ツナと京子の想い

ーーボンゴレ地下7階ーー

ソラは行く前に泣き腫らした顔をしっかり洗ってから、大食堂へ向かっていた。
大食堂の方から、ツナ達の楽しそうな声が聞こえてきた。
ソラは大食堂の中へと入って行った。

「あっ!ソラちゃん!」
ハルがソラに気付いて声を掛ける。

その声で他の皆も入口の方へ視線を向ける。
部屋の中に居たのは……ハル、京子、ランボ、イーピン、ツナ、リボーン、フゥ太、ビアンキの8人だった。

「お帰り、ソラちゃん。雲雀さんの所への用事はもう済んだの?」

「ただいま。はい、済みました。」
そう言い、ツナの隣の席に移動して座るソラ

「ソラ、聞いたわよ?」

「何を?」

「リボーンから、君の怪我の事を、だよ。」

「……えっと…それは……」

「「ソ〜ラ〜?」」詰め寄るビアンキとフゥ太

「う゛っ……ごめんなさい…」しょんぼりするソラ

「まったくっ……ソラ、お願いだから、隠すのはやめて頂戴。」
「そうだよ。」
ビアンキとフゥ太に怒られるソラ

「っというわけでソラ、今日は僕たちの番ね!」

「……何が?」

「昨日、ツナ兄と京子姉に食べさせてもらったんでしょ?」

「…リボ兄、なんでそんな事言ったのさ?」
リボーンを睨みながら言う。

「面白そうだからだぞ。」

「面白いのはリボ兄だけでしょっ!!」そうツッコむソラ

「そうでもねぇぞ。」そう言い、ビアンキの方を指差すリボーン

ソラは指差された方を見た。
ビアンキとフゥ太がニコニコ笑っていた。

「…な、何っ…なんで2人とも嬉しそうなの!?(なんか、嫌な予感がっ…)」
2人の嬉しそうな笑顔を見て、ドン引きするソラ

「だって、ね〜…」

「うん。ソラ、自分でご飯を食べれるようになるのが早かったから、食べさせる機会がめっきり減っちゃって、
今じゃ、全っ然、食べさせれないんだもん。ソラが断るから…」

「う゛っ……」

「はひっ!?そんなに早かったんですか?」

「ええ。ソラは2歳になった頃には、もうほとんど自分で食べるようになってて、食べさせる機会がその頃からめっきり減ったのよ。
みんな落ち込んでたわ。」

「はひっ!?早すぎですっ!」
「えっ!?そんなに早かったの!?」
「本当なんですか?それ…」
「ほぉ……思ったより早いな。」
ハル、ツナ、京子、リボーンが驚く。

「ちょっ、ちょっと2人ともっ!何人の過去バラしてんのっ!?」

「「ええーっ」」不満そうな声を出すビアンキとフゥ太

「なんで不満そうなの!?」

「「ソラに食べさせてあげかったのに、いっつも断るから。」」

「シンクロしない!っていうか、なんでそんなにあげたいのさ!?」

「それは…ソラが可愛いからでしょ。」

「そうよ、母性本能をくすぐるわ…」

「……本音は?」

「「「ただ、食べさせたいだけ。」」即答で同時に答えるビアンキとフゥ太

頭に手を添えながら、頭痛を覚えるソラ

「ソ、ソラちゃん、大丈夫?」ツナはソラが心配になって声を掛ける。

「…なんとか。」

「ソラ、お願い。」
「僕からも。今日だけだからさ…」
眼をキラキラさせながら、お願いポーズを取るビアンキとフゥ太

「う゛ぐっ……(私がお願いに弱い事を知っててやるなんてっ…どんだけ!?)」
ソラはツナと同じで、人に頼まれたら断れない性格だった。
特に親しい人からのお願いには弱く、よほどの事がない限り、断らない。

