真夜中のクリスマス

12月25日になったばかりの真夜中…

さっきまで味噌蔵で未来のなつみと交信をしていたが、やがて電波が悪くなって切れてしまい、今日はもう寝ようとの事で解散をした後、
なつみは大介と一緒に大介の部屋に行き、そして眠りについたが真夜中になって目が覚めてしまったのだ。


「……。(今日でみらいちゃんとはお別れか…なんだか寂しいな。)」
なつみは横で寝ているみらいを見ながらそう思った。

一方ベットの上にいる大介は…
(とうとう未来に帰っちまうんだな…)と思う大介だった。



少し時間が経って、なつみは大介に呼びかけた。


「ねえ、大介。まだ…起きてる?」

「なつみ?なんだ、お前も…眠れねぇのか?」
そう言いながら大介は体を起こし、ベットの上から下を見た。


「うん。大介も?」

「ああ…」


「…みらいちゃんと…もうすぐ…お別れなんだよね…。」

「ああ…。けど、また未来で会えるだろ?」

「うん……」

「…なつみ、今…雪が降ってて少しさみぃけど…外に出るか?」
悲しそうな顔をしているなつみを見ていられなくなって外に誘う大介

「こんな夜中に?」

「どうせこのままここに居ても眠れねぇだろ?気分転換に外に出ようぜ?」

「でも…おばさんや大平ちゃんも寝てる時間だよ?」
夜中だからと遠慮しようとするなつみ

「ここの窓から外に出ればいい。靴はここにあるんだしな。」


「じゃあ…行こっか。」
少し考えた後、なつみはそう答えた。


「よしっ。」と言った後、大介は二階のベットから降りてきた。

「んじゃ行こーぜ。なつみ」

「うん。」

2人がその窓から出て窓を閉めようとした時…

「あー」という声が聞こえてきた。

「みらいちゃんっ!起きちゃったの?」

「…なつみ、みらいも連れて行こうぜ?」

「でも…」

「みらいとは…しばらく会えなくなるんだからさ。最後くらい…一緒に居ろよ。」

「…そうだね。みらいちゃん、ママと一緒にお外に行く?」

「あー!」みらいが元気な声で返事をする。


なつみはその返事を聞いてみらいを抱き上げた。

「さっ、行こうぜ?」

「うん。」

「あー!」


その後、そこから少し離れて味噌蔵の前まで来た。

「江地のおっさん…まだやってるみたいだな。」

「そうだね。」

「なぁ、そういえば今思い出したんだけどさ、未来のなつみからの交信の時……江地のおっさんはペテン師だって言ってたよな?」
先ほどの通信の事を思い出しながらなつみに気になっていた事を話す大介


「そういえばそんな事言ってたっけ。」


「…未来のなつみの話だと…江地さんはタイムマシンを作るだとか言って人々からお金を集め、
その後どこかへ消えてしまったペテン師だって言ってたな。」

「うん…」

「けど、もう後戻りはできねぇ、江地のおっさんを信じようぜ?」

「大介…」

「大丈夫さ、きっとみらいは無事に未来のなつみの所へ帰れるさ。」
なつみを安心させるように言う大介


「大介…ありがとう。」
大介のその優しさに救われるなつみ

「べ、別にっ。」
なつみにお礼を言われ、照れてるのを隠すようにそっぽ向いてしまう大介

「あっそうだ。」

「なんだ?どうした?」

「大介、誕生日の時はありがとう!ペンダント…みらいちゃんの写真を入れて身につけさせてもらうね!」

「あ、ああ…」

「ねえ、大介。そのロケットペンダントも…大介の手作り?」

「ああ。」

「凄いね、大介!」

「べ、別に大した事ねぇよ。」

「あー!」

「どうしたの?みらいちゃん」
「どうしたんだ?みらい」
みらいの興奮した声を聞き、それぞれ呼びかけるなつみと大介

「あー!」みらいは雪を見て興奮していた。


「…雪を見るの初めてなのか?」

「さあ?みらいちゃん、これはね〜雪って言うんだよ。」

みらいはそれを聞いて雪?という風に首を傾げた。

「そう、雪。雪は触ると冷たいんだよ〜。」

みらいはその言葉を理解したのか、していないのかは解らないが、みらいの持つ好奇心で雪に触れた。
その後みらいは雪に触れた事で少し寒がった。

「ね?冷たいでしょ。」

大介は横からずっと2人のやりとりを見つめていたが…

「みらい、雪はな、冬にしか降らねぇんだ。それに雪は暖かい所には降らなくてな、ここも春になれば
だんだんあったかくなって雪は溶けちまうんだ。雪は暖かい所が苦手なんだ。」

