ーー10月14日ーーツナの誕生日当日ーー
あれから一週間…ソラの立てた計画もあともう少し……
リボーンに頼んだ通り、ツナは死ぬ気で山のような書類を片付けていた。
これが1日完全休暇を得るためだとは知らずに……
ーーツナの私室ーー
ツナはこの一週間、山のような書類を片付けていて、忙しかったからか、今もベッドの中で熟睡していた。
誰かが入ってきたのにも気付かずに……
「……気配が読めなくなるほど熟睡しちゃってる……まあ、でも…仕方ないか。この一週間、お疲れ様。パパ」
熟睡しているツナを見ながらそう言った。
そう、入ってきたのはソラだった。
しばらくの間、ツナの寝顔を見ていたが……
「さて、パパには悪いけど、起こさないとね。」
そう言って、靴を脱いで、ベッドに登るソラ
登ったソラはツナの体を揺らしながら、声を掛ける。
「パパ、起きて!朝だよ!!」
何度かゆっさ、ゆっさと揺らした後……
「う、う〜ん……ソラ?」
まだ寝ぼけていたが、自分を起こした人物を確認するツナ
「うん、私だよ。おはよう!パパ」
満面の笑顔で言うソラ
「おはよう!ソラ」
そう言って体を起こし、ソラの頭を撫でる。
ソラは撫でられて嬉しそうにしていた。
「珍しいね?ソラが俺を起こしに来てくれるなんて。」
「そう?それより、朝ご飯だよ。みんな、食堂で待ってくれてるよ?」
ソラはツナが完全に目が覚めたので、ベッドから降りて、靴を履いた。
「わかった。着替えたらすぐに行くよ。」
「うん、待ってるからね。」
そう言ってから部屋を出ていったソラ
ーー食堂ーー
「みんな、おはよう!待たせてごめんね?」
そう言いながら、中に入ってきたツナ
「おはようございます!10代目!!」
「はよっ!ツナ」
獄寺や山本に続き、次々とツナに挨拶する守護者達。
「ちゃおっス、ツナ、良く眠れたか?」
「おまっ……まさか、また書類が増えた……とか言わないよな?」
リボーンがそう言うから、また書類が増えるのかと思ってしまったツナ
「安心しろ、もうないぞ。それより、お前にお客さんだぞ。」
「え?」
「ツっ君、おはよう!久しぶり!!」
突然目の前に現れた京子がそう言いながら、ツナに抱き着いた。
「きょ、京子!?な、なんでここに!?」
こっちに来る連絡を貰ってなかったので、驚いたツナ
「大学を少しお休みしてこっちに来たんだよ!ハルちゃんと一緒に!!」
「お久しぶりです!ツナさん!!」
「ハ、ハルまで…!?」
「ふっ……2人の気配がなかったのは、骸が幻術を使っていたからだぞ。」
「一応超直感で気付けるようにしたつもりだったんだけどな……」
完全に解らないのも可哀想な気がして、超直感で気付ける程度の幻術を掛けるように骸にお願いしていたソラ
「まあ、そう落ち込むな。ソラ」
「リボ兄」
「気付けなかったツナが悪いんだからな。」
さらりと酷い事を言ったリボーン
「う゛っ…」リボーンの痛い言葉を聞いて、ダメージを受けたツナ
「クフフフっ、相変わらず甘いですね、沢田綱吉……」
「む、骸っ!?」
「アルコバレーノ、僕は失礼しますよ。後はクロームにお任せします。」
骸は、自分の体を霧で覆い尽くし、霧が晴れると、クロームに戻っていた。
「ごめんなさい、ボス」
戻ったクロームはツナに謝っていた。
「謝らなくてもいいよ。凄く驚いたけどね……っていうか、幻術掛けさせたのはソラなの?」
「違うぞ、俺だ。ソラは完全に解らないのは良くないっつってな、超直感で気付ける程度の幻術を掛けるようにお願いしただけだぞ。」
「そうなんだ。(良かった、ソラじゃなくて……)」
それを聞いて安心していたツナ
「止めれなくてごめんね?パパ」