3人の様子を呆然と見てるツナ達

「……ハァ…わかったよ…」
諦めて、許可を出すソラ

それを聞いて喜ぶビアンキとフゥ太

「えっと……良かったの?」
ソラにだけ聞こえるように話し出すツナ

「……じゃあ綱吉さんは今2人がしたお願いポースで何か頼まれた時、断れるんですか?」
それにソラもツナにだけ聞こえるように答えていた。

ツナはそう言われ、お願いされた時の事を想像してみた。
「……断れない、かも。」

「でしょ?こっちが折れた方が速いです。」

「……昨日も、もしかして嫌だった?」
昨日の事を思い出しながら言うツナ

「……嫌じゃなかったですよ。(パパやママから食べさせてもらうのは好きだったからね……今はそうでもないけど。)」

「ほんとに?」

「この時代の綱吉さんにも、よく食べさせて貰ってましたから。」

「そっか、よかったっ!」

そこでソラの前に箸で摘まんだ鶏の唐揚げが運ばれてきた。
それに気付き、横を見るソラ
そこにはビアンキが居た。

「はい。ソラ、あ〜ん」

(や、やっぱりパパやママからより、食べづらいっ…)

少しした後、ソラは唐揚げを食べた。

「ソラだけズルイんだもんねっ!ハル!京子!おれっちにも食べさせて欲しいんだもんねっ!!」

「ソラちゃんは怪我してるからだぞ?」

「アホ牛、おめぇは自分で食べろ。」

「ランボ、自分で食べる!!ソラさん怪我してる!ランボ怪我してないっ!」

「え〜っ、ランボさんも食べさせて欲しいんだもんね〜っ!!」
椅子のの上でジタバタしだすランボ

「あっ…ランボちゃん、食べさせてあげますから、ジタバタしないで下さい。」

「ほんと?」ピタッと止まるランボ

「はい!ハルが食べさせてあげますよ。」

「やっただもんね!!」そう言いながら、ハルの所に行く。

ハルはランボを自分の膝の上に降ろす。

「イーピンちゃんも。」

「えっ、でも…」

「おいで、イーピンちゃん」

イーピンは喜んで京子の元へ行った。
実はイーピンも羨ましかったのだ。
京子の膝の上に座らせてもらったイーピン

「へへっ!ハル、唐揚げが食べたいんだもんね!」

「イーピンもっ!」

「はいはい、今あげますから、少し大人しくして下さい、ランボちゃん」

「イーピンちゃんも唐揚げだね?ちょっと待ってね。」

ハルはランボを、京子はイーピンのお世話をしていた。

(ランボ兄も、イー姉も、嬉しそう…)
その様子を静かに見守るソラ

その後もソラはビアンキとフゥ太、交互に食べさせられていた。

『ご馳走様でしたっ』
全員食べ終わった。

(お、終わったっ……もう2人からのこのお願いは聞かない!絶対断るっ!!)
そう心に決めるソラだった。

(ソラちゃん、ご飯食べる前より疲れてない?……大丈夫かな?)
ソラの疲れた表情を見てそう思うツナ

ソラは椅子から下りて、出て行こうとした。

「待ちなさい、ソラ」

「…まだ何かあるの?ビアンキ姉」ビクつくソラ

「今から空いている病室へ行って、京子に包帯を替えてもらいなさい。緩んでるわよ。」

ビアンキにそう言われ、包帯を見るソラ
確かに緩んでいた。

「ほんとだ…取り替えてくる。」そう言って早々に去ろうとするソラ

「待ったっ!!」フゥ太がソラのマントの首根っこを掴む。

「ぐぇっ」

「ソラ、今ビアンキ姉が言ったでしょ。京子姉に包帯を替えてもらいなさいって…」

「じ、自分で取り替えるからっ……」
なんとかここを脱出しようとするソラ

「……ツナ、ソラを連れて病室へ連行!」

「えっ!?」

「ツナも怪我してるでしょ?ついでに替えてもらってきなさい。」

「えっ!?」

「早く行け、ツナ。ソラが逃げるだろ。」

「あっ…うん。ごめんっ、ソラちゃん!」
そう言いながら、ソラを怪我してない方の腕で抱き上げるツナ

「うわっ…」突然の浮遊感に驚くソラ

「京子、2人の包帯を替えてあげて頂戴。」

