・ホーネット)”がたった一発で次々とっ……」
ソラが次々と電撃蜂を撃ち落としているのを見て驚く。

ビアンキもソラに言われた通り、嵐系リングからマモンチェーンを解き、匣に炎を灯したリングを差し込み、開匣した。
匣からは嵐の炎が射出し、ビアンキはそれを周囲の電撃蜂に向かって放った。

「そんな攻撃が効くか!!フォーメーションD!!」
ビアンキの攻撃を見て、電撃蜂に指示を出す。

電撃蜂達は、次々とビアンキの周りを囲み始めた。
それに気付いたソラは電撃蜂を撃ち落とすのをやめて、ビアンキの方へ全速力で駆け寄った。

大量の電撃蜂に囲まれたビアンキに電撃が放たれようとした瞬間っ…

「ビアンキ姉!危ないっ!!」
ソラがビアンキをその場から突き飛ばした。
そして代わりにソラが電撃を喰らった。

「う゛あ゛ぁぁぁっ…あ、あ゛あぁぁっ…!!」悲鳴をあげるソラ

「姫っ!!」突き飛ばされたビアンキはソラの悲鳴を聞き、呼びかけた

電撃が止み終わり、ソラは右手に握っていた銃を落とし、そのまま倒れた。

「仲間を庇うとはな……だが、これで形成逆転出来んだから好都合だぜっ!そのままトドメだ!
脳みそまで痺れるひとさしを味わいなっ!」
そう言って、電撃蜂でソラにトドメを刺そうとした。

「待て!」

その声に驚いて、上を見上げるミルフィオーレ隊員

見上げた先に居たのは、建物の上で立っている超モードのツナだった。

「貴様はっ…」

「ツナさん!!」

「どうしてここが……」

(パパ…?)
ソラは体中の痛みを感じながら、聞こえてきた声に反応する。

「リボーンが……ソラとビアンキなら、アジトから1番遠く離れたこの辺りを選ぶだろうと……」

(そっか……さすが、リボ兄…)
ツナがここに現れた理由が解ったソラ

ツナは倒れているソラを見つけた。
(ソラ……こんなになるまでっ……遅くなってすまない。)
ツナはソラの状態を見て、心を痛めた。

「一瞬でカタをつける…(ソラを傷つけたお前を…許しはしないっ!!)」
ツナは右手に嵌めている大空のボンゴレリングから、マモンチェーンを解いた。

「ふふっ…随分とデカイ獲物が飛び込んできやがったなっ、俺はついてるぜっ!“電撃蜂(エレットゥリコ・ホーネット)”」
電撃蜂をツナに向けて放つ。

攻撃がツナに命中したかに思えたが、零地点突破・初代エディションで電撃蜂をすべて凍らせた。

「な、何っ!?」

その後、ツナはミルフィオーレ隊員に向かって、Xグローブに炎を灯したパンチを放って、倒した。

ソラは敵が倒された事を確信した。

(パパが勝ったんだよね?……これで…だい…じょう…ぶ…)

「ソラちゃんっ!しっかりしてっ……」
ツナの声を聞きながら、そのまま意識を失うソラ


標的16へ進む。


今回のお話は、風邪をひいたイーピンをハルがアジトを抜け出して、病院へ連れて行く所ですね。
アニメではビアンキだけでイーピンを連れたハルを連れ戻し行こうとしてましたが、そこをソラも一緒に行かせました!
ビアンキと一緒になって、敵の電撃蜂がどうやって追いかけて来ているのか、どうやってアジトに帰るかを
考える所を書きたくて書いちゃいました。ビアンキと絡ませてみたかったですし。
それでは標的16へお進みください。

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