リングの使い方

ーー地下7階ーーラル・ミルチの部屋の前ーー

ラルが部屋から出てくると、ツナと獄寺が土下座していた。
「…何の真似だ。」

「俺達、もっと強くならなくちゃいけなくて、でも、あの…リングの使い方とか解らなくて…えっとっ」

「…リボーンの差し金だな?」

「ピンポーン。」そう言いながら、ツナの頭の上に乗っかった。

(…リボ兄、いつも思うけど、普通に登場しようよ…)ソラは心の中でリボーンにツッコんでいた。

「守護者を集めるには、戦力アップは絶対に必要だからな。お前以外、適任者がいねぇんだ。」

「断る。山本とソラに頼むんだな。」

「それがな…」
山本の肩に飛び移るリボーン

「山本は見ての通り、ただの野球バカに戻っちまった。」

「あははっ、どうもっ」

「てめぇも土下座しやがれっ!たくっ…」山本に吠える獄寺

「や、山本…」相変わらずな山本を見て、呆れるツナ

「それにソラは怪我を負っちまった。」

「何っ!?」ラルはその言葉に反応して、ソラに視線を向けた。

「あははっ…」

「わ、笑いごとではないぞっ!ソラっ、大丈夫なのか!?」

「大丈夫だよ、ラル姉。リングの使い方を教えるだけなら、なんとかなるんだけど……いざ戦い方をって思ったら、現状況ではラル姉しか
適任者がいなくて……駄目かな?」困った顔をしながら、ラルを見るソラ

「うっ……だがそれでも断る。」

ラルはツナ達の方に向き、
「お前達の相手をしている暇はない…オレは発つ。ここでじっとしていろ、少しは長生き出来るぜ。」
部屋の前から移動するラル

「ちょ、ちょっと待って下さいっ!俺達真剣なんですっ!リボーンに言われたからっていうわけじゃ…」

「もうやめましょう、10代目っ!!」

「でも…」

「だいたいあいつに指導者の素質があるとは思えないっスよ。」

「その点はスペシャルだぞ。」

「「えっ?」」リボーンのその言葉に反応するツナと獄寺

「ラル姉は以前、イタリア特殊部隊COMSUBIN(コムスピン)で教官をやっていたんです。」

「指導者としては、俺も一目置いいるんだ。なんたって、あのアルコバレーノになる以前のコロネロを一人前に育て上げたのはあいつだからな。」

「コロネロを…」
「育てた…?」
そこで2人の脳裏に1人の人物が浮かび上がる。

「ええっ!?」

「あの、コロネロの教官!?」

「あ、アルコバレーノを育てたんスか!?」

「あんなに若いのに、教官やってたのー?」

「それに、コロネロのアルコバレーノ以前って生まれていないんじゃ…?」

(普通、そうなるよね。アルコバレーノの事を良く知らなければ…)

「あっ…と、とにかくっ、ソラちゃん以外でリングの戦い方を知っているのはあの人しかいないんだ!止めなくちゃっ」

その時ランボとイーピンがやってきた。

「ツナ、見て見て!鉄砲いっぱい!」

「ランボ、それ返す!ダメ!」

「うぁっ!?ランボ!!お前、そんな物どこから!?」

「えっとね…ずっとずっと向こうの部屋!迷路みたいで面白いんだよ!」

(…この階の武器庫に入っちゃったんだね。セキュリティー、つけようかな?)
ソラはランボを止めず、そんな事を考えていた。

「頼むから、じっとしててよ!今大事なお願いしてんだから…」

「遊ぼうよー、ツナー」

「「キャアァァ!!」」

「あっ…」

「今度はなんだ!?」

「キッチンの方から…京子ちゃん達だ!」

(ママっ、ハル姉っ)
ソラ達は急いで大食堂の方へ向かった。


ーー大食堂ーー

「どうしたの!?」

「流しの下に何かいるんです!」

(ん?あれは…)