「あっ、はい。イーピンちゃん降ろすね?」
そう言ってイーピンを床に降ろす京子

「綱吉さん、降ろして下さい。」

「えっと…降ろしちゃったら……逃げるんだよね?」困った顔をしながら、ソラに聞くツナ

「……(パパを突き飛ばして、逃げれるわけないじゃないっ!!ビアンキ姉のバカ!)」

「逃げるつもりなら、降ろさないよ。(それにしても、ソラちゃん軽いな…俺でも持ち上げれたよ、しかも片手で。)」
ソラが思ったより軽くて、内心驚くツナ

「ツナ君、ソラちゃん、おまたせ。行こうか?」

「あっ、う、うんっ」京子に急に声を掛けられたせいか、動揺するツナ

2人が揃ってしまったので、逃げるのを諦めたソラ
3人は空いてる病室へ向かった。


ーー地下5階ーー第一医務室C−−

ソラ、ツナ、京子の3人がこの部屋に入った。
ツナはベッドの上にソラを降ろす。

「ソラちゃん、逃げなかったね?」

「……怪我してる綱吉さんを突き飛ばしてまで、逃げる気はないですよ。」

「あっ、そう…(今、さらっと凄い事言われたような気が…)」

「じゃあ、まずはソラちゃんからだね。」
ベッドの横の椅子に座って言う京子

ソラは黙ったまま、左腕を差し出す。
京子は差し出された左腕の前腕部の包帯を丁寧に解いていた。
それを黙って京子の隣で見守るツナ

「ねぇ、ソラちゃん」

「何ですか?」

「これ、自分で巻いたの?」

「そうですけど。」

「どうかしたの?京子ちゃん」

「自分で巻いたにしては、しっかり巻かれているから、びっくりしただけだよ。」

「…言われてみれば、そうかも…」

そこで包帯が全部解け、ガーゼを外した。

「昨日より良くなってるね。」
傷口がほとんど消えていて、痣が少し出来ているだけだった。

「痛くない?」
そう言いながら、消毒する京子

「痛くないですよ。元々、傷の方はそんなに酷くありませんでしたし。」

「そう。」消毒が終わり、ガーゼを載せ、包帯を巻き始めた。

「っ…」痛みに顔をしかめるソラ

「だ、大丈夫!?」
「ごめん、痛かった!?」
それに気付くツナと京子

「いえ、大丈夫ですから、そのまま続けて下さい。」

「ソラちゃん…(とっても痛いはずなのに…)」
ツナは痛みに耐えるソラを心配そうに見つめていた。

(痣は少ししかなってないみたいだけど……痛みは酷いみたいだね…)
京子はそのまま包帯を巻き続けていた。

(結構痛いっ……昨日とほとんど変わらない……)
苦痛の表情を浮かべながらも、黙ってそのまま痛みに耐えていた。

(花の言った通りだ。ソラちゃん、凄く痛いのに我慢してる……)
京子は包帯を巻きながら、チラッとソラの様子を見て、心配そうにしていた。


「はい、出来たよ。」
包帯を巻き終えた京子

「ありがとうございます、京子さん」
そう言って、ソラはベッドから降りた。

「それじゃ、私行きますね。まだやらなくちゃいけない事がたくさん残っているので。」

「えっ、ちょっとっ…!?」
「ソ、ソラちゃん!?」
ツナと京子の呼び止める声を無視して、病室を出ていくソラ

通路に出たソラは……

(……やっぱり、今のパパとママにどう接していいか、わからないよ……)
悲しそうな表情でそう心の中で言う。

そのあと、ソラはフゥ太の所へ向かった。


医務室に残されたツナと京子は呆然と立ち尽くしたまま、入口の方を見ていた。

「…ソラちゃん、痛そうにしてたね…」

「うん。花が言ってた。ソラちゃんは、体調が悪くても、つらくても、絶対に我慢して耐えちゃう子だって。」

「黒川が?」

「うん。…と、とりあえず、次はツナ君の包帯を替えるね。」

「あっ、うん」ツナはベッドに座り、半袖のシャツを脱いだ。

ツナが包帯を巻かれているのは左肩の部分だった。
京子はツナの包帯を解いた。

「…ほとんど治ってるね。」

「ほんと?」

「うん。少なくとも、怪我したばかりのを見た時よりは……凄く良くなってるよ。」
