相合傘 2

西暦2002年、季節は夏・・・6月の中頃の梅雨の時期・・・
ここ、夢が丘中学校では、六時間目の授業が行われていた。
1年1組の教室では・・・数学の授業をしていた。

窓際の一番後ろの席に座っている生徒は、真面目に黒板に書かれている事をノートに写しながら、先生の話を聞いていた。
彼の名前は山口 大平で、中学1年生になってまだ3ヶ月目だった。

大平はふと外の天気が気になって外の方を見た。

(あれ…天気が悪くなってる…今朝はあんなに晴れていたのに…。やっぱり、傘を持って来るべきだったかな。)
今さらのように、傘を持ってこなかった事を後悔していた。

(…走って帰るしか…方法はありませんね。さて、授業に戻らないと…)
心の中で呟きながら、再び授業に切り替え、授業に集中する大平であった。

そして放課後になり、大平は鞄を持って教室を出て、下へ降りていった。
靴箱のある玄関へ着き、上靴から運動靴に履き替えた。

「やっぱり降ってきましたね・・・雨。」
っと言いながら一つため息をついた。

「さて、これ以上激しくなったりしては困るし、急いで帰りますか。」

「大平っ!」

「ん?」自分を呼ぶ声が聞こえ、後ろを振り向く大平

「一緒に帰ろっ!!」っと言いながら、大平に飛びついてきた。

「ジュリエッタ!?」

「大平、びっくりした顔になってるわよ。」

「ジュ、ジュリエッタ、なぜここに?ここ、1年生の靴箱ですよ?」

「そんな事知ってるわ。大平と一緒に帰りたくて、こっちへ来たのよ。」

「そうなんですか?そ、それよりジュリエッタ、そろそろ放してもらえませんか?周りがみていますからっ」

「え〜、いいじゃない。」

「よくありません!」

「もう〜…わかったわよ。」っと言いながら、ジュリエッタは大平から離れた。

「まったく…少しは周りを気にしてくださいよ。でないと、すぐに噂になってしまうんですから…」

「噂になっちゃ嫌なの?」

「いえ、別に嫌というわけではありませんが、噂が立ってしまうと、ジュリエッタが困るでしょ。」

「どーしてよ?私は大平との噂なら大歓迎よ?」

「ジュ、ジュリエッタ、そんな真顔で言わないでください。聞いているこっちが恥かしくなってしまいますから。」

「なによ〜、いいじゃない別にっ!だって私と大平は、恋人同士なんでしょ?違うの?」不満顔なジュリエッタ

「いえ、違いませんよ!でも、僕はジュリエッタより一つ歳下ですから、何か嫌な思いをしていないかと思いまして…。」

そう、実はこの二人、幼なじみから卒業し、今はお互い付き合っている恋人同士になっていたのであった。

「んもぅ…大平、気にしすぎよ。私がそんな事、いちいち気にすると思う?」

「…いえ、あまり。」

「でしょ。だから大丈夫よ。大平も私との事で嫌な言葉を聞いても、気にしないでよ?私の隣は大平以外は絶対にいないんだから。」

「ジュリエッタ…ありがとう。」

「どういたしまして。」

そこで、雨がさっきより少しだし激しくなってきた事に気づいたジュリエッタ。

「あっ…さっきより雨がひどくなってるわ。」

「えっ!?」
大平も外の方を見たが、確かに先ほどより雨が激しく降っていた。

「どうしたの?大平」

「いえ、実は傘を持ってきていなくて…だから、走って帰ろうと思っていたんです。」

「ふ〜ん、そうだったの?」

「降水確率が50%だとは天気予報を見て知っていましたが、今朝は晴れていたので、
雨が降る心配はないと思ったので、持ってこなかったんです。」

「へぇ…意外な一面ね。」

「えっ?」

「だって、大平なら、雨でも晴れでも、いつも鞄の中に折り畳み式の傘を持っていそうだと思っていたから。」

「そ、そんな風に思っていたんですか?」

「うん。だって大平、雨の時、いつも折り畳み式の傘を持ち歩いていたんだもん。」

「ああ・・・そういえばそうでしたね。」

「…大平、私の傘で一緒に帰ろ!」

「えっ…い、いいですよ、走って帰りますからっ!」

「ダメ!」

「なぜです?」

「大平、もうすぐ期末考査よ?忘れていないわよね?」

「え、ええ、それはもちろん忘れていませんが…」

「だからよ、もしこのまま走って帰って、風邪でもひいたらどうするのよ!?」

「確かに風邪を絶対にひかないという保障はありませんね。」

「そうよっ!それに、休んだら、授業に遅れを取っちゃうわよっ!」

「そ、その時はその時で家でしっかり勉強しますし、解らない所があった時には先生に教えてもらいますから。」

「それでもダメっ!大平、中間考査や期末考査が成績に響く事は解ってるよね!?」

「え、ええ、それはもちろん解っています。」

「だから、一学期の成績に響かないように、今は風邪をひかないようにしないとダメっ!!」

「…すみません。」