「んだっ?こりゃあ…」
そう言いながら、謎の物体に触れようとする獄寺

「獄寺さん!今すぐそこから離れて下さいっ!」

その声ですぐその場を離れる獄寺
そして、流しの下から、人が出てきた。
もし、獄寺があのままあそこにいたら、下敷きになっている所だった。

「あ、危なかったぜっ……」

「いや〜、抜けました。」

「あ、あなたは…」

「私、ボンゴレファミリーご用達、武器チューナーにして、発明家のジャンニーニでございます。」

「あっ…武器をおかしくした…」

「あのおもしれーおっさんだな。」

「お久しぶりです、皆様。私もあれからすっかり立派になりまして、今や、超一流のメカアーティストに成長致しました。」

「で、そのお前がなんでキッチンにいるんだよ?」

「そうだよ!なんで流しの下に突っ込んでたの!?ジャンニーニさん!」

「はい、このフロアの水回りは、先週、私が組み立てたのですが…」
そう言い、ジャンニーニはたくさんの部品を抱え、

「いろいろ武器が余ってしまって、どこのかな…と」

「本当に腕確かなのー!?」

「ジャンニーニさん」

「はい、何でしょう?ソラ…さん…」
ソラに振り向くジャンニーニ

だが、顔は笑っているが、目が笑っていないソラがそこに居た。
「…もしこのフロアの水回りに異常があったりしたら…」

「あ、あったりしたら?」

「3日間発明禁止令を言い渡すっ!!」

「えーー!?そ、それはないですよ!?ソラさん!」

「えーじゃありませんっ!!これから調理する時は、ここを使うんです。それなのに何かあってからでは遅いっ!
だいたいどうやったら、そんなに部品が余るの!?」

「そ、それはっ…」

「解りましたね?ジャンニーニさん」

「は、はいぃっ!!すぐにすべての水回りを点検して、安全性を確認致しますっ!!」

ツナ達は二人のやり取りを見て呆然としていた。

「…なんだ?この匂い…」

「あっ!」

「はひっ!?まっ黒コゲです!」

「ごめんなさいっ、火を消し忘れてた!」

「京子ちゃん大丈夫!?」


ソラは、みんなが鍋の方に気が向いている内に、ジャンニーニに小声で話しかけた。

「…ジャンニーニさん」

「は、はいっ!」

「今朝も言ったけど…私の事、絶対言わないでよ?」

「ソ、ソラさん…」

「お願い。」

「……わかりました。」
ジャンニーニにそう言った後、ツナ達の方に駆け寄った。


「ごめんなさい、私、ボーっとしてて…」

「き、気にすることないよ、京子ちゃんっ!俺なんかしょっちゅうだし!!」

「そーですよ!ハルもよくやりますっ、ノープロプレムです!」

「失敗は誰にでもある事ですから。食料ならまだたくさんありますので、どうぞ使って下さい。」

ツナは焦げた鍋に水を出した。
「あっ!…っと思ったら蛇口が外れたー!!」
だが、出した瞬間、蛇口が外れて、水が溢れた。

「それは私の責任ですっ!!はっ…」ソラに振り返るジャンニーニ

「…ジャンニーニさん?」

「す、すみませんっ!ソラさん!」

ジャンニーニはソラに土下座していた。

「明日1日発明一切禁止っ!!全部修理の時間に費やす事っ!!」

「そっ、そんなぁーっ!?」

「ソ、ソラちゃん…それは、ちょっと…」

「ダメですよ、ボス」
ソラはジャンニーニから視線をツナに向けて言った。

(ボスに戻ってる!?)