「ううん、俺こそごめん。せっかくソラが超直感で気付けるようにしてくれてたのに、気付けなくて。それじゃ、朝食にしようか?」
ツナがそう言ったので、まだ座っていなかったツナ、京子、ハルが座る。
「それじゃ…いただきます。」
『いただきます。』
ツナが言い終わった後、みんなが一斉に声を揃えて言う。
「それで?どうして急にこっちに来たの?こっちに来るなんて連絡なかったから驚いたよ。」
「うふふっ……連絡しなかったのは驚かすため。こっちに来たのは、ただ、ツっ君とソラに会いたくなっちゃったから来ただけだよ。」
「ハルは隼人さんに会いに来ました!!」
「おまっ……よくそんな堂々と……」
顔を真っ赤にしながら、ハルに言う獄寺
「良いじゃないですか〜」
そう、実はこの2人、付き合っているのだ。
結婚はまだしていないが、それも時間の問題だろうと周りは思っていた。
「あっ、そうだ!お兄ちゃん、花から預かった手紙を渡すのを忘れてた。」
「花から?」
「うん。はい、これ。」
ポケットに入れていた手紙を取り出して了平に渡した。
「いつもすまんな。京子」
そう言いながら、手紙を受け取る了平
「ううん、これくらいどうって事ないよ。でも、たまには日本に帰って来て、会ってあげて?」
「うむ、そうする。」
食べている間、そんな会話をしていた。
『ご馳走様でした。』
「ツナ」
「何?リボーン」
「お前、今日は休みだぞ。」
「えっ……?」
「俺がこの一週間、なんで山のような書類をさせたと思ってるんだ?」
「あっ!…ってことはお前、知ってたのか!?2人が来る事!」
「ああ、知ってたぞ。…ってことで京子、ツナを連れてっていいぞ。」
「うん!!ありがとう!リボーン君っ」
久しぶりにツナと出掛ける事が出来て嬉しいのか、笑顔がいつも以上に眩しかった京子
(ママ、すっごく機嫌が良さそう……)
娘のソラから見ても、今日の京子は上機嫌のようだった。
「リボーン、俺…ほんとに休みなの?」
信じられなくて、リボーンに確認するツナ
「ああ、本当だ。嘘じゃねぇぞ。」
「10代目、留守は俺達に任せて、行ってきて下さい!!」
「たまには息抜きしねぇとな。笹川とも久しぶりに会ったんだ、楽しんで来いよ!」
「極限行ってこい!」
「お気をつけて。ボンゴレ」
「行ってくればいいんじゃない?」
「ボス、留守は任せて。」
守護者が次々とツナに声を掛けた。
「……わかった。じゃあ久しぶりに3人で…「私は行かないよ。」えっ!?」
ツナの言葉を途中で遮って、はっきりとそう言ったソラ
「い、行かないって…」
「リボ兄に今日1日修行つけてもらうから。」
「……リボーン?」
「ほんとだぞ。ここんとこ、お前に付きっきりだったからな。」
「ほんとに行かないの?ソラ」
ソラの言葉が信じられなくて、思わず確認してしまったツナ
「うん、行かない。だから今日は2人で出掛けてね。」
躊躇う事なく即答されて落ち込むツナ
「まぁ、いいじゃない。ツっ君」
「京子……」
「ソラもこう言ってるんだし、久しぶりにデートしようよ!ねっ?」
「……そうだね。じゃあ、俺…着替えてくるよ。京子、先に玄関で待ってて?」
「うん!」
ツナは今着ている黒服から私服に着替えるために部屋へ戻っていった。
「……ママ、今日の夕方までパパの事、お願いね?」
「うん、任せて!」
「みんなも今日は午前中に仕事を片付けて、午後からの準備手伝ってね?」
「ああ、任しとけ。」
不敵な笑みを浮かべて言うリボーン
「はい!ソラさん」
気合いの入った声で言う獄寺
「おう!わかってるぜ!!」
爽やかな笑顔で言う山本
「俺、頑張って午前中にお仕事終わらせる!!」
意気込むランボ
「ソラ、頼まれていた物、全部取り寄せて置いたよ。午後になったら、部下に持ってこさせるから。」