「ふぅ……それじゃ、一緒に帰ろう?大平」

「えっ、でも…」

「なによ?」

「ジュリエッタ、一つの傘に二人で入って帰る事を相合傘というのを知っていますよね?」

「うん、知ってるよ。」

「いいんですか?僕で。」

「当然よ、だって大平は昔から、私の一番…「ウーノ」だもんっ!」

「ジュリエッタ…じゃあ、一緒に帰ろう。」

「うん。」

「傘は僕が持ちますよ。」

「そう?じゃあお願いね!大平」

「はい。」

そして、二人はジュリエッタの傘で、一緒に相合傘で帰ることになった。
その時、校門を出るまでに何人かの生徒が見ていた。

ある男子生徒は「学校中で有名なイタリア人のジュリエッタと相合傘をして帰っているなんて、羨ましい奴めっ!」
ある女子生徒は「あの二人、お似合いのカップルね。」

などと、大平とジュリエッタの二人のことを見て、勝手にいろんな事を言っている生徒達であった。

実は大平とジュリエッタは、お互い学校ではあまり知らない人はいないのであった。

ジュリエッタはイタリア人で外見が美人だということもあり、男子生徒にかなりの人気があり、
また、大平も外見が美少年なためか、女子生徒にかなり人気があるのであった。
その一部は、二人の事をお似合いのカップルだとか言っている生徒もいるくらいであった。

大平は歩きながら、ジュリエッタに話し掛けた。

「…やっぱり、みんな勝手に僕達の噂話をしていますね。」

「そうね。でも、気にしない、気にしない。」

「そうですね。」

「大平、今日、大平の家にお邪魔して帰ってもいい?」

「えっ?」

「一緒に勉強しよう?」

「いいですね、ジュリエッタがそうしたいのでしたら、僕は全然構いませんよ。」

「んじゃ、決定っ!」

「でも、ジュリエッタの方から、勉強に誘うなんてどうしたんですか?」

「それがね〜、最近授業が難しくなってきちゃって、授業についていけなくなってきてるんだ。」

「そうなんですか。やっぱり2年生になると、今より難しくなるんですね。」

「大平なら大丈夫よ、普段から勉強しているんだもん。私はテスト前と、あとは時々にしかしないから。」

「ジュリエッタはあまり勉強をするのが好きじゃありませんからね、小学生の時から。」

「そうよ、大平は小学生の時から、毎日予習や復習していたもんね。」

「まあね。」

「あ〜ん、やっぱ大平は余裕で期末考査を切り抜けていきそう〜」

「そんな事ありませんって。そうだ、ジュリエッタ」

「ん?何?」

「夏休みになったら、一緒にどこかに遊びに行きませんか?」
「それ、良い考えねっ!それで、どこに行くの?」
「そうですね…夏ですから、海はもちろん行きたいですよね?」
「そりゃもちろんっ!」

「あとは、夏休み恒例の花火大会や…遊園地なんかも良いですね。」

「うん、いいね!」

「もちろん、後で焦らないように、夏休みの宿題を少しずつ片付けながら。」

「うっ…もう〜、大平っ!一番思い出したくない事言わないでよー!!」

「すみません。でも、一緒に宿題を片付ける…なら、別に嫌じゃ…ありませんよね?」

「えっ……」

「そ、その…宿題をする時は、僕の家でやらないかって事なんですけど……」


「…それなら宿題も別に嫌じゃないわっ!宿題を済ませながら、いろんな所に一緒に遊びに行こうねっ!」

「はい、約束です。でも、その前に追試jにならないように期末考査を頑張らないと。」

「確かに追試にはなりたくないわね……」

「僕、まだ2年生の授業は受けていませんが、理数系ならだいたい解りますので、数学と理科、教えてあげましょうか?」

「ほんとっ!?」

「はい。」

「助かるわっ!私、理数系が苦手なのよね〜。」

「僕の出来る限りで協力しますね。」

「ええ、お願いね!大平」

「はい。期末考査の前日まで、僕の家で勉強しますか?」

「うん、そうしようっ!英語は私の一番得意分野だから、もし解らない所があったら言ってね?教えてあげるから。」

「ほんと?」

「うん。」

「じゃあ、お願いします。」

大平とジュリエッタは、いまだに雨が止まない中、仲良く相合傘で大平の家へと向かうのであった。



えっと、一周年を記念して創作した小説です。
大平とジュリエッタが相合傘するなら、一体どんな風になるかな〜っと思って、このような小説を創作してしまいました。
この二人の場合は、きっとジュリエッタの方が積極的に大平に話しかけている方で、大平は少々遠慮がちな所があるだろうと
思いながら、仲良く相合傘をして帰るところを頭の中で想像してしまいました。
それではこの辺で失礼致します。

相合傘 1(大介×なつみ)を読む。

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