「ジャンニーニさんは今でこそ、技術力は上がっていますが、今でも失敗する時は思いっきり失敗するんです。
ですから、こういう事はビシッと言わないと。」

「そ、そう…」

「今すぐ蛇口の修理に取り掛かりなさいっ!!」
ジャンニーニに指示を出すソラ

「は、はいぃっ!!」ジャンニーニはソラに言われた通り、修理を始めていた。

呆気に取られるツナ達

ドンッ

「聞けっ!!」
その一声でその場に居る、ジャンニーニ以外の全員がラルの方を向いた。

「最低限の戦闘知識と技術はオレとソラで叩き込んでやる。」

「えっ…じゃ、じゃあ…ってソラちゃんもっ!?」

「ああ。」

「な、なんで、俺がこのガキに教えられないといけねーんだっ!」

「ご、獄寺君っ」

「…そうか。なら、この話は無かった事にさせてもらうぞ。」

「うわーっ!?待って下さいっ!獄寺君、お願いだから、そんな事言わないでっ!」

「し、しかし…」

「いーじゃねぇか、獄寺」

「てめーは黙ってろ!野球バカっ!」

「獄寺君っ!!」

「っ…わ、わかりました。」

「あの、それで構わないので、戦い方を指導して下さいっ!」

「いいだろう。」

「ラル姉、私を無視して決めないで欲しいんだけど。」
ソラはラルに不機嫌な顔を向けた。

「…勝手に決めた事は謝る。だが、オレはお前に手伝ってもらいたい……ダメか?」

「うっ…それは……(だって、パパ達だし、隼人兄は聞きそうにないもん。)」渋るソラ

「いいじゃねぇか。もし、お前の話にツナ達が反抗したら、即刻その場で俺が蹴飛ばしてやる。」

『えっ!?』ソラ、ツナ、獄寺、山本はリボーンの言葉に驚く。

「リ、リボーンさんっ!?じょ、冗談ですよね?」

「いや、本気だぞ。もっとも、その可能性が高いのは獄寺だけだがな。」

「…リボ兄、綱吉さん達を蹴飛ばずって…」

「俺はソラの味方だからな。」そう言いながら、ソラに笑みを浮かべるリボーン

「…わかったよ、ラル姉」抗議するのを諦めたソラ

「よし、決まりだ。頼りにしてるぞ?ソラ」ソラの答えに満足するラル

「リボ兄、綱吉さん達を蹴っちゃダメだよ?」

「それはツナ達次第だぞ。こればっかりは、いくらソラでも聞けねぇな。」

「同感だ。オレも殴り飛ばす。」

「えぇっ!?そ、そんなのダメだよっ!ラル姉っ」
ソラはリボーンとラルを必死に説得していた。

「…獄寺君」

「はい、なんでしょう。10代目」

「お願いだから、ソラちゃんの話、ちゃんと聞いてね?リボーンもあの人も本気みたいだから。
(あの人、ソラちゃんには優しいみたいだね…俺達には冷たいけど。)」

「わ、わかりました…10代目がそうおっしゃるなら…(ちくしょうっ…あのガキに教えてもらわねぇといけねぇなんて…)」
表面上はツナに従いつつも、心の中では納得していない獄寺であった。

「さて、話を戻すぞ。日本に送られてきているのは、ミルフィオーレでもトップクラスの部隊だ。お前達の戦ったブラックスペルが
全力で来たら、ひとたまりもない、急ぐぞ。」