ソラに優しい笑みを向けながら言う雲雀
「私、早くお仕事終わらせて、手伝うっ」
ボスのために何かしたいと意気込むクローム
「ハルも張り切っちゃいますよ〜!!」
気合いを入れるハル
「うふふっ……ツっ君、きっと驚くよ?」
「ママ、荷物はパパの部屋に運んでもらうけどいい?」
「うん、お願い。」
「わかった。じゃあ……タケ兄、後でママの荷物をパパの部屋に運んで置いてくれる?」
誰に運んでもらおうか考えた後、山本にお願いしたソラ
「おう、わかったのな。」
「隼人さん、ハルの荷物をお願いしますね?」
「ああ、わかった。」
「ママ、玄関に行こ?」
「うん。」
その後、全員ツナと京子を見送るために玄関へ移動した。
ーー玄関前ーー
「そういえば…ソラ、約束のあれ、楽しみにしてるからな?」
「うん!楽しみにしてて!!」
「何々?ソラ、リボーン君と何の約束したの?」
そう言いながら、しゃがんでソラの視線に合わせた京子
ソラとリボーンは視線で合図し合った後、それぞれ自分の唇の前に人指し指を立てて、こう言った。
「「秘密だよ。/秘密だぞ。」」
「ええ〜、教えてくれないの?二人とも。」
「うん。」
「後のお楽しみだぞ。」
「んもー、相変わらず仲良いね。ソラと仲の良いリボーン君が羨ましいよ。」
「ん?そうか?俺は京子の方が羨ましいぞ。」
「どうして?」
「そりゃ。決まってんだろ。ソラの1番はずっとツナと京子だ。だから俺は1番には絶対なれねぇんだぞ。」
「ちょっ…リボ兄!何言い出すの!?」
顔を少し赤らめながら、慌て出したソラ
「何って事実を言っただけだぞ。」
きっぱり言うリボーン
「あうっ」
言い返せないソラ
(驚いた……ソラがこんなに慌ててるの、久しぶりに見たかも。)
驚きながらも、未だに顔を少し赤らめているソラを抱きしめた京子
「!…ママ?」
突然抱き着いてきた京子に驚くソラ
「ママ、すっごく嬉しい!!ありがとう!ソラっ」
無言のまま、さらに顔を真っ赤にさせていたソラ
「おっ、ソラの顔、真っ赤だぜ。」
「うむ。」
「はひ!?ソラちゃん、可愛いです!!」
「ワォ、滅多に見られない光景だね……写真、撮ろうか?」
「と、撮っちゃダメ!!」
雲雀の言葉に反応するソラ
「どうして?」不満そうな顔で聞く雲雀
「どうしてでもダメ!!」
京子に抱き着かれたまま、雲雀に言うソラ
「……仕方ないね、諦めるよ。」
ソラの揺るがない瞳を見て諦めた雲雀
(こっそり撮っておけば良かったぞ。あんなレア、滅多に撮れねぇしな。)
この状況を作った張本人がそう心の中で思っていた。
その時、私服に着替えたツナが玄関にやって来た。
「お待たせ、京子。あれ?何してるの?」
京子がソラを抱きしめているのを見て、不思議に思ったツナ
「あのね…「ママ、言っちゃダメ!!」」
京子が言おうとしていた事をすぐに察し、止めたソラ
「ソラ?」首を傾げるツナ
「言っちゃダメなの?」ソラに確認する京子
「ダメ!」即答するソラ
「うぅ〜ん……ごめん、ツっ君。ソラがダメって言ってるから、言えない。」
「………パパ、すっごく気になるんだけど。」
しゃがんで、ソラの視線に合わせたツナ
「ダメ!!」
ソラにそう言われた後、周りのみんなに視線を向けたが……
誰もが苦笑いするだけで、答えてくれそうになかった。
あの獄寺でさえ……
「……俺だけ仲間外れなの?」
再び視線をソラに戻して言うツナ
「……ごめん。」
「京子も?」
「うん。私は言いたいんだけどね……」
申し訳なさそうな顔しながら言う京子
「そっか。」がっくりと項垂れたツナ
(ごめん、パパ!でも、こんなの、恥ずかしくて言えないよ〜!)
