ここはオレンジ諸島の、とある島。
オレンジ諸島をラプラスにのって旅を続けている一行は、今日この島で一泊することになった。
そして島の探検にピカチュウと出かけたサトシは、木の実を数個抱えて戻ってきた。
ただし、その腕に擦り傷を作って。
「いて、痛ぇ、いててて〜!」
傷を作ったときはそう痛がっていなかったサトシだが、
それを消毒する段階となってかなり痛がっている。
「まったく、サトシってばドジなんだから」
「い、いてて・・・カスミ、どうにかしてくれよ」
「無理よ、しっかり消毒する必要があるもの」
傷を消毒してあげているのは、カスミ。
「まったく乱暴だな」
「何か言った?」
「ぎゃー!!痛ーーーーっ!」
向こうでケンジが苦笑いしている。
「どうしてこんなことになったの」
「食べられる木の実があったから、採ろうと思って・・・木から落ちたんだけど」
「まったくドジねー、サトシは・・・」
「うぅ」
カスミの言葉に何か言い返したかったが、自分でも不覚に思っているので
言い返す言葉も出ないサトシだった。
「フシギダネの『つるのムチ』でとってもらおうとか思わなかったの?」
「だって、そんなためだけに使うのってなんかあいつに悪いし」
サトシが言うと、カスミは怒鳴る。
「バカ!トレーナーがケガしたら、ポケモンたちだって困るのよ」
「それは・・・」
「ポケモンたちを心配させないのも、立派なトレーナーとして必要でしょ!」
カスミは強い口調で言った。
「確かに『そんなためだけに』っていうサトシの気持ちもわかるけどね・・・
ポケモンは友達であって家来じゃないんだから、そういうのもよくわかるよ・・・
でも、サトシがケガしちゃったらポケモンたちが心配するだろ?
そういうときは、サトシがポケモンへの感謝の気持ちを忘れなかったらいいんだよ」
ケンジが付け加える。
強い口調で厳しく言いがちなカスミをフォローして、サトシにも理解を促すケンジ。
「うん・・・」
サトシは小さな声で言った。
「これで手当ては終わるけど、絆創膏はまた変えなきゃいけないからね」
「ありがとう、カスミ」
「今度から気をつけなさいよ」
カスミはそう言うと、治療用具を片付けに行った。
夕食時。
「あー、痛かった」
「ピカピ、ピカチュ?」
心配そうにピカチュウが声をかける。
「大丈夫だよ、心配かけてごめん」
「ダネダネ」
「わかった、今度から頼りにしてるぞ」
そうフシギダネに話しかける。
「ゼニィ」
「キューン」
「グオーン」
ポケモンたちが口々にサトシに声をかけた。
「ほら、言ったとおりでしょ」
カスミはまるでお姉さんのように言った。
夜。
「サトシ、傷はどうだい?」
ケンジが声をかけてきた。
「だいぶいいよ、もうズキズキ痛くないし」
「そっか、カスミの応急処置がよかったんだね」
「そうかなぁ?ずいぶん乱暴だったし」
サトシが言うと、ケンジは返す。
「本当にそう思う?よく考えてごらんよ・・・
サトシがケガをしたって知ったときに、カスミはすぐに救急箱を持ってやってきただろ?」
「・・・・あ」
サトシははっとした。
「気づいた?」
「で・・・でも、いつもカスミは怒ってばかりで」
「カスミは素直じゃないから・・・ああいう言い方だけど、カスミは誰よりもサトシのことを心配してるんだよ」
「カスミが・・・?」
サトシは今までのことを考えていた。
アシレ水草をとりにいってくれた時のことも。
バトルのときのアドバイスだってそうだ・・・
サトシは少し気づきかけたようで、表情が変わった。
「だから、感謝しなきゃね」
「・・・・そうだな」
次の日、サトシはカスミに言った。
「カスミ、昨日はありがとう」
「え?」
「おかげで、ずいぶん傷もよくなった」
「そう、よかった・・・気にしなくていいのよ、私たちは仲間なんだから!」
少し照れたようにカスミは言う。
「・・・」
サトシも微笑んだ。
しかし。
「で、サトシ・・・絆創膏を取り替えないとね」
カスミは荷物から救急セットをまた取り出す。
「え・・・・あ、えーと・・・」
「絆創膏しっかりくっついてるわね・・・はがすのちょっと痛いけど、我慢してね〜」
「うわ、あ、いててててーーーーーっ!!!」
またサトシの叫び声が、島に響くのであった。
作者様のあとがき。
オレンジ諸島大好きです。サトカスっぷりが最高です。ジムリーダーやヘッドリーダーにも愛。
ケンジは書いていて楽しかったです。優しいお兄さんって感じで。
タケシとの書き分けが難しいのですが。
口調はだいぶ違うかな?ケンジが「そっか」って言うとこにタケシはふつうに「そうか」って言いそう。
時間軸適当・・・このときリザードンは一応いうこと聞いてくれてるつもりで書いたのですが、
このときってもしかしてカビゴンいる?・・・寝てたってことにしよう・・・
管理人のコメント。
光野みーな様のHPから頂いてきた企画フリー小説です。
このサトカス小説良いですねっ!!
今はアドバンスジェネレーションになって、カスミが登場しなくなったけれど、やっぱサトカスは最高ですよねっ!
私もこの二人のカップルが好きです!
確かにカスミって素直じゃないですよね。でもそこがまた良いんですよね!
またテレビに登場して欲しいな〜って思っていたり。
ケンジのさりげないフォローも良いですねっ!
今後またサトカス小説が出来た時にはぜひ読みに行かせて頂きます!!
それではこれで失礼致します。