「あ…そーいえば、そのブラック何とかって…?」

「そういえば、まだ言ってませんでしたね。元々、ミルフィオーレは2つのファミリーが合併して出来たファミリーなんです。」

「2つの?」

「今のボスの名は白蘭。そして、その下に居る精鋭部隊は、それぞれ出身ファミリーにより、白と黒に分かれています。」

「白い制服はホワイトスペル、綿密で狡猾な戦いを得意とし、黒い制服のブラックスペルは、実戦で鳴らした猛者が多いと言われている。」

「そ…そうだったんだ。」

「う゛お゛ぉい!!てめーっ、どういう風の吹き回しだ?急にベラベラと!!ああ゛!?」

「ご…獄寺君…」

「おい、なんでスクアーロ?」

「心配はいらん!1度でもついて来れなくなった時点で見捨ててやるっ」

(ラ、ラル姉…相変わらずの鬼教官っぷりだね。でも、今のパパ達を見捨てないで欲しいよ…パパ泣いてるし。)
こっそりツナに視線を向けるソラだった。

「さっそく、最初の修行を始めるぞ。」

「「「あっ…」」」ツナ、獄寺、山本の三人が反応する。

「3人のうち、誰でもいい。一度も開いたことのない、この匣を開匣しろ。」
そう言いながら、緑色をした謎の匣を取り出して、ツナ達に見せるラル

「……見せてみろ、お前らの覚悟をな…」

「その匣を開ける?…でも、それが修行と何の関係が?」

「つべこべ言うな、やるのか?やらないのか?」

「やっ…やりますっ!」

「10代目がそうおっしゃるなら…やってやろうじゃねーか!」

「よくわかんねーけど、俺もやるぜ!」

「ソラ、遠慮なく暴れられる場所はないか?」

「あるよ、地下8階にトレーニングルームが。そこなら、いくら暴れても大丈夫。」

「確かにな。」

「そうか。なら、そこに案内してくれないか?」

「了解。」

「いくぞ、お前ら。」

「あっ…待ってよっ!」
ツナ達は大食堂を後にした。

「探検!?ランボさんも行くもんねー!!」
「あっ!ランボ待つ!」
ランボとイーピンもツナ達に続いて出て行ってしまった。


エレベータに乗ったソラはまず、地下6階のボタンを押していた。

「ん?ソラ、なんで地下6階なんだ?」リボーンはソラが押した階を見て、聞いた。

「トレーニングルームに行く前に、綱吉さんは服を着替えないと。」

「あっ!…そういえば俺、まだパジャマだったっ…」

地下6階に着くと…
「着きましたよ。ここで待ってますので、着替えて来て下さい。」

「わ、わかったっ!」そう言って、ツナは急いで着替えるために自分が寝泊まりしている寝室へ走り出した。

「10代目っ!俺も行きますっ!!」
「おっ、じゃあ俺もっ」
獄寺と山本もツナについていった。

その間にラルはリボーンから、ツナ達がミルフィオーレと戦闘になった時の事を聞いていた。
ソラはリボーンの話に耳を傾けながら、ランボとイーピンの相手をして待っていた。
少しすると、着替えてきたツナと一緒に獄寺と山本が戻って来て、エレベーターに乗った。

「それじゃあ、地下8階に行きますね。」
そう言いながら、地下8階のボタンを押した。

「このアジトは公共の地下施設を避けて作られているため、いびつな形をしています。大人でも迷子になりやすいので、気をつけて下さい。
電力は地熱を利用した、自家発電で供給されています。」

「よ…よくわかんないけど…凄そう」

「秘密のアジトみてーだなっ」

「みてーじゃなくて、そうなんだよ!」

「あっ、着きました。」
エレベーターは地下8階で止まった。


ーー地下8階ーートレーニングルームーー

「ああっ!?」
トレーニングルームの広さを見て、驚くツナ達。

「ここなら、少々暴れても、問題ないでしょ?ラル姉」

「確かにな。…ところで…雷の守護者はどこだ?見つかったと聞いたが…」

「ずっと傍にいんじゃねーか。」
山本の肩の上に乗っているリボーンはランボを指差した。

ラルはその先を見た。

ランボは興奮していた。
イーピンはランボを止めようとしていた。
ツナはランボに静かにするように呼びかけていた。

興奮したままのランボは、イーピンと鬼ごっこを始めてしまった。
イーピンはランボを追いかけていた。
出入り口前までランボは逃げていた。

「あれが、正真正銘の雷の守護者。」

ランボの様子をイライラしながら見ていたラルは…
「…オレには見えん。」

(あっ…ラル姉が存在消しちゃった…)