心の中でも謝りながら、そう言ったソラ
(絶対ツっ君も喜ぶから、言いたいんだけどな〜)
落ち込むツナと頑なに言う事を拒むソラを交互に見ながら思う京子
「諦めろ、ツナ。これからデートって時にそんな顔するんじゃねぇ…用意が出来たなら、さっさと出掛けて来いっ」
「…わかったよ。それじゃ、行こうか?京子」
まだショックは受けているが、それよりも久しぶりに京子とデート出来る事の方が勝っているのか、すぐに立ち直ったツナ
「うん!」
そう言い、今まで抱きしめていたソラを離す。
「パパ、ママ、行ってらっしゃい!ゆっくり楽しんできてね。」
解放されたソラはそのまま2人を見送る。
「「行ってきます!!」」ツナと京子は笑顔でそう応えてから、玄関から外に出て、街へと出かけて行った。
「隼人兄、タケ兄、待機しているそれぞれの部下に指示。」
「「了解!」」
2人はそう言った後、それぞれ上着の内ポケットから携帯を取り出して、部下に指示を出した。
ツナと京子を離れた所から護衛してもらうために……
「……言ってやれば良かったんじゃねぇか?」
「うむ。極限に落ち込んでいたぞ?」
「ツナさん、きっと喜びますよ?」
リボーン、了平、ハルの順にソラに言う。
「あうっ」
「まあ、いいんじゃない?ソラが言いたくなければ。僕には関係ないし。」
そう言いながら、ソラの頭を撫でる雲雀
「10代目には申し訳ないですが……ハル、お前も言うんじゃねぇぞ?」
「わかってます!!」
「あははっ…そうだな。」
「ボンゴレには悪いけど……俺、言わないよ。ソラ」
「ソラが言わないなら、俺も言わん!が、出来れば、沢田に言ってやって欲しいぞ?俺個人としては極限にな!」
「ボスに隠し事、あまりしたくないけど、ソラがそう言うなら。……骸様も言わないって。」
「まっ、お前がそこまで言いたくねぇなら、俺も言わねぇぞ。」
ここに居る守護者全員とリボーンとハルはソラの味方だった。
「ありがとう!それじゃ、気を取り直して……了兄、ランボ兄」
「「何だ?/何?」」
了平とランボが同時に言う。
「了兄は、書類を書く時、イタリア語の綴りを良く間違えてるから気をつけてね?」
「うむ!」
「ランボ兄は、書類自体は特に問題ないんだから、書く時は飴玉だけで乗り切ってね。ブドウの飴玉、たくさん用意しておいたから。」
ランボは書類を書く時、いつもお菓子を食べながら書いているため、時々お菓子のカスが原因で、ツナに書き直すように言われていた。
「ありがとう、ソラ!俺、頑張る!!」
「あとの守護者は特に問題ないよね?」
呼ばれていない残りの5人の守護者は黙って頷く。
「それじゃ、解散!!」
ソラがそう一声掛けた後、各守護者は自分の仕事を片付けるために、各部屋へと向かった。
獄寺と山本は部屋へ戻る前に、一度食堂へ戻り、荷物を部屋へ運びに行った。
獄寺はハルの荷物を自分の部屋へ、山本は京子の荷物をツナの部屋へ運びに行った。
残っているのは、ソラとリボーンとハルだけになった。
「リボ兄、お仕事残ってるよね?」
「ああ、少しだけだがな。お前は?」
「パパに回さなかった書類は全部終わったよ。」
「そうか。」
「リボ兄、終わったら教えて?エスプレッソを淹れてあげるから。絶対厨房には入ってこないでね。」
「ああ、わかったぞ。」そう言った後、リボーンも自分の仕事を片付けるために、部屋へ向かった。
「それじゃあハル姉」
「はい、ソラちゃん!お昼の分と、夜の分のお料理、作りましょうか!!」
「うん!!」
ソラとハルは料理を作るために、また食堂へ戻っていった。
一方その頃、街に出かけたツナと京子はショッピングを楽しんでいた。
京子はツナの右腕に自分の腕を絡めて、歩いていた。
「なんか、本当に久しぶりだね。こうやって2人だけで出掛けるの。」
「そうだね。高校の時以来かな?ソラがまだ小さいから、2人でまたデート出来るのはもっと先だと思ってたから嬉しいな!!」
「ソラが生まれてからは、出掛ける時は3人が当たり前だったもんね。」
「それに、ツっ君は忙しいから、なかなか3人一緒でのお出掛けもあまり出来ないしね。」
「ごめん。」
「謝らないでよ。それが解ってて、私、今もツっ君と居るんだよ?」
頬を膨らませながらツナに言う京子
「……そうだったね。」
「ねぇ、ツっ君」
「何?」
「今日は思いっきり楽しもうね!」
「うん!!」
ツナと京子は久しぶりの2人だけの時間を思いっきり楽しんでいた。
夫婦ではなく、恋人同士だった頃に戻って……