ある日、みらいは一人でテレビを見ていた。
いつの時代も消えない「なつかしいもの」を紹介する番組。
今おじいさんおばあさん世代になっている人たちの若い頃にはやった
アイドルグループだとか歌だとか、番組だとかを紹介していた。
「ねえママ、この人って何をやった人なの?」
みらいは傍で洗濯物をたたんでいた母に尋ねる。
「あ、確か歌手よ!でも私がテレビ見始める頃にはもう引退してたかな、
ママがレコード持ってたのを見たことあるような・・・」
母・なつみは答える。
「へー、るり子おばあちゃんが・・・パパはこの人知ってる?」
「オレあんまりそういうの興味ない」
父・大介の答えはそっけない。
「ふーん」
みらいはまた視線をテレビに戻す。
時代は少し後になり、大介やなつみが子供の頃のものになった。
「へー、このおじさんは昔かっこよかったんだねー」
みらいが感心したようにつぶやくと、なつみが横から言う。
「そうそう、私が小学校くらいの時すっごく人気あったのよ!かっこよくてさー!
もう今となってはただのおじさんだけどね」
「あー、いたいたこんな奴」
大介がつぶやいた。
「今ちょうどママたちが小学校の頃の紹介やってるよ」
みらいは画面を指差す。
「そうそう、こういう教育番組があったのよ・・・」
「小学校1年くらいの時に学校で見せられてたよな」
なつみと大介は昔を思い出して、笑う。
「その頃からパパとママって仲良しだったんでしょー?」
突然のからかうようなみらいの台詞に、大介が言い返す。
「べ、別に仲良しというわけでは・・・!」
「そーなのー?昔から仲良くて、大人になったら結婚しようーとか言ってたんじゃないの?
つまんなーい!!ちぇっ」
みらいは勝手に話を想像してたらしく、がっかりする。
そしてまたテレビ画面に集中した。
「あれ?」
みらいが思わず声を上げた。
「どうしたの?」
「なんかこの歌のお姉さん見たことあるなぁって・・・」
テレビで紹介されているのは、なつみ達が小学校くらいの時代にやっていた
幼児知育番組の様子であり、歌のお姉さんが童謡を唄っている。
けれども表示されている年月は20年以上前。
当然そのお姉さんは引退し、番組自体も大きく様変わりしている。
「別のなつかし番組紹介を見たのかなぁ」
みらいは首を傾げる。
「それはね・・・」
「え?」
なつみの声に、みらいは振り向く。
「みらいちゃんがタイムスリップしてきたときに、私がみらいちゃんに見せてあげてたのよ・・・
この番組を見て、赤ちゃんのみらいちゃんはすごく楽しそうだったわ・・・」
なつみは静かに言う。
「・・・じゃあ、赤ちゃんのときに私はこの番組を見たの?」
みらいが尋ねると、なつみは頷いた。
「よく覚えてたわね・・・」
なつみは嬉しそうに呟く。
(やっぱりあのときのことを覚えていてもらえるのは嬉しいんだな・・・
みらいは赤ん坊だったから当然覚えてないと思ってただけに)
大介はそんななつみの様子を見て、あのときに起こった出来事を思い出していた。
折りしもテレビから流れる、あの当時に流行った歌。
「こういう番組って、大人になって『この頃こういうことがあったなぁ』って思い出して楽しむものなんだね」
みらいが言った。
「そうね・・・だから昔からこういう番組、なくならないんだと思うわ」
なつみが答える。
「じゃあ、この頃のパパとママの思い出は?」
みらいが指した画面には、なつみ達が中学生くらいの時の流行の歌手が映っていた。
「あー、この歌手の頃か・・・確か中学の合唱コンクールの自由曲でこの歌手の歌唄ったクラスがあったと思う」
「私達のクラスは違ったけどね」
大介となつみは答えた。
「じゃあね、じゃあね、その頃のパパとママってどんな感じだった!?」
好奇心旺盛なみらいは、やっぱり今も相変わらずで。
父と母の思い出話を聞きだそうと、瞳を輝かせている。
「小学校くらいの時ほどケンカはしてなかったわ、やっぱり成長したから取っ組み合いとかできないし」
「別にたいしたことはなかったよ」
少しその娘の雰囲気に圧倒される父と母。
そしてついに大介がなつみに告白した高校生時代の思い出をちょうど掘り返すような番組に、曲になる。
「ねえ、パパとママはこのとき高校生でしょ!何してたの!?」
「え、ええ〜・・・それは」
「それは、えーと・・・」
さすがに素直に答えるわけにもいかず、困るなつみと大介。
「いつ付き合い始めたの!?ねー、教えて!!」
そして押しの一手に回る娘、みらい。
「教えろと言われても・・・」
「だってパパとママって小さい頃から一緒にいたんだもん!
小さい頃から二人がどんな感じなのか聞くのって楽しいじゃない!
友達だった時代とかー、ドキドキ恋の時代とかー、付き合ってた時代とかー、
プロポーズのお話も聞きたいかも!!」
「「・・・・・・」」
この番組の内容で時代が移り変わるにつれ、
そのときの二人の出来事を聞かせろと娘にせがまれ・・・・
なつみと大介は、昔二人にあった出来事を改めて思い返し、照れることになるのであった。
作者様のあとかき。
2017年からすれば今の時代なんて「昔なつかしのー」になってしまうんだろうなー。
でも、いつの時代もああいう番組って消えませんよね。
やっぱり昔をなつかしむのは癒しになるのだと思います。
でも余計なことまで思い出して恥ずかしくなったりとかする。
大介となつみはずっと一緒にいたので、『あの頃はこんな感じだった』っていうのを
年表にして追っていけそうなカップルですよね(笑)
管理人のコメント。
光野みーな様のHPから頂いてきた企画フリー小説です。
この小説の良い所はなんといっても、大介となつみが娘であるみらいの質問に素直に答えられないで
押されているところとか、照れるところなど。
みらいちゃんの方も、私から見てもまさに好奇心旺盛っ!って感じで、みらいちゃんらしいなと思いました。
光野 みーな様、このようなママ4小説をありがとうございます!!
今後のママ4小説もぜひ読みに行かせて頂きます!!
それではこれで失礼致します。