出入り口に居るランボとイーピン

「ここまでおいでー」イーピンにあっかんべーをして、この部屋から逃げていくランボ

「あっランボ待つ!」

「待ってっ!イーピンちゃんっ」出ていくイーピンを呼び止めたソラ

イーピンはソラに呼ばれたので、立ち止まった。

ソラはイーピンに駆け寄り、耳打ちしていた。
イーピンはソラに言われた言葉を聞いて、笑顔になっていた。

「それ、本当っ!?ソラさん」

「うん、本当だよ。京子さんかハルさんにお願いして、出して貰ってね?」

「イーピン、楽しみっ!」

「ランボ君には、今言っちゃダメだよ?」

「了解っ!謝謝!ソラさん」
イーピンはソラにお礼を言った後、ランボを追いかけていった。

ソラはラルの傍に戻って来た。

「ソラちゃん、イーピンに何言ったの?」

「大した事じゃありませんから、気にしないで下さい。」

「そ、そう…(いったい何言ったんだろう?イーピンがお礼を言っていたけど…)」

「修行の前に、今1度問う。生半可ではついて来れないぞ。本当にやる気があるのか?」

「ああ!」

「やりますっ!!」

「たりめーだ!吠え面かくなよ!」

「…わかった。絶対に出来ないと言うなよ?弱音を吐く奴は容赦なく修正する。」

(…ラル姉、ビビらせてどうするの。)

「この時代はお前達の生きていた10年前と違い、リングに炎を灯し、匣を開ける事が出来なければ、戦いにならない。
それはお前達も目の当たりにしたはずだ。」そう言いながら、ラルはゴーグルを装着していた。