その時の事を思い出したのか、少し真っ青な表情になる京子

「あっ、ごめんっ!思い出させちゃってっ……」

「ううん、気にしないで。これってソラちゃんが応急手当してくれたおかげなんだよね…?」

「う、うん……どうして自分の怪我を治さなかったのかな?って今も思ってる。この時代の俺、ソラちゃんと仲が良かったのかな?」

「ソラちゃん、この時代のツナ君と私と仲が良かったみたいだよ。」
そう言いながら、新しい包帯を巻く京子

「えっ!?そうなの!?」

「あっ、動かないでっ!」

「ご、ごめんっ!(今考えると、今ここには俺と京子ちゃんしかいないんだよな……)」
2人しかいない事を思い出して、急にドキドキしだすツナ

「花がね、言ってたの。よく私やツナ君に面倒見て貰ってたんだって。」

(そういえば、この時代の京子ちゃん、ソラちゃんの事を知ってた……)

この時代の京子と話した時の事を思い出していた。
自分の事を「ツッ君」と呼んでいた事。
10年バズーカの事を10年後の俺から聞いて知っていた事。
ソラを凄く心配そうに見ていた事。

『…ツっ君っ!お願いっ!ソラを助けてっ!』
ツナの頭の中でこの言葉がまたフラッシュバックする。

「ツナ君?どうかした?」

「あっ…うん。あのさ、京子ちゃん」

「何?」

「俺、この時代の京子ちゃんと少しだけ、話をしたんだ。その時、ソラちゃんの事をとても心配そうに見つめてた。
入れ替わる直前には、俺にソラちゃんを助けて欲しいと頼んでた…その先に何を言おうとしてたかは、入れ替わってしまったから
解らないけど…少なくとも、京子ちゃんとソラちゃんは凄く仲が良かったんだと思うよ?」

「そうなんだ。この時代の私が…」
包帯を巻き終えた京子

「ソラちゃん、俺達に遠慮してるのかな…?」

「これも花が言ってたんだけど、ここにいる私やツナ君はソラちゃんの事、知らないでしょ?だから、どう接していいか解らなくて、
戸惑ってるだけだって言ってた。」

「そっか。そういえば俺達、ソラちゃんの事、何も知らないもんね。」

「うん。私は、ソラちゃんともっと仲良くなりたいんだけど……」

「それは俺も同じだよ。この時代に来てから、ソラちゃんには助けられっぱなしだし。俺で力になれる事があれば助けてあげたい。
でもソラちゃんは俺達を頼ろうとしない。」

「ソラちゃんって、ランボ君やイーピンちゃんとそんなに歳離れてないよね?」

「あれ?知らないの?ソラちゃんは6歳だよ。」

「えっ!?」

「……やっぱり京子ちゃんも、もう少し年上だと思ってた?」

「う、うん。背が小さいだけで、フゥ太君と同じ9歳くらいかと……」

「俺も。」

「そっか〜…ソラちゃん、まだ6歳だったんだ。」

「あの年齢であそこまでしっかりしてる子、俺見た事ないよ。」

「私も見た事ないよ。でも、それでもソラちゃんと仲良くなりたいっ!」

「うん、そうだね。京子ちゃん、ソラちゃんと仲良くなろうっ!」

「うんっ!」満面の笑顔でそう言う京子

その笑顔を見たツナは顔をまた真っ赤にした。

(あれ?京子ちゃんのこの笑顔……なんかソラちゃんと似てるような……?)

実際その通りなのだが、この時のツナはそれ以上の事は何も思い浮かばなかった。


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今回のお話はオリジナルです!
ツナと京子が今、ソラの事をどう思っているかを書いてみました!
この話を書くの、少し時間掛かりました。
ソラがツナと京子と打ち解けるのはもう少し先ですが……
書いている自分が言うのもなんですが、待ち遠しいですね。
ツナ京大好きなので、余計に。
それでは標的15へお進みください。

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