ある冬の休日、新一と蘭は久しぶりにデートに出かけた。
蘭はとてもご機嫌だった。
そして新一も、蘭の嬉しそうな様子を見て自分が愛されていることを実感してご機嫌だった。
普段目暮警部に事件で呼ばれてばかりで蘭とあまり出かけられないから、新一は少しすまなく思っていた。
だから今日は蘭とデートしたかった。
・・・実は少し、蘭が離れていかないか不安だったというのもある。
口には出さないが、新一は蘭に関してはかなり心配性だ。
他の男と行動してるだけで嫉妬して浮気じゃないかと調べまくるくらい。
そしてクラスの友人たちの冷やかしを受けつつも蘭をデートに誘ったというわけである。
やっぱり新一は蘭が放って置かれることを辛く思っていることを知っているだけに、
そのままにしておくことは許せなかった。
「電車乗るのなんか久しぶりだわ」
駅で電車を待ちながら、蘭は呟く。
「オレたちって高校も歩いて通える距離だからなー」
新一も答えた。
休日で通勤通学の乗客はいないにしても、行楽に出かける人々で電車は混んでいた。
「でも高校に歩いて通える距離でよかった、バスとか電車で通学してる友達から色々愚痴を聞くもの」
「へー、どんな?」
二人は混みあった電車の中に乗り込んだ。
「足を踏まれたとか、荷物に傷がついたとか・・・」
「ああ、平日ってこれ以上混むもんな」
列に並んでいる人が増えてきて、新一は正直ため息が出そうになった。
「それに・・・」
「まだあるのか?」
電車やバスの通学者は大変だな、と新一は同情した。
すると、蘭が続ける。
「痴漢が出るって!学校からも注意が出てたわ」
その言葉に、新一が満員電車の最悪な点を今思い出した。
「そ、そうだよな・・・」
「私には関係ないと思ってたけど・・・休みには電車に乗ることだってあるから、気をつけなきゃね」
「・・・」
自分も関係ないから忘れていたが、満員電車とかバスには絶対痴漢がいる。
田舎ならとにかく、この東京には絶対。
そして蘭が被害者になることもあり得るのだ。
蘭は空手が使えて強いが、そんなことを連中が知るはずもない。
そして口にこそしないが、蘭が可愛いということは新一だってわかっているし、一番そう思っている。
「絶対に許せないわ、女の敵よね!見つけたら絶対捕まえてやるわ!」
そう蘭が意気込む横で新一は、今が夏でなくてよかったと心底思った。
夏で露出が高ければなおさら痴漢は寄ってくるのだ。
新一はコナンになり危険と隣り合わせになった経験を経て、
蘭を守らなければならないという思いをさらに強くしていた。
そう、変な輩から蘭を絶対に守らなければ・・・と。
命を狙ってくる輩に対して脅せば逃げる奴なんて弱い部類に入るのだが、
それでも蘭が少しでも危険な目に遭うことは許せなかった。
というよりも・・・新一の場合、蘭に触れることはおろか
やましい気を持っている奴は誰であっても蘭に近づくことを許さないのだが。
蘭が被害に遭ったなら犯人を捕まえられてもきっと後悔する、と新一は思った。
新一にとって、蘭を守ることは・・・当たり前のことだから。
「まあ、園子が言うとおり、私はそんな奴が出てきたら空手でボコボコにしてやるつもりだけどね!
満員電車だから大技が使えないのが気がかりだけど」
と、蘭は笑う。
「って、その時にはもう触られた後じゃねーか!それじゃダメだろっ」
思わず新一は言ってしまった。
「え?」
「え・・・あ・・・・だから、触られてからじゃ遅いから、最初から自己防衛する必要があるって言ってるんだ」
「そ、そうね・・・じゃあ、できるだけ混んでる電車は避けるようにしておく」
蘭は答えた。
本当なら夏も服の露出を控えさせ、誰も連れがいない状態で電車に乗るのも避けてほしいくらいだったが
さすがにそこまで言えない新一だった。
「ったく本当にここら辺って物騒だよな」
新一が呟く。
「でも、新一は犯人捕まえるのに貢献してるじゃない」
「痴漢を捕まえるのは警察とかの地道な捜査と張り込みだからオレは関係ないって」
けれども蘭がもし被害にあったら絶対自分も捜査に参加して、
犯人を追い詰めてやろうと考える新一であった。
「新一」
「ん?」
「私も気をつけるから、新一も私を守ってね」
「・・・」
照れた新一は、顔を逸らせる。
(心配してくれてるんだね・・・素直じゃないんだから)
蘭は新一の心遣いを嬉しく思った。
自分の身の安全はお構いなしに行動する新一だが、蘭に対してはこれでもかと言うほどに心配性。
それも彼の愛の形なのである。
作者様のあとがき。
・・・あまり新蘭ぽくない新蘭。
最近原作で新蘭がないんで勘を取り戻せない。
そんなときはコナンの特別本の「10+」を読む。
めちゃくちゃ蘭に対して心配性な新一がツボ・・・・。
あの頃のような新蘭はもうないのかしら・・・涙。
早く新蘭の萌えを復活させてください、青山先生。
管理人のコメント。
光野みーな様のHPから頂いてきた企画フリー小説です。
こういう新蘭小説も良いですね。
テレビのアニメではいつも新一はコナンで、こういう場面なんて哀ちゃんが体を一時的に元に戻す薬を
飲まない限り、絶対にありませんからね。
それにこの小説での新蘭、読んでてぼのぼのした感じがしますよ。
ぎごちない雰囲気になったりしてるところもありますが、まさに新蘭っぽくって良いですね!
今後また親蘭小説を作られた時にはぜひ読みに行かせて頂きます。
それではこれで失礼致します。