(……その通りだ、この時代の戦闘で何度死に掛けたことか……)
ツナは10年後の世界に来てからの戦いを振り返っていた。

「だからこそ、匣を開けるプロセスを学ぶことが、この時代の戦い方を知る、一番てっとり早い方法なんだな。」

「そんなところだ。」

「それに、運よく匣を開ける事が出来たとしても、仕組みを知らなければ、意味がありません。」

「!…お…俺の事かっ……てめーっ」

「あーっ!?ダメだよ、獄寺君っ!」

「止めないで下さいっ!10代目っ!!」

「やめろよ、獄寺っ!!」

「黙れっ!野球バカ」

「っ…」ソラは獄寺の態度を見て、つらそうな表情を浮かべていた。

ソラのその表情を見たリボーンとラル

リボーンが獄寺の背中を蹴って、ラルの方へ飛ばし、ラルは右手で獄寺の頬を殴り飛ばした。
リボーンとラルの連携が決まった。
ふっ飛ばされた獄寺

「ご、獄寺君っ!」

「ツナ、山本、動くな」リボーンはツナと山本にそこを動かないように言った。

「リ、リボーン…」ツナはリボーンの威厳のある声を聞いて動けなかった。

「こ、小僧?」山本も動けなかった。

獄寺は殴られた頬を撫でながら起き上がった。

「獄寺、ソラの話をちゃんと聞け。」

「くっ…!」悔しそうな表情をする獄寺

「獄寺、昨日も言ったはずだぞ?ソラはこの時代の人間だ…この意味、解るな?」

「ソラはこの時代の戦い方を熟知している…だからまずはリングの事をちゃんと理解していないと危ないって言ってるんだ。」

「獄寺君…」ツナは心配そうに獄寺を見ていた。それは山本も同じ。

「お前達はまずリングを理解しろ。リングに出来る事は2つ。リングそのものの力を使うか、匣を開けるか。」

「リングそのものの力を使うって…」

「この武器のように、リングから発生した炎を…」
そう言いながら、左腕に装着している霧ガントレットに霧系リングに霧の炎を灯した右手を置いた。

「そのまま射出する!」
霧ガントレットに吸収された霧の炎を、壁に向けて撃った。
壁にぶつかると、大きな音を立て、少しだけ壁が崩れた。

「すげっ」

「アジトぶっ壊す気かよ!?」

「この程度ではぶっ壊れませんよ。とても頑丈に作られていますから。」

「リングそのものの力は、攻撃の基本になるものが多い。」

「これって……ソラちゃんがブラックスペルの1人と戦ってる時に見たのと同じ…?」
そう言いながら、ソラと太猿が戦っていた時の事を思い出すツナ

「そうですよ。」

「ソラ、壁に向かって撃て。」
ラルはソラもやるように言った。

「えっ…」

「「いいから、撃て。」」ラルとリボーンが同時に言った。

2人に言われて驚くソラ
「……リボ兄、悪いけど、右手につけてるリングから、マモンチェーンを外してくれないかな?」

「いいぞ。」リボーンはソラの傍へ行った。

ソラは右手をリボーンに差し出し、マモンチェーンを外してもらった。
「ありがとう。」

「どういたしましてだぞ。」

ソラは左太股にある銃を右手で取り、壁に向けて銃を構えた。

「それじゃ、いきますね?」そう言いながら、真剣な顔つきになるソラ

ソラは晴系リングに炎を灯し、それを銃に吸収させて1発撃った。
壁にぶつかると、ラルの時より、少しだけ大きい音が響いた。

「うわっ…さっきより音が大きい…」

ツナはそう言いながら、壁の方に目を向けた。
壁はラルの時より小さく崩れただけだが、凹み具合がラルより深く食い込んでいた。

「…ソラもすげーのなっ」

「なっ…」呆然とする獄寺

「凄い…」

「…ソラ、また腕を上げたんじゃないか?」

「そうかな?」

「あれでも、加減しているのだろう?」

「まぁ…そうだけど。」

「ええっ!?あれで加減してるのーー!?」驚くツナ

「マジかよっ…」

((これで獄寺もおとなしくなるだろ。))リボーンとラルは同時に心の中でそう思った。

「ソラちゃん、1つ聞いていい?」

「何ですか?綱吉さん」

「今の撃ち方見てて思ったんだけど…あれってもしかして、7代目やザンザスが使っていた銃と同じ?」
「あいつと同じ武器かよ……」
ツナと獄寺は、リング争奪戦の大空戦で見た、ザンザスの攻撃を思い出していた。

「そうなのか?」

「あっ、山本は見てないんだ?」

「ああ。まだ解毒されてなかったから、見れなかったぜ。」

「そうなんだ。それで、どうなのかな?」

「そうですよ。リングに灯した炎を銃に吸収させて撃っているのは当たっています。」

「やっぱり!」

「でも、似てるようで、少し違いますよ。」

「へっ?」きょとんとするツナ

「7代目のは、戦闘用に改良した弾丸に死ぬ気の炎を蓄積させて撃っていたが…ソラのは違う、弾丸が入ってねぇんだ。」

リボーンの言葉を聞いて、驚くツナ、獄寺、山本

「弾丸が…入って、ない?」

「どういう事だよ?小僧」

「そんなバカなっ……」

「マジだぞ。ソラは銃に吸収された死ぬ気の炎を上手くコントロールして、撃っているんだ。」

「……ほんとに?」信じられなくて、思わず、ソラに確認するツナ

「はい、本当ですよ。」

「へぇ〜…すげーなっ!それ、誰でも出来んのか?」

「いえ、出来ません。」

「そうなのか?」

「ただ弾丸に蓄積させるだけなら、リングに炎を灯せさえすれば、誰でも出来ますが、弾丸を入れないで、死ぬ気の炎を
コントロールするのはとても難しいんです。リングの炎を吸収させた後、その銃の中で死ぬ気の炎を球体にし、
それを撃つ……私は基本、この撃ち方です。ちなみに、球体を作らず、普通にそのまま射出する事も出来ますが、
砲撃並の威力がありますので、あまり攻撃には使いません。」