みらいは大介の話を聞いてるのか聞いていないのか解らないが、ずっと大介の方を見たまんまだった。

「ほら。」大介は右手の平を出して降ってくる雪を載せた。

みらいが大介の右手の平をずっと見つめていると、大介の右手の平に載せてあった雪が溶け始め、やがて水になった。

「なっ?溶けただろ?」

「あー!」と解ったのか解らないのかとにかく凄かったようで返事をしたみらいだった。


「こいつ、ほんとに解ったのかよ?」

「あはははっ」

「な、なんだよ?急に…」

「ごめん、ごめん。みらいちゃんと大介のやりとりが面白くてさ。」

「どこが面白いんだよ…。」

「大介ってホントに面倒見良いよね。」

「べ、別にっ…それをいうならお前だってみらいの面倒見が良いじゃねぇか。」

「そうかな?普通だよ。いづみおばさんやボビーが居てくれたから頑張れた…居なかったらどうなっていたか…」
そう呟きながら、これまでの出来事を思い出すなつみ

「…なつみ、頑張ったな。」

「大介…」

「みらいを育てた事はなつみにとっては決して無駄な時間じゃなかっただろ?」

「うん。いろんな人に出会って、いろんな事知って…みらいちゃんと居るのが…楽しかった。」

「ああ…俺もだ。」

「大介も?」

「ああ…だってそうだろ?みらいが突然やってきてからいろんな事が起きた。こいつがいると…必ずトラブルに巻きこれていたような気がする。
それに俺もいろんな事知った。(みらいのおかげで…今まで以上になつみといろんな事を話すようになった気もするしな…。)」
大介もみらいがやってきてからこれまでの出来事を思い出しながらそう呟いていた。

「…大介、今まで…みらいちゃんの事…いろいろと助けてくれて本当にありがとう。」
みらいの事がバレてから、大介にはいろいろ助けてもらってたのでお礼を言うなつみ

「別に、礼なんて…いらねぇよ。」

「大介…」

「そういえば、まだ…言ってなかったよな。なつみ、メリークリスマス!」

「大介?」


「マスコミ連中が原因でクリスマスイブだってのに何もしていなかったんだろ?」

「ありがとう…メリークリスマス!大介」

「ああ。」

「あー?」みらいはクリスマスって何?という風に首をかしげる。

「みらいちゃん、メリークリスマス!」

「メリークリスマス!みらい」

「あー!」みらいはクリスマスが何なのかよく解っていないようだが、大介となつみを見て微笑んだ。

「どうした?みらい?」

「あー!」みらいは大介の所に行きたがっている様子。

「…みらいちゃん、大介に遊んで欲しいんじゃない?」

「えっ?」

「はい、大介」そう言いながらみらいを大介に無理矢理抱かせた。

「お、おいっ!なつみっ!」
突然の事に驚きながらもしっかりみらいを抱く大介

「いいじゃない、最後くらい。ねっ?」

「…そうだな。よーし、みらい!ちょっとだけ遊んでやるよ!クリスマスだしな!」
そう言った後大介がみらいを高い高いして遊んであげていた。

(そういえばみらいちゃん…サッカー場で初めてみんなに見つかった時から大介に懐いていたっけ?
みらいちゃんと大介…未来の世界ではどういう関係なんだろう?)と思いながら二人のやりとりを見ていた。

みらいは大介に遊んでもらえてとってもご機嫌!
大介もみらいの嬉しそうな顔が嬉しいのか、楽しんでいた。

(こうしてみると…みらいちゃんと大介って、本当の親子みたいに見えるよ。)

大介とみらいの楽しそうな光景を見つめながらそう思ったなつみ


その時大介はなつみの視線に気付いた。

「ん?どうした?なつみ」

「大介ってみらいちゃんにほんっとに懐かれてるよね。」

「そういえばそうだな。初めて会った時だってこいつ、すぐに俺に懐いたんだよな。」

「みらいちゃん、大介に遊んでもらえてご機嫌だよ。ねっ、みらいちゃん」

「あー!」
なつみの問いかけに答えるように元気な声を出すみらい

「大介、ありがとう。外に連れ出してくれて。」

「べ、別に。もう眠れそうか?」

「うん。」

「じゃあ部屋に戻って寝ようぜ。」

「そうだね。」

大介はなつみにみらいを抱き戻し、部屋へと戻っていった。



みらいちゃんが雪を見るのが初めてなのかどうか解らないし、クリスマスも初めてかどうかは解りませんが、
その辺は気にしないで下さい。
この小説はみらいちゃんが未来へ帰る日の朝になる前の真夜中です。つまり、最終話になる前です。
なつみはどんな気持ちでみらいちゃんが未来へ帰る日の朝を待っていたんだろう?と思ったりしませんでしたか?
私はそんな思いからこの「真夜中のクリスマス」という小説を書きました。

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