「なんで使わないの?そのままの方が楽に撃てる気がするんだけど……」

「アホかっ、少しは頭を使え。ダメツナ」

「んなっ…」

「炎の強弱のコントロールが難しいからですよ。だから、そのまま射出する時、上手く炎をコントロールしていないと、
相手に大きなダメージを与えてしまうんです。」

「大きなダメージ与えれるなら、別に良いんじゃねぇのか?」

「獄寺さんが言いたい事は解ります。でも、私自身があまりそれをしたくないんです。」

「ソラは戦いを好まず、人を傷つける事を嫌うんだ。」
ラルがそう補足する。

そこでツナは、工場跡での戦いを思い出す。

「そうかっ…だから、ミルフィオーレと戦った時、敵を狙わず、武器を狙って壊していたんだね?」

「はい。球体にすれば、普通に弾丸を撃った時と同じ大きさで撃てるし、むやみに相手を傷つける事もありませんから。
それに球体にした方が、強弱のコントロールが効くので、もし相手に当てる場合でも威力や大きさを変えれますしね。」

「そっか。あっ…そういえばさっき、普通に射出するのをあまり攻撃には使わないって言っていたけど、どんな時に撃つの?」

「壁を撃ち抜く時とか、または機械が相手の時は遠慮なく撃ちますね。あと、銃から炎を噴射させて飛ぶ時ですね。」

「えっ!?飛べるの!?」

「はい、飛べますよ。」

「すげーなっ!見せてくれよっ!!」

「ごめんなさい、見せれません。」

「そっか……」よほど見たかったのか、山本は落ち込んだ。

「えっと……そんなに見たかったんですか?」

「ああ。だって俺、ザンザスが銃を使う所見てねぇから、どんなのか知らねぇんだもん。」

「……じゃあ、怪我が完治したら、見せてあげましょうか?少しだけですけど……」

「ほ、ほんとか!?」
ソラの言葉に反応して、ぱぁっと明るい笑顔になる山本

「は、はい……でも、綱吉さんが飛ぶ時とあまり変わらないと思いますが、それでも良ければ…」

「全然構わねぇよ!じゃあ怪我が治ったら見せてくれよっ、楽しみにしてるのなっ!!」
爽やかな笑顔を浮かべてソラに言う山本

「わ、わかりました。それじゃ、銃の事はもうお終いにして、本題に戻りましょう。」
そう言って、ラルに視線を送るソラ

「次に匣だが…匣とは、リングの炎を別の作動や運動に変える物だと考えろ。
炎を電気にたとえるなら、匣は電化製品といったところだ。」
そう言いながら、ラルは自分の匣に雲の炎を灯した雲系蜈蚣のリングを差し込んで、開匣した。
出てきたのは、雲蜈蚣だった。

「多種多様…基本的にどの匣も最初にチャージした分しか仕事はしない。炎をが切れれば…」
今まで動いていた雲蜈蚣から炎を消え、活動を停止した。

「活動は停止する。」

「でも、開匣ののちに、炎をまとわせるタイプ…」

ツナは脳裏に太猿の斧を思い出していた。

「敵の炎を吸収して、パワーアップするタイプも確認されています。」

今度は太猿が出した、黒手裏剣を思い出していたツナだった。

(俺、本当に何も知らずに戦ってたんだな…生き残れたのは、凄くラッキーだったんだ。)

そこでツナはソラに視線を向けた。
(あの時、ソラちゃんが俺を戦わせなかったのは、リングを使った戦い方をまったく知らなかったからなんだ。
あの時、俺が言う通り、京子ちゃんを連れて、その場から少しでも離れていれば、
ソラちゃんは怪我をしなくて済んだのかもしれない…俺の、せいでっ…)
ツナはブラックスペルとの戦いを思い出しながら、あの時のソラの行動を理解し、悔やんでいた。

「ここまでで解らない事はあるか?」

「あ…あの、1つもわかんねーんスけど。」

((言い放ったーー!?))ツナと獄寺は山本の言葉に固まる。

ラルはその言葉を聞き、山本の前に立った。
「わかれ!」右拳で山本を殴り飛ばした。

「や、山本ー!!」

(…今のはタケ兄が悪い。)そう心の中で言い、ため息をつくソラ

「オレとソラの言った事を反復して考えろ。」

(鬼だ…)
(不条理だ…)
呆然とするツナと獄寺

「でも、山本はこっちに来たばかりで、何も知らなくて…」
山本をフォローするツナ

「後で教えてやれ。」

「あ〜…いてぇ〜」頭の後ろに右手を置いたまま立った。

「大丈夫?山本」

「ああ、こえー姉ちゃんだな。」

「そうだね。」

「では、実践だ。沢田と獄寺はリングに炎を灯したと聞いたが、本当だろうな?」

「えっとっ…」

「(10代目にいいとこ見せるチャンスだ。)たりめーよ!!」

「見せて見ろ。」

「そ、それが俺…何が起こったのかよく覚えていなくて…」

「覚悟を炎にするイメージ!!」そう言いながら、唸る獄寺

(あの時、夢中だったもんね…)そう心の中で思いながら、獄寺に視線を向けるソラ

「炎に…覚悟を炎に…覚悟を炎に〜!!…ん?どうした!?確かにあん時は!!」
嵐のボンゴレリングに炎が灯らなくて、困惑する獄寺

「やはりな。非常時に偶然炎が灯るというのはありえる話だ。だが、そんな火事場のクソ力に頼っていては、
とても実践では「甘いよ、ラル姉」」
ラルの言葉を遮って言うソラ

その時、獄寺の嵐のボンゴレリングに炎が灯った。
それを見て驚くラル

「よっしゃあ!!」

「ねっ?あれが隼人兄の覚悟」ラルを見て言うソラ

「凄いよ、獄寺君!!真っ赤な死ぬ気の炎!!」

(やったぜっ!!)

「へぇ…これ、そんなもの出るのか…俺もやってみるか。」
そう言いながら、雨のボンゴレリングを右手に嵌める山本

「てめーなんかにできるかよ!!」

「覚悟を炎にだっけ?こんな感じか?」
そう言って、雨のボンゴレリングに炎を灯した山本

驚くツナ達

(これが…10年前のタケ兄の覚悟……変わらないね、今も、昔も…)

「山本は青い炎!!」

「て…てめー、こうも簡単に!!」

(この時代の隼人兄も、タケ兄も、決して揺るぐ事のない、強い覚悟を秘めていた…ボンゴレリングだからってだけじゃない。
これが…10代目ファミリー…)
ツナ達のやり取りを見ながら、ソラは心の中で言っていた。

「だ、黙れっ!!」

ソラは突然のラルの大声に驚き、振り向いた。
「ラル姉?」

「…んだ?」
「喧嘩?」
ツナ達もソラ同様、ラルに振り向いていた。

「!……沢田、お前の炎はどーした!?」

「え…いや…あの、それが…やってるんだけど、さっぱり出来なくて…」
ツナの前に近づいたラル

「甘えるなっ!」言いながら、ツナを殴り飛ばした。

(パパ!)ソラはふっ飛ばされたツナを見た。

「どわっ」地面に叩きつけられたツナ

「10代目!…何しやがるっ、10代目は怪我してんだぞ!!」

「今のはツナが悪い。」

「リボーンさん…」

「1時間以内に、全員がリングに炎を灯し、この匣を開匣出来なければ、修行は中止だ。」
そう言いながら、匣を手に持つラル

その言葉に驚く、ツナ、獄寺、山本

「オレは単身でミルフィオーレを追う。」

(っ!……ラル姉…)
ソラはラルの言葉を聞いて驚き、そして心配そうにラルを見ていた。


標的10へ進む。


今回のお話は、ツナ達がこの時代に来て、初めての修行です。
基本的にラルが指導しますが、ソラがサポート役として、ともに指導します。
銃の設定ですが、弾丸を使わずに撃てる事がありないって思う方はいらっしゃるでしょうが、
そこは突っ込まないで頂けると助かります。
それでは標的10へお進み下さい。

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